転職したいと思うのは簡単だけれどもね:4
原石銃から銃弾が放たれる。
装填していたのは小指サイズの鉄の弾丸。リーパーが作った恐竜に向けた先刻と違い、引き金を引けばちゃんと弾が発射された。
オズワルドは義手で胴体を防御している。外す距離ではない、銃弾は奴の義手、その肉の部分を穿っているはずだ。
「効いてないぞ、そんなもんなのかお前の銃は?」
オズワルドは言う。余裕の表情だ。
原石銃を使って一ヶ月あまり、この銃は私が念じればその通りの機能を果たしてくれた。
定期訓練の鉄糸実技を任せる時、ちょっと高い場所の物を取る時、『悩み』を表現したい時糸を飛ばしまくる時。
(オリンピアに襲われて、タイタニアを壊した時もちゃんと使えた)
ジルと戦った時を除いて、原石銃はちゃんと応えてくれた。
オズワルドは攻撃を続けてくる。
原石の義手は新たな形態を見せていた。緋鉄と思しき部分は赤く発光し、肉と血が焦げる悪臭がする。
奴の大振りな腕の攻撃を私は避ける。全て回避しているわけではない。何発か熱風と共に赤熱した鉄を叩きつけられた。
(なんだか、昔の事を思い出すな)
この記憶は『レガリア』の、騎兵学校の模擬戦の記憶。
『痛い…………痛い……』『どうしたの?そんなに力込めたつもりはないけど?』『────!大丈夫か?レガリアお前、何を──』『そこ!何をしたのですか!?』
(違うの……傷つけたいなんて思わなかった……)
「う……」
苦い記憶を思い出した。目を閉じて頭を振る。
(どうして今思い出すの……)
私の注意が逸れたその時を奴は逃さなかった。
顔に衝撃、そして熱。
少しばかりぐらついた頭が正常に戻ると、視界の半分が真っ暗闇だった。顔全体に熱を感じる。どうやらオズワルドの義手、その五指で顔をがっちり掴まれているようだった。
「少しは効いてた、そんな感じだな?」
私の顔を潰そうとする手の力を感じる。辺りの空気を乾かす熱も体感できる。けれど痛みはない。
私には人の痛みがわからない。




