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たぶん日本で最初のパワハラ&アルハラ

 たぶん日本最初の社畜とダメな上司によるパワハラ&アルハラを見いだしたのです。


 今回も推論を重ねた仮説で創作です。

 前回「カブキ」で語った設定を踏襲しつつ、別視点のような形です。


 Wikipediaさんを利用して調べものをしました。


 パワハラ&アルハラ。


 説明不要の会社でやってはいけないことの一つではありますが、一応Wikipediaさんを調べてみましょう。



※パワハラ : 職場内虐待の一つ。職場内の優位性を利用した、主に社会的な地位の強い者(政治家、会社社長、上司、役員、大学教授など)による、「自らの権力や立場を利用した嫌がらせ」のことである。

(一部抜粋)

 パワー・ハラスメントの略ですね。



※アルハラ : 主に、飲酒を強要すること、飲めない者への配慮を欠くこと。広義には酔って行うさまざまな迷惑行為・犯罪行為を含む。それらをまとめて指すための和製英語。

(一部抜粋)

 アルコール・ハラスメントの略……と思ってましたが、そもそもが和製英語でしたか。



 さて、今回の主題は、ずいぶんと可哀想な立ち位置にいる一柱の神のことです。



『古事記』では「天宇受賣命」、

『日本書紀』では「天鈿女命」と表記する、芸能・神事を(つかさど)る女神 アメノウズメ こと ウズメ さん。


 その「ウズメ」には諸説あるようですが、「強女」(オズメ)や、「(かんざし)を差した女性」などの説があるようです。



 さて、その ウズメ さん。一番活躍した場所はというと、至高神 イザナギ が引退したあと老害どもの奸計(かんけい)により軍部を担っていた スサノオ くんから引き離された アマテラス お姉ちゃん。(注1)

 ショックで自室(天の岩戸)に引きこもり職務放棄したことで世界が闇に包まれた「岩戸事件」ですね。(注2)



 至高神 イザナギ が引退した後、後を継いだ最高神にして太陽神にして神事や祭事を担う巫女でもある アマテラス お姉ちゃんが自室(天の岩戸)に引きこもったことで、天の威光が降り注がなくなりました。

 ……つまり、太陽が登らなくなり、世界が闇に包まれたのですね。


 イザナギ の代から仕えている重臣たちは、困ります。


 ツクヨミ は、政治の主軸として活躍しますが、重臣たちを軽んじることはなく、むしろ、自分達でコントロールできると思い掌握済みと判断しています。


 スサノオ は、軍部の最高司令官でしたが、結託して根回しすることで、事実上の追放をすることができました。


 あとは、アマテラスを傀儡(かいらい)にするか、世継ぎが必要だと適当ぶっこいて政略結婚からの権力の削ぎ落としをすれば、重臣たちが思うままに高天ヶ原(たかまがはら)を運営できます。



 ……そう、思ってはいたのですが……。



 天の威光がなければ、あらゆる作物が育ちません。

 日の光による温もりがなければ、寒くなって生き物が凍えてしまいます。

 そもそも、旗印である太陽神 アマテラス がいないと、高天ヶ原を治めてきた重臣たちであってもその権力に大きな意味は持てません。


 そんなわけで、重臣たちはほとほと困り果ててしまいます。


 そのため、思金神(オモイカネ)の発案で、色々やらかすそうです。



 そのうちの一つが、芸能・神事を司る アメノウズメ の舞いです。



 いと尊き神よ、お()でください。と願い(たてまつ)奉納(ほうのう)の舞いを披露。



 まだ腹の虫が治まらない アマテラス お姉ちゃん、 ウズメ さんのお願いも聞いてくれません。



 さて、困りました。


 何が困ったかって、正式な作法に(のっと)った奉納の舞いを捧げたウズメさん、ぶっちゃけ最終手段です。

 アマテラス お姉ちゃんに無視されたら、芸能・神事を司る神としての沽券(こけん)に関わる事態です。


 そんなこと、知ってはいるけど知ったこっちゃない アマテラス お姉ちゃん。

 引きこもりを続行です。



 さて、困りました。


 いきなり最終手段に出た挙げ句シカトこかれた ウズメ さん。


 全身から、嫌な汗が止まりません。


 どうしても出てきてもらわないと困る思金神(オモイカネ)などの重臣たち。


 策の一環として、火を()いてどんちゃん騒ぎで歌って踊って飲んで騒いで、いい感じに酔いが回った老害ども。


 若くて見目が良い踊りの神に告げます。


「責任もって、脱げ」


 と。


 他の酔っぱらいどもも、それに乗っかって声を揃えます。


「脱ーげ! 脱ーげ! 脱ーげ!」


 酔って悪ノリしている老害どもは、こんなんでも一応上司にあたり、神としても先輩にあたります。


 最終手段に失敗した ウズメ さん。神としてのプライドもズタズタです。


 その上、上司連中からのアルハラ&パワハラでついにヤケを起こして……。






 一方、完全に()ねてしまったことで、めんどくさい構ってちゃんになっている アマテラス お姉ちゃん。


 思金神(オモイカネ)を中心にした、ただうるさいだけのどんちゃん騒ぎからの、 ウズメ さんの奉納の舞い、そっから、なんか楽しそうな雰囲気に変わっているのはなんとなく感じてました。




