職場で出来る人間関係ってそんなに好きでもないのよね:1
イストサインの表通りをグレイマンと共に歩く。
車椅子を押すと申し出たが。グレイマンはそれとなく断り、彼は車輪に手を触れる事なく車椅子を進ませて行く。
こんな街中であるグレイマンの話とは何なのだろう。
「とりあえずレガリア君、ファルナと仲は良いか?」
「え……?ファルナ?」
もっと硬い話題が出ると思っていたのに思わぬ話を振られ面食らう。グレイマンも孫娘を心配するような老人のような雰囲気だった。
「仲は……そんなに悪くない、ですよ」
ファルナとは一緒に戦った、買い物にも行った。職場で接する時もあまり緊張感なく話せる位打ち解けている。
既に友人と言っても差し支えないだろう。
(今日の一件が無ければね……)
彼女が私を監視していた。
どれほどの期間かは不明だが少なくとも仕事の時間はずっとだろう、私生活も見られていたかしれない。
彼女の行動も理解できる。
私は偶然とはいえイグドラの機密、原石武器を手にして使っているのだ。国にとっても不安定な存在である私を監視するのは理解も納得も出来る。
けれど、親しく話していた彼女に対して少しやり切れない思いがあるのも確かなのだ。
「バレたんだな、ファルナが君を監視していたのが」
唐突にグレイマンが言い当てた。
「ファルナに聞いたんですか?」
驚きと共に彼に聞く。屯所に入った時、二人がそんな話をした様子は無かったが。
「珍しくあの子が静かだったからな。私が喋る度に一言挟まないと気が済まない性質のあの子が」
何かあったに違いないと思ってね、とグレイマンは言う。
(確かに、ファルナにしては静かだったな)
少なくともグレイマンはファルナの事をよく気にかけているようだ。
「彼女を悪く思わないでやってくれ、君の監視は私が彼女に命じた事だ」
「……貴方が?」
「そうだ」
堂々と言っている。
「わかってもらいたいが、原石武器の使い手は貴重な上に危険だ。君が無秩序に暴れ回る危惧を私は持っていたのでね、その為の監視だった」
本当に、概ね思っていた通りの理由だ。
「…………そうですか、監視については納得しました」
「物分かりが良くて助かる、そもそもファルナの報告を聞く限りもう君への監視は必要ないと思っている」
嬉しい知らせだった。
「本当ですか?」
「ああ、君には期待しているよ。間違った使い方さえしなければ、きっと君の銃……アガサと言ったな、それは君や君が守りたい物への力になる」
期待を込められた眼で見られ恐縮する。
ファルナも言っていたが、ただ怖いだけの人ではない事は確かな気がした。
「……あの子は家族と折り合いが悪くてね」
「ファルナの、家族ですか?」
「ああ、エンブレスピカ家、王最初の騎士の家系だ」
確かファルナの家族から話を聞いたことはなかった。
「あの子は身内の外に自分の居場所を作りたがるんだ。君とエドガー君の側に居るのは楽しいとよく話しているよ」
ファルナについて話すグレイマンの素顔はまるで彼女の祖父のようである。
「今後も彼女と仲良くしてやってくれないか?」




