転職したいと思うのは簡単だけれどもね:3
(結局、戦うことになるんだ)
どうにもならない。自分が騎兵で眼前の男がメトラタの軍人である限り、敵対しているのは変わりない。
(これから何人、同じような奴が出てくるんだろ)
原石武器を持つ同じような敵、味方、どっちとも言えない奴ら、どいつも自分の持つ銃を求めてやってくる。
(この人をここで殺せば)
『私の敵』は一人減るのだろう。
オズワルドの右腕は緋色の義手になっていた。義手とは言ったものの、大きさも質感も、義肢としては逸脱している。
(すこし、リーパーの仮面に似てる)
大部分は色鉄のようだが腕の関節や手の甲には筋繊維が脈打っている。ジルの被っていた仮面も肉と鉄が混じり合った不気味な風体だった。
「それじゃあ、ここから先は殺し合い、お互いの命をどれだけ尽くせるか、見せてもらおうじゃないか騎兵の嬢ちゃん」
オズワルドが腕を正面から叩きつけてくる。
私は彼の行動をただ見ていた。
衝撃が顔面を伝い、お腹に響き、背骨を曲げ、脚を折り曲げる。
けれど、それで終わりだ。
(……オリンピアの方が強かったな)
殺意の込められたであろう緋鉄と肉の塊が迫った刹那、反射的な恐怖を感じはしたが、過ぎてしまえばあっけない。
「……こいつは驚いた」
オズワルドの声が聞こえる。
私はうつ伏せにも仰向けにも倒れることなく、オズワルドの攻撃を受けていた。
(……こんな風になってたんだな)
私の立つ地面には、私を支えるように鉄糸が刺さっている。
原石銃を本気で撃つ時、どうして自分の体重を超える衝撃を受け流せていたのか、答えがそこにあった。
私は原石銃を構えて、オズワルドの腕を狙う。
(普通の銃弾でもいいから……頼むわよ!)
銃口からは確かな衝撃が放たれた。




