就職面接なんてもう二度と経験したくないですよね
誰かの声が聞こえる、悲しそう声だ。
(そうか……死ぬんだ私……)
嫌だ、まだ何も家族に返せていない、やりたい事、話したい事、いっぱいある。
視界がぼんやりしてくる
嫌だ、死ぬのは嫌だ。
一際強い眠気を感じたと思えばどこかのオフィスの一室に立ってた。
どういうことだろうか、私は先ほどまで病室のベットで寝ていたはずだが。
自分の姿を見ると、白装束のような服を着てやたらと殺風景な部屋にいる。目の前には椅子と机があり、黒い服を着た人が座っている。
窓を背にして座っているので逆光で顔がわからない。
就活の面接のような雰囲気だ。
「お座りください」
あ、これ間違いなく面接だ。
「し……失礼します」
背筋に嫌な汗をかきながら座る。面接官の視線が痛い、そういえば座る前に一礼が必要だったような。
「まず前世での行いを教えください」
「ぜんせっ?」
日常まず聞かれることのない質問を受け、オウム返ししてしまった。
前世とはどういうことなのか、私は死んで今は死後の世界にいるということなのか。
頭がぼんやりする、自分の事を思い出せない。
「時間はありませんよ、お早く」
「えっとその……特に問題は無かったと……」
「ふむ……行き先に希望はありますか?」
「行き先っ?そんなのあるんですか?」
「リサーチすらしていないのですか……?まったく最近の死人は……」
イライラした声音で面接官は頭を掻いている。
失敗したかもしれない、マトモな返答が出来ていない。
そもそもこの状況に頭は混乱しっぱなしだ。
「最後に聞いておきます……何か希望はありますか?」
「じょ……丈夫な体にしてくださいっ!」
とにかく何か言わなくてはと思い思ったことを口にした。
確か私は身体が弱かった、これくらい要求しておこう。
「……ふむ、よろしいです。今後の検討をお祈りします」
お祈りされた、これは……どういうことなのだろう。
再び世界が暗転した。
身体中が寒い、あらゆる感覚が鋭敏に私の五感を刺激してくる。
苦しい、息をするのも手足を動かすのも、重力の感覚さえ苦しく、私はたまらず大声で泣き叫んでいる。
誰かの手が私に触れた。暖かな腕が私を優しく抱きしめる。その感覚に意識が集中する、身体を刺す空気の痛み、身体に入ってくる空気の冷たさ、それらを全て忘れさせてくれるような感触。
「レガリア……」
音が聞こえる。色々な音が聞こえるが、一際その音は耳に残った。
「貴方の名前は、レガリアよ」
それが最初の記憶。




