残業日が続いてしまった……もしかしてこれが当たり前になっていくんです?:3
夜中に目が覚めてしまった。
お腹の奥の方から嫌な痛みを感じる。気持ちの悪い満腹感、胸のむかつき。
最悪な目覚めだ。
眠気を逃したくないので硬く目を瞑り、ベットで丸くなるが意識は冴え始める。
仕方なく上体を起こす。痛みは消えつつあった。
毎日同じような痛みが襲ってくる、ナースコールを押す程でもないただ安眠を妨げる痛みとむかつき。
部屋の隅から父の寝息が聞こえた。入院生活が始まってこの方、仕事が終わるといつも病室に来てくれるのだ。
今は長椅子の上に寝袋を敷いて寝ている。家でゆっくりしていたいだろうに。
(私が死ぬ時に、一人ぼっちにさせたくないから──)
だめだ、こんな夜中に目が覚め、嫌なことばかり思いつく。
どんな時にも前向きが私のモットーなのだ。
とりあえずスマホでネット巡回でもしよう。何かに没頭しよう。
今どんなに死が怖くても、数年後の未来きっと私は元気に生きているはずだから。
眠ると、いつも同じ夢を見る。
夢の中で私は塔子という女の子で、彼女の人生の断片を見ている。
家族想いで、いつも明るく振る舞う子。病気の怖さを押し殺し、辛くても笑おうとしている。
だけど最後は病気で死んでしまう。
治らない病気とわかった後、彼女の夢は見ていて辛い。
不安、恐れ、狂気、彼女の感情を私も追体験する。
でも塔子は、前向きに生きようと頑張っていた。
そんな前向きな彼女を夢で見ると、私も頑張ろうと思えるのだ。
破壊音、鉄同士がぶつかり合う音、誰かの悲鳴。
少しの間意識を失っていたようだ。
「クソッ!来るなよ!来るなっ!」
「モンドさん……!」
木陰にうずくまる私の前で、モンドが木の棒を手に影達へ立ち向かっている。
ほど近い何処かでは戦闘の音、隊長はそこだろうか。
「うわぁぁ!」
モンドが一体の影に引き倒された。さらにその上へと影達が迫ってくる。
(止めないと!)
自然に左手が動き出した。
銃を持っている、熱を帯びた左腕。
片手で拳銃を構え、指が引き金を引いた。
雷鳴のような音が、辺りに響く。




