理由はわからないんですけど仕事中の外食は気分が上がります:3
「私がこの国で行っている活動は二つ。一つは色鉄技術の調査及び接収。もう一つが護国の象徴たる騎士達の戦力評価と抹殺です」
「10年もそんな事してるんですか」
「10年間ほとんど成果なしだったんですがようやく吉報を本国に届けられそうでね、ちょっと舞い上がってます」
へらへらと笑いながら喋っている。どこまで本心なのか。
「それでねレガリアちゃん、君にこの仕事を手伝ってもらいたいんですよ」
「……はい?」
「グラドミス、私と一緒に殺しません?」
思わず隊長の席を見た。目が合うと話を続けろと手振りで促してくる。
「それをイグドラで騎兵やってる私に言うんですか?私側にメリットなんて──」
「あると思いますよ。そもそもグラドミスは君が原石武器を握っている事も君の所属も住んでいる場所も知っている。追い詰める方法だってそのうち思いつくでしょう」
「……」
「レガリアちゃん、これは他人事ではない。君は既に当事者となっているんです。グラドミスの目的は君だ。原石武器の所有者になった以上、手放すには死ぬしかない」
グラドミスは私を殺そうとした。あれは原石武器を奪う為だったのか。
「10年見てきたから知ってますが、君はただ平穏な生活を送りたいと願っている。グラドミスは君の平穏も命も脅かす存在だ。出来る限り早く消しておかないと」
誘うようにロスが言葉を続けた。
(……どうしよう)
正直なところ頭が混乱しっぱなしだ。
いつのまにか自国の上司殺す話になっているし、この爺からとんでもない厄を押し付けられたようだし、そもそも自分の状況がもう詰んでいる様子なのだ。
「大丈夫です?」
「限界です……」
目を白黒させている私を見かねてか、私の悩みの種が声をかけてきた。
「まあ、今すぐ返事をしろとは言いませんよ」
「……以外ですね、すぐ決めろって言い出すものかと」
「今日は君に危機感を持ってもらいたくて来たのでね」
ロスが杖を手に取った、彼のスープ皿はいつの間にか空になっていた。
「そのうちグラドミスだけじゃない。国内外の原石武器を追う者が君を狙ってやってくる。私は君のお向かいさんとして忠告しに来たんですよ。その上で君と協力関係を築きたい」
「……私はイグドラの……イストサインの騎兵です。メトラタのスパイである貴方との協力は……」
「スパイとしてではなく、友人として付き合いたいものですね。追って連絡しますよ、また郵便受けに手紙を投げ込んでおきます」
ロスが席を立ち、店を出る。
彼が消えたのを確認して、カティア隊長がすぐさま私の正面に来る。
「えっと……隊長、追いかけます?」
「今回の目的はお前とロスの話を聞く事だ。それに手がかりが消えた訳ではない、また手紙をよこすと言っていた。問題はレガリア、お前の方だ」
隊長が私の前の席についた。とりあえず私はポテトサラダを2人分取り分ける。




