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たぶん日本最初の星占い

 たぶん日本で最初の政治に関わる星占いを見つけたのです。


 今回も推論を重ねた仮説で創作です。


 前回「パワハラ&アルハラ」で語った設定を踏襲しつつ、二つの説を二部構成で語っていきたいと思います。



 Wikipediaさんを利用して調べものをしました。



 星占い。



・占星術とりわけ西洋占星術の俗称。


・上のものを簡略化した星座占いのこと。



 原点といえるものは紀元前からあるようで、星座や太陽系の惑星の配置を重視する「西洋系」と、流星や超新星の誕生、星の見え方による変化を重視する「東洋系」の二種があるようですね。


 どちらかというと、西洋占星術のほうを採用した仮説になると思われます。



 日本神話において唯一、名前に星を刻まれたちょっと変わった神がいます。


 天津甕星 (あまつみかぼし)、

 またの名を、天香香背男 (あめのかがせお)。


 別名はまだありますが、それは日本神話の(つね)なので省略します。


 さて、この カガセオ 、何が変わっているかというと、前述のとおり「星」の名を持つ星の神です。

 それともう一つ。「天津」がわざわざくっついてます。


 どこが変わってる?

 そこを解説していきますね。


 イザナギ が持つ神剣 アメノオハバリ 、

 イザナギ ・ イザナミ が産み出した天津神にして天を(かけ)る船 アメノトリフネ 。


 このように、「アメノ」と付く天津神は結構いますね。

 しかし、天津神でありながらわざわざ「天津」が付くのは、なぜでしょう?


 アマツミカホシ、ではなく、「アメノミカホシ」はなぜいけなかったのか?


 それは、「日本書紀」、「古事記」の編纂(へんさん)に当たって、その罪をどうしても刻んでおきたい神がいたからではないでしょうか?



 アマツミカホシは、「天津甕星」と書きますから、



 アマツ・ミカ・ホシ



 という分け方で認識すると思うのです。


 ではそれを、



 アマ・ツミカ・ホシ



 と分けてみたらどうでしょう?



 (アマ)罪禍(ツミカ)(ホシ)



 の字を当てることができるのではと思います。


 罪禍(罪科)って、読み方は「ざいか」でしょ?

 と思うことでしょうが、「ざいか」の場合、「財貨」の文字を当てたくなるのではと思います。

 意味は以下になりますね。


 財貨 : 金銭と品物。財物。経済学で、人間の欲望を満たす金銭や物資。財。


 もし、「財貨」の字を当ててしまったら、財宝の神様って認識になるでしょう。


 なので、あくまでも、「天津神に属しながらも、罪を犯した神」であることを強調するために、


「アマツミカホシ」


 つまり、


「天罪禍星」


 の名がつけられたのではと思うのです。






 では、別名の方を解説していきますね。


 天香香背男 (あめのかがせお)


 瓊瓊杵尊 または 邇邇藝命 と書かれる ニニギノミコト のように、同じ文字を重ねる時は現代と違いそのまま書きますね。


 前述の アマツミカホシ のように、名前に罪が隠されている、という仮説に(のっと)って解説しますと、



 天香香背男 (あめのかがせお)



 こちらの、香香 (かが) の部分です。

 この部分の漢字は、「輝」だったのではと思うのです。

 それを当てはめると、



 天輝背男



 となりますね。


 天津神でありながら、輝き(太陽)に背を向ける存在。


 とイメージすることができると思います。


 そもそもこの カガセオ 、Wikipediaさんを調べていくと、金星のことではと記されています。


 金星って、()けの明星(みょうじょう)(よい)の明星といわれるように、目立つ星でもありますね。


 ……で、明けの明星って……。


 熾天使にして反逆者にして堕天使にして魔王のあの人……人じゃないですけど……を思い浮かべるのですね。


「戯曲 : ダンテ」でしたっけか。地獄巡りの行き着いた先で氷漬けになっている存在のあの人。


 ……ところで、宗教観に踏み込むつもりはないのですけど、例のあの人って、氷漬けになったままじっとしてるような人ですかね?