 なんか、楽しそうだな……。




 雰囲気に引かれた アマテラス お姉ちゃん、自室(天の岩戸)のドアを少しだけ開けて、外の様子を覗き見てみます。


 すると、ドアのそばに控えていた天手力男神(たぢからお)がドアを一気に開いて懇願します。


「お願いします。この騒ぎを止めてください」




 天手力男神に言われて視線を向けたその先で行われていたのは……。




 乱痴気(らんちき)騒ぎ? ……というよりは、ほとんど(はずか)しめ、でした。




 半裸で踊らされている ウズメ さんと、その様子を鼻の下伸ばしたり指差して笑ってる老害ども。


 頭は悪くないアマテラスお姉ちゃん。一瞬で事態を理解。


 次の一瞬で怒りの沸点を天元突破した アマテラス お姉ちゃん。


 ハイライトの消えた目で騒ぎの首魁とおぼしき者のそばにより、告げます。




「何してるの? ねえ、なにしてるの?」




 思金神以下重臣たち、一瞬で青ざめます。酔いも覚めます。


 姿を見せた アマテラス お姉ちゃんに素早く寄り添う ツクヨミ くん、事態の詳細を簡単に説明します。その後に、半裸の ウズメ さんに服を着せてあげます。



 もうこいつらみんなぶっ○そうかな? とか思った アマテラス お姉ちゃんですが、 ツクヨミ くんの説明のかいもあって、老害どもだけが悪いのではないと理解しました。


 また、高天ヶ原を運営する一番偉い神は アマテラス お姉ちゃんですが、実際に動かしているのは重臣たちとその部下たちです。


 組織を正常に動かすためには、手足となって働く重臣たちとその部下たちが必要不可欠なのは アマテラス お姉ちゃんにもよく分かります。


 なので、今の アマテラス お姉ちゃんは、



「大義である」



 そういう他ありませんでした。




 ……体張って色々ヤる羽目になった ウズメ さんに、あとでなんかフォローしとかないとなぁ……。


 と、思いながら。






 やがて訪れる「天孫降臨」の際に、天孫を最初に迎えた者(注3)に、「そちらは何者であるか?」と真っ先に問いただしたのも ウズメ さんですが、それはまた別のお話。





 おしまい。



 (つたな)い仮説にお付き合いくださりありがとうございます。



(注1) : 前回「カブキ」により、神話に記述されるスサノオの蛮行に違和感を覚えていたことでたてた自説。

 三貴人 アマテラス 、 ツクヨミ 、 スサノオ は、実は仲が良かった説。

 及び、スサノオを英雄に仕立て上げるために、ワガママ放題からの英雄的行動といういわば「ギャップ萌え」を狙った説。



(注2) : 神話曰く、スサノオの蛮行に怯えたアマテラスが逃げ込んだ先が「天の岩戸」とされています。

 また、アメノウズメの項に、 スサノオ が追放される前に父 イザナギ により許可を受けて高天ヶ原に登る途中、 アメノウズメ が スサノオ の姿を発見して報告。それにより アマテラス が天の岩戸に隠れたとあります。


 ……いや、 イザナギ から許可得てんじゃん。 アマテラス が怯えて隠れる理由がどこにあろうかっての。

 報連相しっかりしましょうよ。

 また、泣きわめいて駄々をこねていたとされる スサノオ が、ちゃんと許可とりしてから アマテラス への挨拶として高天ヶ原(たかまがはら)に向かうともあり、葦原中津国(あしはらなかつくに)に降る前の スサノオ の人物像には違和感しかないです。


 その違和感が(注1)の自説に繋がります。



(注3) : 「天孫降臨」の際、葦原中津国に降り立った天孫たる ニニギノミコト を最初に迎えたのは、猿田彦(サルタヒコ)とされていますが、その前段階において、 タケミカヅチ が先行して葦原中津国に降り立ち、「天孫を迎える準備を整えよ」と命じたとも。


 それに反発した一部の国津神(くにつかみ)は、「まつろわぬ神」(注4)として タケミカヅチ に討滅されたり部族まるごと化け物に姿を変えられ地下に逃げ隠れることになったものもあるとか。


※こちらは創作も含まれていると思われます。Wikipediaには、これとは違った説の詳細が記されています。



(注4) : (まつろ)わぬ神。従わないもの。(まつろ)わぬの(まつろ)は、服従の意味。

※Weblio辞書参照


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