なんだか嫌な気分です。体は動いてないのに心臓が激しく鼓動して、寒くもないのに汗かいて:2
「レガリア、疲れているようだが報告を頼む、ここで何が起きたのか教えてくれ」
カティア隊長が私の顔を見る。
人混みを割ってやって来た隊長の側には数名の騎兵、エドガーも一緒にいる。本日三度目になった信号だが、今度ばかりは成果を報告出来そうだった。
下宿で起きた事を簡単に説明した後、応援に来た騎兵達が辺りの死体を検分し、何人かが下宿の中へ入って行く。イストサインの連続殺人犯、そしてメトラタの原石武器使いである『リーパー』の部屋へと。
隊長はファルナと私の側に残り、細かい部分を聞いて来る。
「そいつがレベリオだな?」
「はい」
死んだように眠るレベリオを隊長が揺さぶる。
「起きろ!」
隊長がレガリアの顔面に一発お見舞いする。
だが、レベリオは死んだように眠るばかりだ。
「おーい、レガリアくん」
グレイマンの声が聞こえた。車椅子を走らせ下宿の元にやって来る。
彼の姿を見て、レベリオが見せて来た記憶を嫌でも思い出す。原石の炉に人を放り込んだ彼の姿が浮かんでくる。
「君が原石武器の所持者を倒したと聞いている。お手柄だったな、何処に居るんだ?」
「こちらです、グレイマン殿」
隊長がレベリオを引きずって来る。
「見覚えはありますか?」
隊長の問いにグレイマンは少し考え込んだ。
「…………ああ、だが……まさか……」
レベリオを見るグレイマンは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「今になって現れるとは……」
「グレイマン殿、彼は?」
「……嘗て死んだ、メトラタの兵だ」
困惑顔でグレイマンは続ける。
「確かに私が殺した筈だ、この男は彼の国の原石武器使いだった……」
グレイマンが言葉を切り、私の方を見た。
「レガリア君、ファルナはどうした?」
(……そういえば、ファルナ寝たままだな)
レベリオの黒い糸に巻かれたファルナはまだ寝ている。悪夢でも見ているのか若干顰めっ面だ。
「レベリオの糸に絡まれてから、ずっとこんな感じで……」
グレイマンがファルナを寄せ、彼女の剣──原石剣に手を添えた。義手から白輝鉄が伸び、剣を調べているようだ。
「……ファランとの繋がりは生きている。寝ているだけだろう、悪いがこの子を屋敷まで送ってくれないか?」
グレイマンが私に鍵を手渡してきた。
「え……えっと……」
困惑の余り隊長に視線を向ける。
「…………」
カティア隊長は静かに頷いただけだった。
「りょ……了解です」
「場所は貴族街の広場、テラス川を臨んだ青色の屋敷だ。鍵の飾りを見せれば通りすがりでも分かる者はわかる」
グレイマンは再びレベリオに向き直った。
「……後で情報は共有する、ファルナを頼むぞ」




