休日って時間はすぐに過ぎていく物なのに今日は嫌に長く感じる……2
地下室を抜け、広間に出るとロスが扉を閉じていた。
「その銃、使いこなせているようですね」
落ち着いた様子だ、つい数秒前まで命の危機に瀕していたとは思えない。
「おかげさまで、死なずに済んでますよ」
「侵食の影響だけではないでしょう」
壁が下りる、いつ隠し通路から鎧が押し寄せてくるか気が気ではない。
「その異常な頑丈さ、普通なら死んでますよ。イグドラ人は特殊な能力を持って生まれてくると聞いたことがありますが、君はとてもいい力を授かったようだ」
「……どうも」
壁の向こうから鉄の軋む音が聞こえきたが、壁を破って鎧たちが来ることはなかった。
「あくまで侵入者にしか反応しないようですね、安心しましたよ」
「……埋めます?」
「日光に当ててみたい気持ちはありますが、被害の方が高くつきそうだ」
彼の言動はまるでイストサインへを心配しているようである。
「意外ですね、イグドラは敵国なのでは?」
「派手に目立たず功績を持ち帰る、あるべきスパイの姿ですよ」
なんだかイメージと違う、この男からはあまり敵国人という印象を感じられない。
(十年お隣さんだったから、なのかな)
「それにグライス君が死んだ今、私にも選択肢は無い」
少し、ロスの言葉から感情がにじみ出た。
「グライス、あの男が何か?」
「いえ、少し長い付き合いだっただけですよ」
グラドミスの館を後にする。どう隊長に報告したものか、頭が痛い。
「それではまた会いましょう、実りのある協力関係を」
ロスが歩き去る、まだ見せていない原石の鉄糸を出して後ろから拘束してやろうかと思ったがやめた。
(グラドミスを倒す為、ロスも利用する)
早く落ち着いて休日を迎えたい。その為なら何だってしてやろう。




