貞操の危機
「ホッホッホ・・相馬さんに色目を使うなんてとんでもないことです。ザボ美さんドリア子さん。やっておしまいなさい」
「どけどけこの雌豚共が! 」
「くっ、エリートである私がなぜこのようなことを」
シャー! と蛇のように回りの女たちを威嚇して3人組の魔法少女が現れた。
それは魔法少女だった。普通に変身してる。
「何なのあの女? 」
「シッ! 目を合わしては駄目よ。あいつは魔法少女ダイイチダンカイ・フリーザ。忌々しいことに相馬様にとりついている危険度SSSの最悪の魔法少女よ」
獲物を物色する目で相馬を眺めていた女たちの視線が四散する。一斉に明後日の方を見ながら口笛などを吹き始める。
魔法少女が見るからにやばい奴だから、というのもあるがフリーザの魔法少女力は53万。惑星を破壊できるレベルの力を要する。性格的にも能力的にもやばい魔法少女だったからだ。
「ごきげんよう。相馬さん」
「ああ、伊佐子さん。おはよう」
相馬がちょっと引き気味に答える。彼女の変身前の魔前は布里伊佐子なので伊佐子と呼ぶ。
「朝っぱら変身しているのはどうかと思うよ? 」
「ふふふ、私としたことが申し訳ありません。身の程知らずのハイエナ共がよだれを垂らしていたものですから」
そう言うと伊佐子達は変身を解いた。
変身を解くと、伊佐子は金髪でドラゴンの詩集のジャンパーを羽織った。目つきの悪い少女に変わった。どこからどう見てもヤンキーというか、レディースの少女だった。ジャンパーの下にはセーラー服を着ているので辛うじて高校生と分かる。
取り巻きのザボ美とドリア子は消えてしまった。どうやら魔法少女に変身すると付いてくる付属品らしい。
「まぁスタンドとか念能力みたいなもんだな」
「伊佐子さん一体誰に向かって喋っているの? 」
お約束に突っ込む透。
「伊佐子さんなんて水くせぇな。お姉ちゃんって呼んでいいんだぜ? 」
「絶対に嫌! 」
伊佐子は軽く透とじゃれ合った後、そうっとその場から逃げようとしていた相馬の襟首をがっつりと掴む。
「おっす! 相馬ぁ~会えなくて寂しかったぜぇ~」
そのまま相馬の首を羽交い絞めにしてくる伊佐子。
「会えなかったって、昨日もあっただろう? 」
「ふふふ、夜の間会えなかっただろう? 俺は夜中もずっと相馬と一緒にいたかったのにぃ。なんなら肉体的にも一晩中繋がっていたかったぜ」
そう言って舌をぺろりと舐める。
色気がある大人の女なら色気を感じるところだが、生憎と伊佐子にそのようなものはなく、まるで猛禽類が小型の小動物を捕食するかのごとくだった。
「いや、あの伊佐子。もう電車来るから」
伊佐子をひき離そうとする相馬だが彼女は逃さない。
「電車なんて乗り遅れたって変身すりゃ学校なんてすぐだぜ」
「それは魔法少女法に違反しているだろう? 私的に魔法少女の力を使ってはいけないんだ」
世に魔法少女があふれて久しいが、彼女たちみんながみんな好き勝手に力を使ってはあっというまに治安が崩壊してしまう。そのような事態を防ぐためにも魔法少女達はみだりに変身してはならないのだった。
「俺は正確には魔法少女じゃないから大丈夫なんだぜ。相馬も知ってるだろう? 俺は本来敵の方だからな」
「でも伊佐子は人間になったんだろう? だったら俺は伊佐子に人間のルールを守って生きていかないと」
「相馬…」
キュンと、何かが伊佐の琴線に触れたらしい。伊佐子の瞳がうるうると潤む。
「それってつまり、俺に相馬の嫁になって欲しいってことだな? 」
「ええ? なぜ? 」
全くそんなつもりのなかった相馬の頭の中が?で埋め尽くされる。
「俺が責任を持つから人間になって俺の嫁となって生きてほしいって言いたかったんだろう? 」
「いやいやいや、なぜそうなる! 」
「もう辛抱たまらんぜ! 」
伊佐子は相馬をそのまま押し倒した。
ドヨッと周囲だどよめくが、本気を出せば地球事消滅させられる伊佐子を止めれるものはいない。相馬には地球の安全のために人身御供になってもらうしかなかった。
伊佐は手慣れた動作でズボンのベルトを引っ剥がす。
「はぁはぁ! きめ細やかな白い肌。ちゃんと運動してるのか? いや待て! しないほうが俺は好みだからやっぱりしなくていいや…」
「や、やめ…」
相馬の顔が苦痛に歪む。
あらわになるその白い肌に、ゴクリと周囲の女たちが生唾を飲み込む。
「ごふ…」
そして男子生徒までが鼻血を流す。
相馬はまだ少年だった。少年は時として男でも女でもない中世的な色気を放つことがある…
「俺、何かに目覚めそう…」
「俺もゲイじゃあないけど相馬君なら抱けるよ。ゲイじゃあないけど」
大切なこと名で2度言っていた。
このままでは相馬の貞操の危機。
すっかりモブの中に溶け込んでいた透だったが、これはいけないと立ち上がる。
「透ちゃん、お兄さんいじめられてるの? 」
忍は何が起こっているのかよく分かっていないのようだったが、心配そうに見つめている。どうかそのままの君でいて。
「伊佐子さん! 辞めて! 」
小さな体に精一杯の勇気を込めて、伊佐子の前に立ちふさがった。
「そういうのは結婚してからでしょう!? 」
「!? 」
この場で伊佐子を諫められるとしたらそれは透だけだった。
なぜなら透は伊佐子にとって将来妹になるかもしれない人物だった。無下に扱うことはできない。
「ふっ…分かったよ。お姉ちゃんも本気でやっていたわけじゃないさ。こんな人前でおっぱじめるなんて」
そう言ってそそくさとブラのホックを付け治す。完全にやる気でしたね。
そうこうしているうちにようやく電車が駅のホームに到着した。残り数分の割にえらく時間がかかったがウルトラマンの3分の頃からそういうものだと決まっているから仕方がなかった。