報告、ちゃんと細かい事まで伝えないと……どこまで言えばいいんだろ:3
「最初の原石武器はイシュヴァルカ王が作り出した一本の杖だ」
イグドラの王イシュヴァルカ、100年間イグドラで王に君臨する生きる伝説。
「王の杖は武器というより実験体と言うべきだな、ここから色鉄の加工も始まった」
「色鉄より前に、原石武器の存在があったと?」
カティア隊長が驚く、私達にとって初耳の情報だった。
「そうだ、現在流布している色鉄の技術は全て原石武器から来ている。熱による色鉄の精錬、加工式と呼ばれる色鉄に人の意思を伝える技術、それを用いた家具や生活基盤、全て原石武器由来の物だ」
イシュヴァルカ王が現在のイグドラを作ったというのは歴史書にあった。原石と式鉄の加工もその輝かしい功績の一つなのだろう。
「武器の話に戻そう……原石武器の特徴は人の意識を直接読み取り能力を発揮する。ファルナなら空飛ぶ剣、レガリアは銃と糸だな、私は椅子と義肢だ」
「意識を直接読み取るか、まるで生き物だ」
隊長はこの武器をどう思っているのだろう。
不気味がっているのだろうか。
「言っておくが原石武器はただの物ではない、生きている武器だ。原石武器と所有者の侵食が進む度新たな力が発現する」
一息入れて、グレイマンが言った。
「歳ばかり食った騎士が強い、等と言われる所以だな」
ちょっとした冗談のつもりだったのだろうか。
「侵食が進めば意識せずとも武器が助けてくれるようになるぞ。ファルナとレガリア、精進する事だな。武器が応えるかは君たち次第だ」
「…………グレイマン殿、製法については教えてくれないのか?」
グレイマンの表情から暖かみが消える。
「製法は明かせない」
「何故ですか?原石武器が強力なら量産すれば良い、出来ない理由があるのですね?」
「新たには作れない。原石が無いのだ。イシュヴァルカ王が所有していた原石は全て使い切った」
話は終わり、と言うようにグレイマンが手を上げる。
「……なぜそこまで製法については話してくださらないのですか?」
それでも隊長は食い下がった。
「他ならぬ王が禁止した。原石武器の製法に関しても、新たに武器を作る事もな。話は以上だ、後は資料を見てくれ」
グレイマンの態度にはとりつく島も無さそうだ。
「そうだ、レガリア君」
「……っはい!」
驚いた。急に話しかけてくるのだから。
「話がある、一緒に来てくれ」




