休みだ!なにしよう!とりあえずご飯食べてから考えよう:1
列車がイストサインの駅に着く。時刻は昼前、平日なうえ通勤時間はとっくに過ぎた為人は疎らだ。
「ではレガリア、また夜に会おう」
カティア隊長は颯爽と去っていった。これからイストサイン支部で仕事に励むのだろう。
「お疲れ様でーす」
隊長は仕事に戻るというのに休んでもいいものかとも思うが、あえて考えないようにする。
一方の私はこれから非番だ、夜に仕事があるとはいえ自由時間はたっぷりある。
(これからどうしようかな)
突然の休日となると思ったよりやりたいことが思いつかない。
(……お腹すいてる?)
そういえば昨日の簡単な昼食以降、水以外口にしていない。食事をとっていられる状況ではなかったが。
(帰る前に何か食べに行こ)
今でもあまり食欲は無いが、何か食べた方が良い。
『気が滅入ってる時こそ何か食べるのがいいのよ』
母が私によく言ってくれた言葉だ。
イストサインを中央で分けるテラス川、橋を臨む通りには屋台の立ち並ぶ広場がある。街の人々に屋台通りと呼ばれている場所だ。
「ほら、フィッシュサンド」
「どうもです」
並ぶ屋台はどれも食べ物屋、主には時間のない労働者が通勤時刻に利用している。
「それとポテトフライ、飲み物はいるか?」
「コーヒーください」
ここは私のお気に入りの屋台だ。お茶は飲めたものではないが性能の良い保温機を使っているのでいつでも温かいフライを出してくれる。
「レガちゃん何かあったのかい?酷い格好だぞ」
「色々あるんですよ騎兵の仕事は」
着替えもせず着たせいで服は泥だらけのままだ。さすがに上着は脱いでいるが。
「うん、おいしいです。ソースの葉っぱ変えました?」
「よくわかるね、新しいハーブを試したんだ」
パンにはさまれた魚のフライには酸味の効いたソースがかかっていて、その中にすっきりとした香りがある。
「うん、好きな味です」
「そう言ってもらえると嬉しいな。しかしレガちゃん今日は仕事じゃないのか?」
ちなみにこの店主は近所の人だ。職人を辞め屋台で一攫千金を狙っているらしい。
「隊長が休みにしてくれたんですよ、代わりに夜出動するんですけどね」
「あの怖い隊長さんが?」
「……その怖い隊長さんです。最近気づいたんですけどあの人見かけほど怖くないですよ」




