上司頼りってのが楽なんです。自分で判断して動きたくないんです。それじゃあダメでしょうか……いつまでもこの調子なのはダメなんでしょうね……:2
戦闘は未だに続いている。
カティア隊長とグラドミス。音だけではどちらが優勢かは不明だが近付いているのは確かだ。
辺りには大量の肉片、隊長によって打ち砕かれたであろうそれらは、それでも再生しようと大きな塊に集いつつある。
その中心に隊長が居た。
背と右腕から異形の腕を生やしたグラドミスと蒼鉄の手甲を装備したカティア隊長。
「強いな隊長殿!」
隊長の手甲は特別製だ。指に白輝鉄糸を仕込み、肘から手の甲は小型の大砲となった攻防一体の武装だ。
「多勢に無勢相手にその奮闘、誠恐れ入る」
グラドミスは異形の腕を振り隊長を追い詰める。
隊長の手甲、砲身にあたる部分から閃光が放たれる。
異形の腕が閃光を浴びて波打ち、グラドミスが怯む。手甲が焼き切れたカートリッジを排出し、隊長が流れるように新たなカートリッジを詰めた。
「砕けろっ!」
隊長がグラドミスの胴に拳を叩き込む。砲身から色鉄の弾頭がグラドミスに撃ち込まれる。
だがグラドミスの纏う漆黒鉄の鎧を前にして有効打を与えられていない。
「いい武器だ。戦法も良い。戦争でもさぞ活躍した事だろう」
「ぐ……!!」
グラドミスの右腕、光を浴びても形状を留めた異形の手から更に影が伸び出す。
「だがね、格の違いというのは存在するのだよ」
隊長がグラドミスから後退しようとするが、手甲を装備する右腕を捉えられた。
「君はただの平民だ。受け継ぎし名、遺産、称号、継承せし物が何も存在しない。弱き者共だ」
黒い影が隊長の手を無理やり開かせる。蒼鉄の手甲が軋み、指の継ぎ目が剥がれ出した。
「……お前こそ生まれは平民だろうが……偶然戦争で成り上がった蛆虫ごときが、継承など偉そうに」
隊長が腰から銃を抜き、グラドミスの右腕に乱射する。しかしグラドミスは止まらない。
「否、アードミルド家は影たる一族。我らは建国より存在した。だが王は暗部たる我らを、不要と見るや否や切り捨てた!」
少しずつグラドミスの語気が強くなっていく。
影が勢いを増し隊長の顔が歪む。
(隊長が殺される!)
銃を構え、グラドミスに照準を合わせる。狙いは脚だ。
正直を言えば、相手が誰であろうと出来る限り銃は向けたくない。
けれど、騎兵になった以上、迷ってなどいられないのだ。