 影響の少ないところで、自身の配下を増やそうと分身とか使い魔とかそんな感じの存在を派遣していたとしてもおかしくはないかなって思えるほどの存在に思えましてね。



 まあ、「輝きを背にかばい守護する存在」とも読めなくはないのですけどね。






 さて、一つ目の説です。


「アマツミカホシ・アメノカガセオ は、その名に罪を宿した存在」


 長い前振りでしたが、いつものように小話を。




 世界が闇に包まれた「岩戸事件」から、真面目にお仕事している アマテラス お姉ちゃん。

 さすがにやらかした自覚のある老害どももまた、鳴りを(ひそ)めて真面目にお仕事しています。


 けれど、さすがにアレはないなぁ……。と思っていた アマテラス お姉ちゃんは、重臣たちを軽んじない程度に距離をとり、代わりに重臣たちの推す一柱の男神を護衛兼監視役に抜擢します。

 その神が、重臣たち(老害ども)が目をかけていた若きイケメン(確定)な男神、 アメノカガセオ こと カガセオ さんです。


 甘いマスクとイケメンムーブで秘書的な役割を(にな)い、スケジュール管理したり休憩を促したりお茶と甘味を差し出したりと、 アマテラス お姉ちゃんをかいがいしく世話することで、少しずつ打ち解けていく二人。


 老害どもは、自分達の手駒が最高権力者の娘っ子を篭絡(ろうらく)していく様子を、しめしめと(わら)いながら見守ります。



 それを、面白くないと思っている若き武神がいました。


 建御雷神 (タケミカヅチ)ことタケくんと、


 経津主神 (フツヌシ)ことフツくんです。


 この二柱の神、火之迦具土神・軻遇突智などと表記される ヒノカグツチ を斬り殺した際の血から産まれたとされています(注1)。


 そのため、 ヒノカグツチ の特性を引き継いだ鍛治の神でもあり、特に タケミカヅチ の方は名が示すとおり雷の神でもあります。


 さて、その若い二人ですが、カガセオ さんが気に入らないとはいえ、分をわきまえていて、面と向かってたてつくことはしません。

 しかし、 アマテラス お姉ちゃんと カガセオ さんの様子はつぶさに観察しています。


 ……ストーカーかな?


 それはさておき、ずっと観察していたからこそ、段々 アマテラス お姉ちゃんの目がぐるぐるとしていることに気づきます。

 重臣たち(老害ども)とも仕事でやり取りしますが、なんだかその老害どもも、 カガセオ さんと目を合わせたり言葉を交わしたりするとフラフラしているように思えてきます。


 これはおかしい。

 そう思いながらも、自分達もお仕事がありますし、イザナギ流神剣術の技量が衰えないよう鍛練も欠かせません。


 どうしたものかと頭を悩ましていたある日、二人は アマテラス お姉ちゃんに呼び出されます。


「スサノオ くんが地上に降りてだいぶ経つし、そろそろ調査の時期かなあって。だから、タケくんとフツくん、二人して調査に行ってきてくれないかな?」


 まさかこのタイミングで、長期の出張とは。


 正式な命令書も用意されているし、高天ヶ原(たかまがはら)に帰還する手段もちゃんと用意されている正規の出張(遠征)のようで、二人は拒否することができません。


 ふと、護衛兼監視兼秘書役のイケメンをちらり。


 するとなんと、わずかではあっても目元口元が笑みのように歪んでいるではありませんか。


 バッ! と、 アマテラス お姉ちゃんを見る二人。


 お目目はぐるぐる、体はフラフラ。


 どう見ても正気には思えません。


 顔を見合わせ、アイコンタクトし(うなず)きあう二人。


「命令、了解しました」

「しかし、その前にヤることがあるようです」



「ゆくぞ相棒!」

「おうさ! 変・身ッ!!」



 タケくんの呼び声に応えて、フツくんは神剣へとその姿を変えます。(注2)



「悪しきものめ! 我らが雷によって、悪事とともにその身も焼き払ってくれる!」



 しかし、カガセオ さん、とっさに アマテラス お姉ちゃんを人質にします。


 困ったタケくん。こうなると、自慢の雷を撃つことができません。



「なんと卑劣な!!」



 タケくんは声が雷のようにとても大きいので、何事かと野次馬が集まってきます。


 その中の一柱に、「岩戸事件」で アマテラス お姉ちゃんに、文布(あや)()った建葉槌命 (たけはずちのみこと) こと、はずっちもいました。


 はずっちは、文布 (あや)、または倭文 (しとり)という織物を織るお仕事をしている神で、職場の上司にあたる アマテラス お姉ちゃんとも仲良しです。(注3)


