物が語りかけてきたら病院に行けっていうけど、脳が勝手に喋り始めたらどうすればいいと思います?:6
話しながら歩いているうちに、私もレラント孤児院の一団に加わっていた。
死体安置所のある病院に着くと、カスピアンは手続きを済ませに行ってしまった。
「姉ちゃん、なんでついてきたんだ?」
「なんとなくよ」
そうは言ったが、なんとなくで埋葬に付き合う趣味はない。
「なんとなくで死体見に来るのぉ?」
「……カスピアンさんは私の職場の先輩なの、後輩として手伝ってるの」
「無料で?」
「無料で」
目の前の2人にはバイト代が出るらしいが。
「物好きだねぇ」
そう言うとヴァンはふらふらと何処かに歩いて行くジルを追いかけて行った。
(そう、物好きなだけ)
昨日見た、これから運ばれてくる死体の検死報告を思い出す。
(あの部屋から飛び出た、あるいは運び出された人たちはほとんどが即死)
人の形を取った『それ』に銃を放った感覚。
(仮死状態で眠っていた者が数名、現在は全員が死亡)
忘れられない、いや、忘れてはいけない。そう自分に言い聞かせる。
(私が銃で撃つまで、あの人達は間違いなく生きていた)
事実をそのまま受け止めなければならない。
(レベリオは操っていただけで、殺したのは──)
『レガリア?大丈夫?』
塔子の声が聞こえる。彼女なら分かってくれるだろうか、私自身どう対処すればいいのかわからないこの感情を。
「そう気に病むな」
「……え?」
頭上から声をかけられた。
「……副隊長?」
なんてことはない、カスピアンに声をかけられただけだ。頭上から聞こえたのは無意識のうちにうずくまっていたからだ。
「被害者たち……リーパーに殺された人たちのこと考えてたんだな?」
カスピアンの言葉に頷く。
「俺から言えば、お前はあの場じゃ最善の行動を取れたよ。被害者は最低限、下手人は逮捕で一件落着。今のところ殺人も止んだ」




