理由はわからないんですけど仕事中の外食は気分が上がります:2
「書き換え……?」
「色鉄で作られた武器が人体を侵食する現象を、メトラタではそう呼びます。君は色鉄の武器を扱う時、指と武器が一体化するような感覚に陥ることに気づきませんか?」
覚えがある、白輝鉄を扱う時にいつも感じる、指が延長されるような感覚。
「アレは色鉄と人体が干渉しあっているんですよ。人が一方的に命令を下しているようでいて、実は色鉄が人体を色鉄を扱うのに適した状態に書き換えている。こっちじゃ侵食とか言ってるんじゃないですか」
「それならわかります。メトラタじゃ色鉄の侵食を防ぐ為に、専用の加工式入りの蒼鉄や緋鉄を間に挟んでる」
「しかし、原石で作った武器は違う」
ロスが自分の身体に立て掛けていたステッキを持ち上げた。グラドミスと打ち合う際に使用していた、白輝鉄が何本も装填されたステッキ。
「原石武器は所有者を完全に書き換え、武器そのものと最適化──武器の扱いに足るよう身体を変えようとする。肉体を傷つけ、身体の内側を侵食する」
記憶がフラッシュバックする。拳銃を握る手、そこから焼け爛れていく両腕。
「君は運が良かった。アルフレッド君が言っていた、その頑丈さのおかげですか?」
ロスがステッキを私に差し出してきた。傍目からは持ち手の継ぎ目以外には一切の装飾も彫刻もない、武骨な一本の杖。
「持ってみてくださいな」
ロスが杖を渡してくる。持ち上げようとした瞬間、とんでもない重量が腕にかってきた。
「きゃっ……」
「おやおや危ない」
ロスが私の手から杖を奪う。異常な重みは消えたが、腕がしびれていた。
「私はこれを重いと思ったことがない」
軽々と杖を持ち、ロスが喋る。
「私もこの杖に最適化させられたんですよ、君と同じようにね」
「最適化……じゃあ何ですか、私は人間じゃなくなったって事ですか?」
「そういうわけではないと思いますがねぇ、私なんてちょっと力が強いだけのおじさんですよ。君がどんな風に最適化されたかはわかりませんけど」
店員が料理を運んできた、ロスが料金を払い店員は去っていく。
「色鉄に身体が侵食されきっても、食べ物はちゃんと美味しく感じますよ」
「……身体に害は無いんですか?」
「私にもわかりません。最近やっと真面目に研究され始めた分野ですからね、原石武器自体は昔からありますけど」
ロスがキャベツのスープを口に運ぶ。私の方は全く食欲が湧かない。
「……ロスさん、私に何が起きたかはわかりました」
(正直知りたくなかったけど)
「それで、貴方の目的は何ですか?」
ロスが手を叩く、まるでこの言葉を待ってましたと表現せんばかりだ。
「シンプルですよ、グラドミスの抹殺です」
「……今反射的に言いました?」
「いやいや、本心からの言葉ですよ。今暫く私の第一目標は彼の抹殺です」




