物が語りかけてきたら病院に行けっていうけど、脳が勝手に喋り始めたらどうすればいいと思います?:4
食後、私はサインエンド近くにてテラス川を眺めながら街を散策していた。
『レガリアってこの辺好きだよね』
『まあね、表ならそこまで治安悪くないし、変な店漁るのならこの辺がいいし』
昼過ぎなので屋台はまばらだ。これが夜なら得体の知れない食べ物を出す屋台がそこかしこにある筈だが。
『私、貴方のあの悪食の趣味だけは本気で理解できないんだけど……』
『探求よ』
『せ……せめて見た目は普通の物を選ぶべきじゃ』
「探求よ」
声に出た。誰かに聞かれていないかつい辺りを見てしまう。
「……ん、あの人」
『誰かいるの?もしかしてエドくんとか?』
何故か塔子にはエドガーを気安く呼んで欲しくなかった。そもそも見つけたのはエドガーではなく別の人物だ。
「よう、レガリア」
「……あ、ども」
向こうもこちらに気付いて手を振ってきた。出会ったのはイストサイン騎兵の副隊長である男、カスピアンだった。
「奇遇だなぁ、レガリアは今日休みか?」
「はい、副隊長は仕事で……?」
カスピアンは紺色の制服を着ている。流石に休日まで制服を着る騎兵はいないだろう。
「仕事……みたいなものかね、埋葬の手伝いをしにいくところだ」
彼は大きな荷車を引いている。
「埋葬って……もしかして知り合いか誰かが……」
「ん、あれ?昨日の姉ちゃん!」
幼い声がサインエンドの路地道から聞こえてきた。見ると昨日、ジルの受け入れ先だったレラント孤児院にいた少年と、ジル本人が駆け寄って来た。
(誰だっけ……)
『ヴァンって子でしょ、オリンピアに懐いてた男の子』
塔子の記憶力は私のよりもしっかりしているらしかった。
「こんにちはヴァンくん……」
路地に目を走らせる。
オリンピアを探したが、彼女の姿は見えない。
「レガリア、どうかしたか?」
「いえ……」




