家帰って寝たら転職のやる気なくしてる、じゃあ今のままでいいやってなる:5
「この先、テラス川に出る方面に奴は居る」
「川から逃げるつもりってこと?」
「恐らく」
リーパーはテラス川を下ってメトラタまで行くつもりのようだ。普通の人間なら身一つで川下りなんて自殺行為だ。
だが原石武器に依る力のあるリーパーなら生き延びられるのだろう。
「そこで、逃げ仰るだけの余力は出来るだけ削いでおきました。貴女を待ちながらね」
ロスは私に鋭い眼を向けてきた。
普段の温和な彼とは様子の違う、剣呑な雰囲気が彼から発されていた。
「奴の息の根だけは止めておきたい」
「……昔、リーパーと何かあったんです?」
彼の目元には厳しい皺が寄っている。
「……どうして?」
なぜそう思ったのかと彼が問う。
「今日のロスさん、なんか怖いです。それにさっきリーパーのヤツが言ってた」
『恋人さんは元気?』
リーパーは挑発するようにロスへ言っていた。
「大事な人を殺されたんですか?」
「…………ありきたりな話だが、懇意にしていた女性を奴に殺されまして」
ロスの口調は平坦で冷静だった。けれど彼の顔の皺が一層深くなったのを見逃してしまえなかった。
「奴の……『リーパー』の核となる原石はあのジルと言う子を殺しても断つことはできない。原石銃が必要だ……」
一度額に手を当て皺をほぐしたロスが私を見る。
「原石武器は宿主を殺しても次の使い手が現れればその人を侵食する。武器に自我があれば元の意識は乗っ取られてしまう」
最後に彼は頬をゆがませ薄く笑った。
「終わらせたいものですね、こんな連鎖は」
ようやくロスの深くにある本心に触れられた気がした。
この人は──
『恨んでるんだね、原石武器を』
塔子も同じ考えに至ったようだ。
「行きましょう、奴は沿岸で休んでいる」
そう言うと、ロスは足早に進んでいった。
(奇襲か、うまくいくといいな)
過去に奴と戦ったロスが味方なのは心強い。
『ねえ、レガリア』
塔子が声をかけてくる。
『どうしたの?』
『この先に確かに原石武器の気配があるんだけど、さっきもう一つ、別の気配を感じた』
塔子の言う気配に意識を集中する。
すると確かに一つ、まだ離れているが確かに原石武器の拍動を感じた。
『遠いね……ファルナかオリンピアのどっちか。かな?』
『だといいけど』