 そんな アマテラス お姉ちゃんを人質にしている カガセオ (イケメン)さんと、 カガセオ さんに剣を向けて怒鳴っているタケくんを交互に見て、状況を把握。


 すぐさま神の雷に耐えられる特別な布を用意してこっそりと近づき、 アマテラス お姉ちゃんと自分を布で包み、叫びます。


「ヤっちゃえタケくん!」


怨敵必滅(おんてきひつめつ)!」


 雷の神が放つ雷は、直撃すれば天津神であっても耐えられるものではありません。


 黒幕ムーブしていた カガセオ さんも例外ではなく、(ちり)一つ残さず消滅しました。



 ……その代わり、 アマテラス お姉ちゃんの仕事場は、二柱の神によって放たれた神の雷で、めちゃめちゃに壊されてしまいましたとさ……。



「悪は滅びる!」



 高らかに宣言するタケくんこと タケミカヅチ 。

 しかし、職場が壊滅的な被害を受けた天津神の皆さんは猛抗議。

 罰として、 タケミカヅチ たちは葦原中津国(あしはらなかつくに)への出張の際は、お供の人たちをごっそり減らされてしまうのでした。




 ……とはいえ、それでもサクッと平定を成し遂げる程度には、確かな実力を持っていたようですけど、それはまた別のお話。






 以上が前半です。お付き合いありがとうございます。

 以下は二つ目の説にして主題です。


「占星術により、金星に不穏な動きあり。大事(葦原中津国平定)の前に、吉凶を判断する」説。


 もう少しだけお付き合い願いますね。




 アマテラス により、葦原中津国(あしはらなかつくに)の平定を命じられる建御雷神 (タケミカヅチ)と、経津主神 (フツヌシ)の二柱の神。


 最高神にして太陽神にして神事・祭事を執り行う巫女でもある アマテラス の命令は逆らいません。

 しかし、夜空を眺めて考えます。



 ここ最近の金星の動きが、なんか気になる……。



 と。


 これは吉兆(きっちょう)凶兆(きょうちょう)か、慎重に判断します。


 その期間は、建葉槌命 (たけはずちのみこと)が倭文 (しとり)という織物を織り終わるくらいまで続いたようです。


 星を見ながらウンウン(うな)っている脳筋ども(風評被害)を見つけた タケハズチ 、自分が織った織物の倭文(しとり)を手土産にしてはどうかと渡し、さっさと仕事しろと武神たちの尻を蹴飛ばします。


 文句を言いつつも、礼を言って倭文(しとり)を手土産に葦原中津国(あしはらなかつくに)に向かう二人。


 そのうちの何処かで、徹底抗戦の構えを見せた星を信仰する部族に対して、倭文(しとり)を贈って懐柔(かいじゅう)してみたところ、見事成功。


 その後、星の話で盛り上がる二人と部族のものたち。


 結果的に、金星の動きは吉兆であることが判明したのでした。


 もしこれが、星を()まず倭文(しとり)を受け取らずにこの部族と対峙した場合は、部族を皆斬らなければならなかったかもしれません。


 その場合は、凶兆であったと判断されたことでしょう。




 おしまい。



 拙い仮説にお付き合いくださりありがとうございます。



(注1) : ヒノカグツチ を斬った神剣 アメノオハバリ は、ヒノカグツチの血や亡骸から別の神を産み出したことから、 アメノオハバリ は タケミカヅチ などの親にあたり、一柱の神でもあると表記されている場合もあるようです。



(注2) : フツヌシ は、布都御魂 (ふつのみたま)という記紀神話に現れる霊剣と同一視されている説もあり、文献によって扱いが違う存在でもあります。

 今回のお話では、神としての人型と神剣としての剣型に変身可能としました。



(注3) : アマテラスは、神事や祭事を執り行う巫女でもあるとされていますが、その仕事は多岐にわたっています。

 供物として捧げる稲を育てる農業や、織物の倭文(しとり)を織る機織(はたお)りの他、酒も作っていたとか?


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