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生まれ変わったのですが転生先がどえらいブラックです  作者: 早熟最中
どうやって仕事へのモチベーションって保つんでしょうか
196/202

火傷の痕:6

 ◇

 誰かの声が聞こえる。

「コイツ、息してないのに心臓動いてる」

「では、生きてるってことですね。安心しました」

「そっちはどうなの?」

 声の主が身体から離れる。


「生きてますよ…………こちらも、不死身のようなものですから」

「そっちが生きてるのも気味悪いわぁ」

「手当はこちらで」

「ちゃんと繋げておいてよ」

「君は、彼女を」

「……どーすんの」

「普通の蘇生法を……」

 意識が薄れていく。


 再び意識が戻り、感じたのは嘔吐感。水が口から溢れてくる。

「……ッ!うぇっ!」

「うわっ!」

 眼を開けた瞬間、視界に入ってきたのはオリンピアの顔。


 彼女は驚愕の表情の後。

「──オラッ」

 腹に一発、殴打を打ち込んできた。


「────っ!!」

 横を向く。お腹の底から水が逆流してくる。


「……一発かよ、本当にどうなってんだよお前」

「…………なんで……アンタがいるのよ」

 咳き込みながら、重苦しい体をどうにか持ち上げ周りを見る。

 サインエンドの、どこかの建物。バルコニーのある広い部屋だ。


「なんでって、ロスの手伝い」

 オリンピアが指差した室内には、こちらもぐったりした様子のロスと、目を瞑るジルがいた。


「……どうもレガリアさん、今日は大変でしたね」

 ロスは床に座り込んでいる。濡れそぼった、元は白かったと思しきシャツは血で真っ赤だ。


「ロス……さん」

 聞きたいことがあった。

「…………隊長は?」

 意味のない問いかけでも、聞かずにはいられなかった。

「……カティア君は」

「あの隊長さんなら死んだよ」

 ロスの前にオリンピアが言い切った。


「死体もバラバラになったろうよ、リーパーに喰われて、そのリーパーはお前が消し飛ばしたんだから」

 私を突き刺すようなオリンピアの返答。隊長はもう死んでしまったという事が私の心を抉る。


「…………」

 何も考えたくない。

「泣いてんの?」

 答えるのも億劫だ。


「…………ライオネル君、引き上げよう」

「いいのですかね?」

 オリンピアが私から離れ、ロスの方へ向かう。彼に肩を貸して立つ手助けをする。


「放っておけば治るよ、この女は」

「……レガリア君」

 ロスの呼びかけに頭だけで反応する。

「また会いましょう」

 片手だけ挙げる。ロスとオリンピア、二人が去った後聞こえるのはジルの寝息だけだ。


 遠くから、人の声が聞こえる。

 バルコニーの方に出て、柵に手をかけ辺りを見る。私たちは結構背の高い建物にいたようだ。

(騎兵が集まってきてる)


 私がリーパーと、オズワルドと戦った場所がよく見える。

 周囲の建物と歩道には破壊と肉片の痕。騎兵が集まって調査を始めたところらしい。

(戻って、話しに行かないとな)


「…………」

 音に背を向け、部屋の中に戻る。

「……ここ、は?」

 ジルが目を覚ましていた。彼女の服も血に染まっているが、彼女自身に怪我はないようだ。

「サインエンドだよ」

「…………騎兵さん?」

「そうよ、前に会ったわね」

 彼女の顔左半分は皮膚が削げたままだ。


 ジルは、何かを探すように部屋の中を見渡す。

「……リ……リーパーは……?」

「退治した」

 聞きたくない名前を聞いた。

「もう貴方の中にも、どこにも奴はいない」


 そう言うと、ジルはどこか悲しげな顔になった。

「なんか、変」

「……なにが?」

「あんなに、怖かったのに……あんなに……辛かったのに」

 切れ切れな声、涙声になっていく。

「居なくなったら……寂しいの」


 ジルは顔に手を当てながら静かに泣き始めた。

「……そうね、私も悲しい」

 左手を見る。手の甲には白く歪んだ火傷の痕が残っていた。

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