なんだか嫌な気分です。体は動いてないのに心臓が激しく鼓動して、寒くもないのに汗かいて:1
鈍い音が聞こえる。
後ろを見ると下宿の窓、私が破壊した部屋から虚な表情の人達が落ちて来る。
硬い石畳に落ちた人達は動かない。手足は曲がり、額が割れて血溜まりを作る。
「……はぁ」
疲れた。
落ちてくる死体をぼんやり眺めていると、何も考えたくなくなってきた。
「塔子ー聞こえるー?」
頭の中の隣人に声をかけてみる。
『聞こえるよ』
他人が同じ頭で物を考えているというのは奇妙な感覚だった。
「……これから、いつでも話せる?」
『どーだかねー、ちょっと眠くなってきた』
「……残念、もっと話したいのに」
私の物でない眠気が、思考の半分を覆い始める。
『きっと、アガサのおかげ』
「……え?」
『その銃が私とレガリアを繋いだ、今までより強く、その銃が私を引っぱった、そんな気がする』
レベリオは言っていた。
原石武器の素材は人間である。
あまり考えたくは無かった。この腕に収まる拳銃が、元は人間だったなんて。
『私は、ちょっと嬉しいけどな』
落ち込む私に塔子が声をかけてきた。
「嬉しいって、何が?」
『アガサのお陰でこんな風にレガリアと話せるし、久しぶりに外に出れた。……本当に嬉しい!生きてるみたいだもん』
塔子の喜びが、私の冷たい心を少し暖める。
『ねむ……またこっちで会お……次……は…………楽しい事……やっててね……』
塔子が寝た。
「…………うぇ」
それと同時にずしりとした感情と思考が覆い被さってきた。
(ファルナはいつ目覚めるの?このレベリオどうするのよ……こっちのレベリオの死体は……私今日、二人も殺した……)
音響弾を空に撃つ、何をするにしてもまず他の人を呼ぼう。
鈴を割るような音が、キリリと痛むお腹に響いた。
下宿の周囲には野次馬達が集まって来ていた。
無理もない、私達が押し入った後で銃声やら人が落ちる音やらが下宿中に広がったのだ。
眠り続けるファルナと本体らしきレベリオ、大量の死体に服の焦げた騎兵が倒れている現場はとにかく目立つ。
「おい、レガリア!」
隊長の声だ。
「…………隊長」
我ながら情けない声が出た。深呼吸して喉を整えないと。




