時間が無限に欲しいと思うのはあるあるだけどね:3
「もう……!起きろったら!」
剣を持っていないのが幸いしてか、意識が無い為か、ファルナを組み伏せるのは簡単だった。
そのまま軽くビンタしてみるが表情すら歪めず目を瞑っている。あまり抵抗も無い所をみるとほとんど眠っている様子だ。
(この黒い糸のせい……?切れば起きるかな……そもそもレベリオは……?)
組み合う私たちを置いて、白衣のレベリオはベットに横たわるレベリオを背負い部屋の窓から飛び降りていた。
「アイツ……!待ちなさいよっ!」
とりあえずファルナを背負って追いかけようとした時、背後の暗がりから床が軋む音が聞こえた。
「……ああもう、本当に悪趣味でセコい奴!」
部屋に横たわっていた死体達だ。
彼らが動き出すにつれて、頭に例の嫌なざわめきが広がる。
全てレベリオの『仲間』だ。彼が見せた暗い夢の中で繋っている、レベリオの夢の住人達。
「……ファルナ、建物の経費、どうにかしてね」
(すぐに、アイツを追いかけないと)
私は原石銃を構え、レベリオ達が出ていった部屋の窓に狙いを付けた。
窓ごと壁が破壊され、私は痛む腕でファルナを抱えながら下宿の外に飛び出した。
「──あっ!」
ファルナを背負っていたせいで、重力に筋力が屈し膝から崩れ落ちる。
(追いかけないと……)
急いで顔を上げる。だが、私の前にはレベリオが立っていた。
「悪いが、今日はさよならだ」
「なっ……」
奴の手から黒い糸が噴出する。
(また眠らされる……!)
糸が絡みつき、視界が黒く塗り潰されていく。
『近寄るなって、言ったはずよ』
突然、視界が開けた。
原石銃を持つ左腕が自然に持ち上がり、引き金を引く。
「──うがぁ!」
拳銃の物にしては激しい発砲音が響き、私の意識が少し鮮明になる。
『逃しちゃダメ、コイツがイストサインを、レガリアの故郷を滅茶苦茶にしてる』
思考が乱れる。私じゃない誰かが私の頭で物を考えている。
(塔子……本当に居るの?)
『一緒だって、いつも言ってるじゃん』
視界が開けた。
「ああ、もう1人、子ども、死人、同じ、同じ、でも、違う」
レベリオは腹に銃弾を受けた様子だ。大きく胴を抉られ、血肉が道に飛び散っている。
「……ッハハ……レガリア……くん……それと……もう一人……」
腹を抑えるレベリオは座り込み下を向いている。
「君……たちは……いい……相棒の……よう……だ」
「レベリオ……いいえ、リーパー」
腹を抉られたレベリオを睨みつつ、彼の背後で眠るもう一人のレベリオに銃を向けた。
「もう、観念しなさい」
彼は無表情に私の銃を見つめている。
「ああ……そうだ……ね……君の魂……は……諦めて……おく」
息も絶え絶えにレベリオは言葉を発した。
言い切ると、糸の切れた人形のように倒れ伏し二度と動かなかった。




