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第2話 マッチ売りのステラ

「うーん……」


 辺境都市レヴェンテの領主に就任したエドウィンは、先程から新しくなった書斎でうんうんと唸っていた。


 その様子に紅茶を淹れて来たヴィティが疑問に思い声を掛ける。


「どうかしたんですか?」

「人材が足りない」


 冗談抜きで人材が足りなかった。

 そもそもこの屋敷にはエドウィンとヴィティしかおらず、領主の手足となって動く者が一人もいない。

 長年、領主がいなかった弊害だろう。町長や村長の様に、この街にまとめ役がいるかも分からないし、それらがエドウィンの政治に従う事も無いだろう。


「はあ……」


 本当に面倒臭いところに来てしまった。

 これでは辺境都市の再建どころでは無い。


 せめて腕っ節がある者、街をよく知る者、農業が出来る者、建築が出来る者が欲しい。


 仕方が無いか、と呟いてエドウィンはコートを羽織った。


「お出かけですか?」

「ああ。人材発掘だ」

「それはそれは。お供させていただきます」


 目をキラキラさせて、ヴィティはそう言った。

 何が楽しいのか、いつも







「荒れてるなー」


 やはり、その一言に尽きる。


 街は清掃も行き届かず汚らしく、歩く者達も目から正気がなく、野蛮な者が多い。


 そこで絡まれて、変な厄介ごとに巻き込まれるのは嫌なのでエドウィンもヴィティも顔が隠れるくらい深いフードを被った。


 ヴィティは護衛の為に気を抜けずにいるが、逆にエドウィンはヴィティがいるからこそ、安心して街行くもの達を眼を凝らして視る事が出来た。


「ほう」


 そんな中、とあるステータスに目が止まる。

 素晴らしい才能だ。あれは欲しい。


 そう考えて、とある少女に近付いた。


「あ、あの、マッチ、いりませんか?」


 その少女はマッチ売りだった。

 薄汚れた衣類しか着ておらず、王都ならば誰も見向きもせず、近寄られれば足蹴にされてしまう様なか弱い少女。奴隷として売られたり、突然いなくなっても誰も気付かない少女。


『生きているだけで無価値』


 貴族達は皆、そう言うだろう。


 しかし、エドウィンの眼に視えたのは全く違うものだった。





名前:ステラ

種族:人間

年齢:10歳

性別:女

称号:マッチ売り


筋力:6

俊敏:7

器用:5

体力:2

知略:2

魔力:10

幸運:1


スキル

無し。


剣術:SS

槍術:E

斧術:F

弓術:F

盾術:F


乗馬:C

軍略:D

政治:F

農業:F

商業:F

鍛治:F

建築:F

研究:F

料理:F

掃除:E

音楽:F

芸術:F


炎魔法 :D

水魔法 :F

風魔法 :F

土魔法 :F

雷魔法 :F

氷魔法 :F

闇魔法 :F

光魔法 :F

神聖魔法:F

空間魔法:F





 凄まじい。剣の才能がSSもある。

 簡単に言えば、間違い無く歴史に名を残す程の超逸材だ。


 さらに乗馬がCもある。

 一般的には天才と呼ばれる部類の才能で、他も軍略がDあれば、戦略理解が高いため戦場では隊長を務められるレベルだ。

 何よりも炎魔法まで使えるのなら、魔法と剣技、二つを使うトリッキーな戦い方をする魔法剣士にだってなれる。


 是非とも欲しい。


「ありがとう、一つ買わせてもらうよ」

「あ、ありがとうございます! 100レイルです!」


 マッチ一つで100レイルか。

 王都で買う十倍の値段だな。

 高過ぎ、いや、ここは辺境だ。

 流通も安定しないので物価が高いのだろう。


「はい」

「わあっ」


 ステラの小さな手に100レイルを置くと驚きに近い程、嬉しそうに笑った。


「これでみんなにごはんをかってあげられます!」

「みんな? それは家族かい?」

「はい! とってもたいせつなかぞくです!」


 ふむ。家族がいるのか。

 ならば、挨拶して、ステラを雇いたいとお願いしないといけないな。


「挨拶をしたいんだが、案内して貰えるかい?」

「わかりました! 着いてきてください!」


 そう言って、とてとてと路地の奥に走って行った。


「エドウィン様、罠の可能性は……」

「無い。あったとしても、護ってくれるだろ?」

「はあ、またそうやって」

「ほら、置いてくぞー」

「あ、待ってください」





 路地の奥に進むと信じられない光景を目にした。


「おにいちゃんたちだれー?」

「ステラのおともだちー?」


 そこにいたのは沢山の子供達だった。

 近くに大人の気配は無く、子供だけだ。


(戦争孤児か? 三十人はいるな。流石に今すぐこの子供達を世話してやる事は出来ない、か)


 本当なら子供は保護すべき対象だ。

 しかし、施設と資金も足りない今、それは難しかった。


「この子達が家族、か」

「はい。わたし、いちばんおねえちゃんなので、みんなにごはんをたべさせてあげないといけなくて」


 ここでの生活なら自分が生きるだけでも大変だろうに、なんて健気な子なんだ。


 しかし、ううん……。


「よし、それじゃあこうしよう」

「?」

「ステラ。君を俺のところで雇いたい」

「え、ええっ!?」


 驚いた様で、ステラが大きな声で反応した。


「本当だ。そうだな、騎士見習いでも、俺の護衛見習いでも、役職は何でもいい。是非とも君を雇いたいな」

「で、でも」

「勿論、対価は払うぞ? そうだな、月に170000レイルでどうだ?」

「170000っ!!?」

「ああ。最初はまだ見習いだから、少しずつ給料を上げていこう。さらに、この子達が安心して暮らせる場所の建設も急ごう。どうかな?」

「っ、あぅ」


 ぷしゅー、と頭から白い煙が出る程に、ステラは頑張って頭を回転させていた。

 今頃、頑張ってどちらの方が得になるか考えているのだろう。

 一生懸命頭を悩ませる姿、可愛らしい。




 少し待つと結論が出た様だ。


「わ、わかりました。わたしを、はたらかせてください!」

「うん。よろしく」


 こうして将来有望な剣士ステラが仲間になった。

 今日はこれだけで大戦果だな。

 さて、お祝いに大盤振る舞いしよう。


「ヴィティ、食糧を出してくれ」

「承知しました」


 幸いにも、エドウィン達は大量の食糧を持って来ていた。それも辺境都市にはまともな食べ物を得られないだろうと危惧していたためのものだったが、子供達の救いになるのならいくらでも差し出そう。

 子供達の前にひとまず、決して多いとは言えない量のパンが並んだ。この配給が何日も継続するとなれば、多少の節約はしないといけないからな。


「ひとまず、これが今日の分の食糧だ。明日から毎日渡しに来るからね。あんまり食べ過ぎたらだめだよ?」

「わーい!」

「すごい! たべものたくさん!」

「ありがとう、おじさん!」

「お兄さん、なっ!」

「おにいさん!」

「にいちゃん!」


 元気な子供達だ。

 笑顔でパンを食べる姿を見ていると、もっと食べさせてやりたい気持ちも出て来た。

 

 これはこの子達を保護する施設の建設も考えた方が良さそうだな。


「それじゃあ、行こうか。ステラ」

「は、はい! よろしくおねがいします!」


 人材探しはまだまだ続く。





気ままに投稿して行きます。

気長に次の投稿を待ってくれると嬉しいです。


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