真面目に仕事……真面目…………真面目かなぁ……?:2
殺人事件の捜査を任せてくれた隊長には悪いが、私の今日の意識は別の方向にあった。
サインエンド屯所での報告を終えたが、終業にはまだ時間がある。騎兵が空いた時間にする事といえば、訓練だ。
「おや、来たのねレガリア」
騎兵支部の地下施設、は使えないので集まったのは臨時の支部扱いになった屯所。その正面の大通り。
待っているのはいつものとんがり帽子を被るファルナレギアだ。
「こんばんは、時間を取っていただきありがとうございます」
「ん……?うん、私も仕事もうすぐ終わるしいいよ?」
エドガーには先に報告へ行ってもらった。
ここから先は仕事か私事か、少し曖昧な時間。
「それで?私に頼みたい事って?」
ファルナと会うのは今が初めてだが、騎兵の伝言板はちゃんと回った様子だ。
「騎士ファルナレギア殿。私に……原石武器を使った戦い方を教えてくれませんか……?」
私の言葉にファルナは目を瞬かせた。
「どしたの?そんなに改まっちゃって」
「えっと……騎士は上司ですので……仕事中ですしこうするのが筋かと……」
「あー、うん、楽にしなさい」
「はい」
「……縮こまる事ないのよ?なんかレガリアピリついてるし」
「いや……騎士の魔法とか……原石武器の事とか、基本国家機密……でしょ?私一般騎兵だし、知っちゃいけないかなって……」
「……あー、なるほど」
「我が国の嫌なところよねー、排他主義に秘密主義、最近はマシになってるってよく言われるけど……私はまだまだ息苦しく感じるわ」
「ちなみに私はそんな事気にしない。要はレガリア、強くなりたいって事でしょう?」
ファルナの言葉に首肯する。
私がこれから、原石銃を狙ってやってくる相手を相手取るには原石武器の扱いを身につけておかねばならない。
その点では、筆頭騎士であるファルナは最高の教官だろう。
「でも、良い機会ね」
ファルナが腰の剣に手を添える。
「私も一度、貴女と戦ってみたかったの」
彼女の朱色の双眸が私を見据える。
彼女の顔面、立ち姿から、危険に鈍感な私でもわかるほどの威圧感を感じる。
「あの、模擬戦、模擬戦でいきましょうね?」
「ええ、弁えてるわよ。でも、模擬戦でも」
彼女が姿勢を下げる。帽子が垂れ、彼女の目線を一瞬切ったが、鋭い眼は私を狙い澄ましている。
「本気よ」
アガサが一際強く鼓動した。




