業務の一環です!というのは大抵の行動に建前を作れる魔法の言葉です:2
ジルの姿を探してみたが、見当たらない。近くにはいないのだろう。
「院長、応接間借りるからね」
はいよ、と大声で返事があった。
「座りなよ」
私とエドガーは小さな応接室へと通された。
机を挟んでソファが3つ置かれている。
机の上には朝刊が置いてあった。
「私もこれ読んだよ」
オリンピアが取った見出しには、変わらずサインエンドの殺人鬼と書かれている。
「アンタら二人組、特に一般人の方には注意しておくけどさ」
彼女の声が少し低くなる。
「この街、また戦場になるよ」
彼女がそう言うと、天井から私の財布が落ちてきた。
「どうしてまたそんな事いうのよ?」
取り戻そうと手を出すが、また財布はオリンピアの手の中に戻ってしまう。
「昨日お前がが倒したヤツ、サインエンドの殺人鬼なんて言われてるけどアイツ、メトラタの原石武器持ちなんだよ」
メトラタ、戦争の記憶も新しい隣国。
「そいつが生きてるにせよ死んでるにせよ、他の『武器持ち』がここに来るのは自然──」
かの国の兵隊が、またイストサインへやって来る。
「というか絶対来るよね、お前のせいでさ」
「私の?」
「お前っていう人間ははともかく、新しい原石武器がこの街で暴れてるってのは知られつつあるんだよ」
いつの間にか、財布は机を挟んだ私たちのちょうど真ん中に浮いていた。
「あの殺人鬼──」
「レベリオ」
「レベリオね、ソイツは調査員。お前を調べる為に送り込まれたメトラタのスパイ」
違和感、彼女の物言いに引っ掛かりを感じた。
「ちょっと待って、メトラタのスパイってロスと貴女の事じゃないの?」
へ、と彼女は馬鹿にしたように笑った。
「ロスはともかく、私は清廉潔白なイグドラ市民だっての」
信用できない。そもそも先日騎兵隊の支部を破壊した女の言う事だ。




