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第3話 盗賊のアジト


「「可愛い〜!!」」


 あの後、ステラに領主の側近として相応しい衣服を与えねばと言う話になり、この辺境で一番まともな服屋に入った。

 店員さんも若い女性ばかりだったので任せたのだが、この有様だ。


「あ、ぅ?」


 ステラが預かってる猫みたいに大人しくなってる。

 お姉さんに囲まれて右往左往しながらぷしゅ〜、と頭から煙も出ていた。

 許容量オーバーだろうな、とエドウィンは他人事の様に考える。


 店員さんも楽しそうにステラを着せ替え人形にして遊んでいた。


 正直、エドウィンはファッションセンスが無かった。服はヴィティに選んでもらうので、勉強をする必要も無かったからだ。ヴィティにも勉強しなくていいと言われたので、かなり楽をしている。


 さて、そろそろ帰るか。

 と、特に似合っていた服を上下合わせて七着ほどで会計をしたのだが、値段は14200レイルとかなり安かった。


 超激安な値段で驚いたが、店員さんによると「店長が可愛い子には八割引でサービスしなさいって言われてるんですよ〜」との事だ。


 ここの店は男性の服も扱っているので、次はエドウィンやヴィティの服を買う時もここにしよう。と心の中で誓った。


「あぅ、はずかしいです……」

「似合ってるぞ?」


 スカート型のとても女の子らしい、可愛らしい服だ。

 ステラは恥ずかしそうにするが、街行く人も可愛いと呆けている輩もいた。

 そのくらい可愛い。


「ん?」


 その時だ。

 通りすがりの獣人に違和感を覚え、鑑定眼で視ると衝撃の事実が判明した。

 すぐさまヴィティとステラを建物の影に連れて、小声で状況を伝えた。


(ヴィティ、ステラ、あの男を尾行するぞ)

(え、えっ?)

(あれは盗賊だ)

「と、盗賊!? むぎゅっ」

(声が大きい!)

(捕らえるのですか?)

(詳細が不明だからひとまず尾行だ。奴等のアジトを突き止めて、人数や人質の有無を確認するぞ)

(承知しました)


 こうして、尾行が開始された。







 盗賊の男は門を出て、森の中に入って行った。

 辺境ここには門番の一人もいないので、自由に行き来が出来る。

 本当に大丈夫かこの街、セキュリティ的な意味で。


(この辺で索敵も開始するか)


 エドウィンは凄腕のテイマーでもあった。

 通常のテイマーはテイム出来る数に限りがあるのだが、エドウィンはほぼ無限に契約する事が出来る。

 仮にテイマーの才覚があれば、数値はSSSを超えていただろう。


(スカイバード召喚)


 呼び出したのは、一羽の鳥だ。

 世界的に見ても広範囲で生息している種類の鳥だが、索敵するのにはちょうどいい。相手に怪しまれる心配も無く、集中出来る。


 エドウィンはスカイバードを上空に飛ばして偵察させる。視覚を共有できるので、空から森全体を見渡す事ができた。


(おっ、見えた)


 意外にもアジトはすぐ近くにあった。

 全員が獣人の様で、木々を切り倒して小さな集落を作っている。しかし建築が甘く、今にも倒れそうな家ばかりだ。

 老人子供も多くいて、実際に戦えるのは百名と少しばかりか。


 そこで一人の男を見つけた。

 一際体格が良い。佇まいが戦士のそれだ。

 指示を出しているように見えるし、子供たちから話しかけられれば跪いて目線を合わせている。

 その様子がエドウィンにはとても悪い奴には見えなかった。


 あれがリーダーの様だ。


 続けて、次の手を打つ。


(ファーラット召喚)


 スカイバードとは逆にファーラットは十匹の大所帯での召喚だ。身体が小さく、こちらも世界各地で目撃される種類なので、そこらにいてま違和感が無い。

 さらに素早く、小さな隙間も通り抜けるため諜報には持ってこいだ。


 十匹のファーラットは集落の四方八方から侵入し、見事に潜り込む事に成功した。

 聴覚共有を始めて、獣人達の会話に耳を立てる。


『流石はアドルフ様だ』

『まだお若いのになんて勇ましい』

『突然、里長になったというのに』

『この前、ヒュリーさんのところで赤ちゃんが産まれたって』

『我々の希望だ』

『百人の戦士団もいる』

『食糧が足りない』

『ここにいるのは強力な魔物ばかりだ』

『しかし、我々には旅商人から奪った財宝がある』

『これでしばらくは生活できるぞ』 

『レヴェンテではまともな食糧が買えん』

『盗賊にまで身を落としてくれたアドルフ様のおかげじゃ』


 ふむ、なるほど。

 大体のここの内情は把握出来た。



 ある程度の事情を二人に話すとヴィティが「私が皆殺しにしましょうか?」と物騒なことを言い出したので、慌てて止める。


(いや、ここのリーダーを部下に欲しい)

(と言う事は?)

(ああ。かなりの才覚がある。それを差し引いても、集落にいる他の獣人からの人望の厚い男だ。リーダー向きだし、是非とも部下にしたいな)

(承知しました。では、作戦は?)

(作戦は**********する)

(さすがに危険過ぎます!)

(頼む)

(ですが……)

(大丈夫さ、俺はいつでも逃げられるし、いざとなったら奥の手だってある。そうだろ?)

(……はあ。ピンチの時は出し惜しみしないで使って下さいね)


 切り札は切り札だ。

 そりゃあ死にたくないから、いざという時しか使わない。

 出来れば、今回も使わなくて済むことを祈るがな。


(あ、あの、わたしはなにをすればいいですか?)

(ステラはヴィティと一緒に待機だ)

(しょうちしました!)


 ヴィティの真似をした可愛らしい返事にくすりと笑いながら、エドウィンは覚悟を決めて、堂々と狼の獣人のアジトの前に姿を現した。


「俺は辺境都市レヴェンテの領主 エドウィン・グラウンドだ! 狼の長アドルフに話がある!」


 精一杯の大声で叫ぶとアジトが急に騒がしくなった。


気ままに投稿して行きます。

気長に次の投稿を待ってくれると嬉しいです。


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