寝れと思うほど寝れない、こういう日はもう起きてしまおう:1
ファルナが使っていいと言ってくれた部屋は、私が普段使う部屋の倍くらいの広さだった。
「…………寝れない」
ふかふかのベッドに身を委ねているが一向に睡魔は襲ってこない。原因は昼寝かそれとも。
(色々あったもんなー)
イストサインでの殺人事件から始まったリーパー騒動。原因は隣国メトラタ、私と同じ原石武器使いの仕業ときた。
枕元に置いてある私の原石武器──原石銃に触れる。
(原石武器について、何も知らない、無関係です、とはもう言えないものね)
ベットから下りて、机の上の資料──グレイマンが渡してくれたイグドラの原石武器の資料を手に取る。
「イグドラにおいて原石武器を持つ者は例外なく騎士である、か」
ここに一人例外の騎兵がいます。
「さて、どう時間を潰そうかな」
眠れない夜にする事といえば読書かスマホいじり──
「塔子、聞こえてる?」
馴染みの無い物体、スマホとか言う物の記憶が見えて、脳内の隣人へ呼びかける。
残念ながら返事はない。
客間の中を見回してみるが、あるのは普通の家具ばかりだ。
(家ならお茶を入れてるところだけど、流石に人様貴族様の家でするのはちょっとね)
外の景色でも見ようと窓のカーテンを払った。
「へえ」
窓の外には月明かりで浮き上がるテラス川がある。
きっと建築家がいい腕をしていたのだろう、イストサインの街並みに時計台、中央橋。名所が幾つか眺められる。
もう少し身を乗り出そうと窓を開けた。
「……ん?」
明けると窓のすぐ下の庭から風を切るような音がした。
「──っ──っ──っ──っ」
音の主はすぐにわかった。ファルナが庭で素振りしている。
「──っ──…………ん?」
そして私が見ているのを察知してか、2階の部屋を見る。




