物が語りかけてきたら病院に行けっていうけど、脳が勝手に喋り始めたらどうすればいいと思います?:5
騎兵姿の大男一人と男女の子供二人、奇妙な集まりだった。
「どうしてまた副隊長がこの子たちと一緒に?」
「まあ、仕事ついでに荷運びの手伝いでな、レラント孤児院は無縁墓地の管理をしてるんだよ」
そういえば、身元不明の死体の管理は騎兵の仕事だった。
「この間『リーパー』が殺したのは、ほとんどが身寄りのない宿なしか外国人だ」
彼らはレベリオの部屋で発見された遺体を引き取りに行くらしい。
「それで孤児院からここまで」
ヴァンは付き添い、何も言わずに付いてくるジルはきっと、身寄りのない遺体に父親の姿がないか確かめに行くのだろう。
「エドガーにあの女の子の移動手続きを任せたのも俺さ」
「副隊長が、だったんですか」
「俺、あの孤児院出身なんだ」
「え?」
「戦災孤児だったんだよ、それにカティア隊長もレラント孤児院出だ」
思わぬところでイストサイン騎兵隊長たちのルーツを知ることになった。
「30年も前はまだ戦争の真っただ中だったからな」
過去を思い返すカスピアンの眼はなんともいえない感情を帯びていた。
「いろんな場所を知ってはいるが……子供をちゃんと扱ってくれる、真っ当な施設だよあそこは」
「すくなくとも読み書きと算学は出来るぜ俺たち」
よくない施設の話は私も聞いたことがある。孤児院の体だけは取り繕った、いわゆる強制労働施設のような場所の事だ。
「今の時代になってやっと子供が国に守られるようになったんだ」
今さら、と思わなくもないがね。とつぶやいたカスピアンの眼は悲しげだった。
「……ヴァンくん、オリンピアはレラントにいるかな?」
「今日?見てないよ、てか毎日泊まってくわけじゃないからなぁオリンピア」
(いないのか、残念)
いたら叩き出してやったのだが。




