あっ仕事増えそう:3
エドガーに話しかけられ大きく息を吸った。
息をするのも忘れるほど緊張していたようだ。
まだレベリオは病棟から出て行っていない。
あの男には、何かある。
「エドガー、ジルちゃんから話聞いててくれる?」
「ああ、それはいいけどお前は?」
「今の人と話をしてくる」
ジルをエドガーに任せ、レベリオを追いかけた。
「あのー、すみませんレベリオさん」
「ん?なんだ、あの子、レガリア、レガリア、どうした、私に何か?」
偶然でも空耳でもない。
この男が喋る度、私の耳にざわめきが広がる。
「差し出がましいのですが薬品庫の記録表を見せていただけませんか?」
若干、何と言うべきか思案した後、自然な切り口でレベリオに話題を切り出した。
「大変ですねぇ、仕事、仕事、仕事、騎兵さんは」
別の棟にある薬品庫にレベリオと共に向かう。
その間もずっとレベリオは同じ調子だ。
「いえ、こちらとしても都合が良かったので」
朝の引き継ぎの後、医療関係者を洗っておけと隊長のお達しがあった。
リーパーが行ったどうかよりもまず、犯人への手掛かりがありそうな薬品を使う仕事──医者や錬金術師を洗うのが筋道ということだ。
煉瓦造りの倉庫に案内され、中の薬品棚を見せてくる。
「あの朝刊の件ですよね。だろうな、それしかない、来てくれた」
「え……?」
流石に聞き捨てならない一言があった。
「どういう事です?」
「何が?何だ、何のこと、何、変だ」
ざわめきは聞こえ続けている。
『聞こえてる?聞こえてる、聞こえてる、静かに』
声が減り始めた。
それとなくホルスターの原石銃を握る。
「……いえ、何でもありません」
「そんな風には見えませんがね」
原石銃に変化はない。
小さな灯りしか据えられていない薬品庫は薄暗く狭い。
こんな場所でこの気味の悪い男と一緒な事態に過去のトラウマ──グラドミスに暗闇で襲われた事が想起される。
「出庫表、見せていただけますか?」
「ええ、かまいませんよ」
ざわめきが消えた。レベリオの口調も先程と違い平凡なものになっている。
(何が起きてるの?)
私は既に、この男から拭いがたい気味の悪さを感じていた。
「酸は、えっとこれどう読めば……?」
「ああ、わからなくて当然です。この欄以下にあるのが酸とそれに類する物です」
レベリオが私の真横に立つ。
『レガリア』
四方八方から名を呼ばれた。




