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生まれ変わったのですが転生先がどえらいブラックです  作者: 早熟最中
どうやって仕事へのモチベーションって保つんでしょうか
161/201

ネガティブを打ち消すのはポジティブではなく、没頭である。どっかのお笑い芸人がそう言ってたと彼女は教えてくれた:1

「ふう、よっと」

 レラント孤児院に入り、居心地の良さそうな部屋のソファに腰掛ける。昨日オリンピアが座っていた場所だ。

(ちょっとだけ、元気になったかな?)

 家でごろごろだらだらするつもりが塔子に連れ出され、甘いものを食べて埋葬を手伝った。

『身体動かしたらさ、気分が晴れたでしょ』

 得意げな塔子の声。

 悩みの火種はまだどこかで燻っているが、作業に没頭していると距離を置けたような気がする。

『わかりにくいよーその表現ー』

『気が紛れたって言いたいの』

 少し間延びした彼女の声。少しずつ、塔子の感覚が薄くなっていく。

「塔子?どうしたの?」

 消えていく彼女の感覚に不安を感じた。

「なんでもないよ、眠く……なっただけ……」

 口の半分が勝手に動く。

「また会える?」

「うん……今日は……楽しかった……」

 頭の半分を占めていた塔子の存在が薄くなっていく。

(また、一緒に出かけようね)

 彼女は消えてしまったわけではない、私の中で眠りについただけだ。


「……ふふっ」

 今日の外出は楽しかった。

 私の頭の中には友達がいる。

 産まれた時から私を知っていて、どんな時でも味方でいてくれる友達。

(次はどこへ一緒に行こうかな)

 頭の中で計画を立てる。列車で旅をして王都の方に行ってみたりなんて──

「……おーい、レガリアよう」

「──はっ」

 歯車仕掛けの人形のように、ぎこちなく声に顔を向けた。

 いつからそこに立っていたのか、応接室の扉にカスピアンが立っている。

「俺……帰るから」

「は、はい」

 しばしの沈黙、カスピアンの視線はどこか心配するような様子で。

「あのな、本当に不調なら俺から隊長に言っておくからさ、まとまった休みを──」

「けっ……結構です!お疲れ様でした!」

 ばたばた手を振り、副隊長とすれ違うように応接室を出た。

(見られてた?だとしたらヤバいわよ!)

 虚空に話しかけ、自分で自分に返事を返し、1人で笑い始める。私がそんな奴を見たらとりあえず通院を勧めるだろう。

「うぉぉーい!」

 小声で吠えたが、焼き付いた羞恥心は剥がれなかった。

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