今日やる事は終わった、布団に倒れ込みたい、そのまま何もせずかスマホでもいじりながら時間を潰したい:1
宿舎の部屋に着いた頃には日が暮れていた。
二人部屋だが泊まるのは一人、気兼ねなくスペースを使える。とりあえず荷物と拳銃と上着を全て床にぶちまけ、ベッドにダイブする。
(……おなか減ったな)
肉体的な疲れと共に空腹を感じる。それに強めの眠気も。
「ふーー、レガリア起きてる?」
身体の主に呼びかける。
『起きてる』
気怠げな返答。
「そろそろ出てきませんこと?落ちるわよ」
『限界』が近い、これほどまで長時間意識を保てたことも初めてだ。
『出なきゃダメ?』
朝仕事行く前に五分寝かせて欲しいような声。
「あのさ、レガリア」
今日はなし崩し的に身体の主導権を握ったが、はっきりさせておかなければならない。
「この身体は貴女の物で、生きてるのは貴女の人生なのよ?」
ちょっとしたお説教。彼女の中の同居人、イメージとしては魂の姉的な存在として、彼女に伝えたい事だ。
「辛いことがあったばっかりだし、将来の事がとにかく不安だってのもわかる、けど今日みたいな場を私に任せるのは良くないよ」
『…………はい』
あえて感情は探らない、というか眠くて朧げにしか伝わらない。返事があるならそれでいい。
「じゃ、寝るよ、明日騎士の式典だから、しっかりね」
意識が沈んでいく。
◇
塔子が寝た。『レガリア』の身体に本人の意識が戻ってくる。
「…………」
何もやる気が起きない。
(……荷物)
床に撒き散らしている荷物をどうにかするとか、着たままの騎兵の制服をどうにかするかとか。
(明日の、騎士の任命式どうするかとか)
明日の事を考えた瞬間、身体を反転させ視界を真っ暗にする。
(なにも考えたくない)
ここ何日かずっとこの調子だ。それも夜眠る時一層酷くなる。考えなくてもいい事が頭に浮いてきて意識が鮮明なまま何分も時間が過ぎていく。




