転職したいと思うのは簡単だけれどもね:2
「名乗った覚えはないんだが……」
飛び退き原石銃を構える私を前にメトラタの『悪魔』──オズワルドは言った。
銃を向けられているのに臆した様子はない。
「……そうかロスか、アイツに聞いたんだな」
オズワルドは肩をすくめ、そのまま両手の平をこちらに見せる。右腕は義手だと聞いていたが、手のひらも長袖の服から見えるのも人肌の色だ。
「どこから私を尾けてたの?」
「実は昨晩から、孤児院に張り付いてたんだが邪魔なヤツらが居たもんでね」
ロスとオリンピアのことだろうか。
「とりあえず、撃たないでくれよ、アンタとは交渉がしたい」
「交渉?」
オズワルドは頷いた。
「俺の要求は一つだけ、俺とリーパーをここで見逃してくれないか?」
「……私達への見返りは?」
「私達、ときたか、騎兵らしいな銃の嬢ちゃんは」
銃口をオズワルドに向けたまま、今の場所を確認する。騎兵隊の屯所まで走って五分というところ。
「約束するぜ、これ以上この街じゃ人を殺さない」
つまり私が彼を見逃せば、一旦『悪魔』と『リーパー』はイストサインを離れる。
「……貴方は約束できても、今あっちでリーパーが大暴れしてるじゃない」
血反吐をぶちまけながら移動するリーパーの姿を思い出す。奴はいくらでも新鮮な命を欲しがるだろう。
「これでも俺は彼女の上官でね、言うことは聞いてくれるさ」
オズワルドはこちらを見つめている
「お互いに、これ以上の損害は出したくないだろう?」
彼は楽しげな表情をしている。私の苦悩を見て笑っている、そうとも取れるような顔つきだ。
「決めてくれよ、見逃すか、それとも戦うか」
煽るオズワルドを私は睨み返し、銃を持つ手に力を込めた。騎兵としての私──レガリアの答えは決まっている。
「戦うわ」
「………………そうか、騎兵さんよ」
オズワルドは顔を伏せ──笑った。
「お前は、選んだ」
オズワルドの右腕が膨れ上がっていく。




