職場に一人でいるとどうしても周りが見えなくなる。自分だけでなんとかしないとと思ってしまう:3
(失敗だな)
瞬時の落胆の後、ロスは下宿の屋上から身を乗り出す。呆然とするレガリアと、新たに登場した敵の間に割って入る。
「ん、お前ロスか?」
ロスの耳に聞き覚えのある女の声が入る。
「……!カティアさん?」
見間違え用もない。イストサイン騎兵隊の長カティアがロスとレガリアの間に立ちはだかっている。問題はなぜ彼女がレガリアを攻撃したかについてだ。
(これは、かなり不味い事態だ)
しかし、原石武器に知見のあるロスには心当たりがある。
「どなたです?おおよそメトラタからいらした方だと思うのですが……」
呆然としているレガリアと共にテラス川を背に後退しつつ杖を構えて問いかける。
「よく喋るなぁ、裏切り者が」
カティアの姿をした『敵』は右腕の籠手をロスへと向けた。
(前から女性が扱うには物騒な代物と思っていだが)
原石武器に侵食され、なんらかの変化を遂げた籠手は以前より大型に、刺々しい血の結晶の生える見た目に変貌していた。
「リーパー、コイツは確実に殺せ」
カティアの口から、普段の彼女とはまるで違う口調で言葉が紡がれる。
「殺していいの?」
血肉の怪物を身体に収納したリーパーが聞く。
「ああ、こいつは総督お墨付きの『敵性因子』だ」
「そっちの女の子は?」
「あいつは変わらず連れてこい、だ」
カティアが右手を構え、リーパーが仮面から血肉を引き出し始める。
「レガリアさん、来ます」
ロスがレガリアの背を軽く叩く。彼女もはっとした様子で銃を顔まで持ち上げた。
「君には酷だが、もう加減している余裕はない」
「……でも、相手は」
「誰が相手でも、『武器持ち』二人相手は部が悪すぎる」
レガリアはいまだに迷っている様子だ。
「危ない!」
再び二人の前でカティアの籠手が爆炎を撒き散らす。ロスはレガリアを庇いながら後退する。
カティアが籠手に弾薬を装填した様子はない。
(あの籠手、原石武器として強化されている)




