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第1話 辺境都市レヴェンテ


 エドウィンには物の良し悪しを見ることができる、不思議な眼があった。


 その名も鑑定眼。


 この名前すら、エドウィンは自ら鑑定して知る事となった。


 スキルはあると認識されているが、それを知る手段が世間一般には無かった。だから自分のスキルの正式名称や詳細を知らず、変な名前を付けている者も多い。


 この秘密はヴィティ以外は誰も知らない。

 二人だけの秘密だ。






 王宮がある王都から、馬車に揺られて三日。

 エドウィンとヴィティは辺境都市レヴェンテに辿り着いた。


 街への第一歩を踏み入れたエドウィン達の第一声はーーーー「うわー」「これは……」ーーーーだった。


 何故か焦げ臭い匂いが漂って来る、そもそも数件の家が焼けた跡がある。住民達はほとんどが痩せこけていて、目に正気が宿っていない。

 街に入ってすぐの場所では薄着の女達が売春の売り込みをしているし、薬物だろうか顔色が良くない者もいる。

 道にはゴミと人が落ちていて、見栄えはとても悪い。


 これが辺境都市レヴェンテ。

 ゴミの都市と呼ばれる


「とりあえず、屋敷に行くか」

「そうですね」


 領主の屋敷は人気が無い街の最奥にあって、木々が立ち並ぶ場所にぽつんと建っていた。


「「うわー……」」


 そして、やはり屋敷も酷いものだった。

 二階建ての屋敷としての原型はとどめておらず、魔法の一発でも撃ち込まれたのだろう、二階の角部屋が丸ごと破壊されていた。

 汚れも目立つ。長年手入れしていなかったからか、庭の草花は荒れ果てている。住民からはゴミが捨てられ、廃棄場のようになっていた。


「まあ、そりゃそうか」


 屋敷の中も似たようなもので、埃が溜まり、ゴミは捨てられ、人が住める状態では無かった。

 これからどうするか、と悩んでいるとヴィティから提案される。


「私が処理しましょうか?」

「あー、うん。まあ…………頼むよ」

「承知しました」


 結局、掃除はヴィティがやる事になった。流石にこの量だ、普通の掃除では今日中には終わらない。

 ヴィティのやり方だと家具などもまとめて消えてしまうが、仕方が無い。

 

 ヴィティは一人だけ、屋敷の玄関に入る。

 扉は開放したままでエドウィンからもヴィティの姿は確認出来た。



「氷魔法 氷結時代アイス・エイジ



 ヴィティが呪文を唱えると一瞬で屋敷全体が凍り付いた。


 ヴィティは氷魔法の才能がある。

 それこそ、歴史に名を刻むほどの物だ。

 

 この氷魔法も、屋敷の全てが凍っている様に見せて、実は表面の汚れのみを凍らせている。

 流石に家具やカーテンなどは芯で凍ってしまって助けられないが、汚れを取る手間を考えれば必要な犠牲だ。


 そのままヴィティが指を鳴らすと汚れが家具ごと粉々に砕け散った。


「良くやったぞ」

「はい、エドウィン様」


 ひとまず、これでかなりの時間が短縮出来た。

 褒美として戻って来たヴィティの頭を撫でてやると目を細めて気持ち良さそうに頭を差し出して来た。

 このまま撫でてているといつまでも撫でてしまいそうなので、心を鬼にして撫でるのをやめた。


「さ、さて! ベッドやソファは前の家から持って来たから、さっさと中に運ぶか!」


 早速二人で引っ越しを開始した。


 エドウィンとヴィティには幸いにも空間魔法の才覚があった。と言っても、エドウィンは剣や少量の衣類や食糧しか収納出来ないので、今回の荷物のほとんどはヴィティが収納している。

 ヴィティは元々、私物をそこまで持っていないので殆どがエドウィンの物だった。

 エドウィンとしては情け無い限りだったが、今までも散々迷惑をかけて来たので「今更か」と特に何も言わなかった。


 それから二人で荷物を部屋に置いて行く。


 まずはエドウィンの部屋からだ。防犯面から考えて、二階に続く階段から一番遠い角部屋にした。

 キングサイズの無駄にデカいベッドを取り出して、部屋に置いた。他にもエドウィンの着替えが入っているクローゼットもこの部屋に置く。


 続けて、エドウィンの書斎だ。こちらはお客さんなどを招く場合のために一階に設置した。

 そこには元々使用していた机やソファ、そして大量の本が入れられた本棚を置いた。


 ヴィティの寝室は護衛の必要もあるのでエドウィンの部屋の真正面だ。ベッドに机、少しの本とクローゼットが置かれる。


 これで一通りは終わりだ。後は水回りなどの確認だが、流石に領主が住まう屋敷なので各部屋に洗面所と風呂場が付いていた。

 各所を確認したが、水は問題無く出た。おそらくだが、山の水源から直接水を引いているのだろう。飲んでみたが、新鮮で中々に美味かった。


 厨房の点検はヴィティに任せたが、問題無かったらしい。持参したヴィティ専用の調理器具を一箇所にまとめて収納していた。


 早速、ヴィティが料理を振る舞ってくれた。

 ヴィティの料理の腕は王宮の料理人にも負けず劣らずの腕前で、エドウィンが好みの家庭的な料理を得意とするのでエドウィンもよく作って貰っていた。


 そして食器の洗浄を済ませるとすっかり夜になっていた。もう寝る時間になり、部屋の前で


「お疲れ様でした、エドウィン様」

「あ、ああ……」


 名残惜しい。離れたくない。

 エドウィンの頭の中はそれでいっぱいとなり、ついヴィティを引き留めた。

 どうしたのですか?と首を傾げて伺う姿にドキッとしながら、エドウィンは意を決して想いを伝える。


「あー、……今日は一緒に寝るか」

「承知しました、エドウィン様」

「あ、今はメイド言葉は無しで」


 ぱちくりと瞬きした後、ヴィティはにこりと笑って鉄の仮面を脱いだ。


「分かったわ、エド」

「やっぱりそっちの方が可愛いぞ」

「あら。それなら、普段からこうする?」

「……それは、なんかやだ」

「安心して。私は貴方にしかこんな姿は見せないから」


 そして愛する女性と共にベッドに入った。

 

 人目も気にせずに一緒に寝るのは久しぶりで、こんな場所に左遷されたのも悪く無いな、と二人で眠りの世界に落ちて行った。


気ままに投稿して行きます。

気長に次の投稿を待ってくれると嬉しいです。


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