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プロローグ

どうも、近藤ハジメです。新しく連載始めました。

辺境都市の鑑定領主 〜領主が働かなくて良い街づくりを目指して、鑑定眼スキルで無双しますが結局働かざるを得ない件について〜 をよろしくお願いします。


 プラトアース王国は世界屈指の大国だ。

 豊かな自然に囲まれ、広大な土地を保有している。

 人口は世界最強国の帝国に並ぶほどだ。


 王国は帝国に次ぐ、二百年の歴史を持つ。

 現在は二十七代国王フヤチチ・グラウンドが治めている。


 さて。そんな場所に生まれた俺、エドウィン・グラウンドは十九人いる兄姉弟妹の第七王子だ。






「エドウィン、貴様を辺境都市レヴェンテの領主に任ずる」


 父、フヤチチ・グラウンドの重たい声が玉座の間に響いた。

 周囲の大臣貴族の嘲笑う声が微かにエドウィンの耳にまで届いた。しかし、一々相手にしても無駄なので無視する。


 辺境都市レヴェンテとは、この国で最も廃れた都市の名だ。周囲は高い山々と森に囲われ、すぐ目の前にはエルフの国とドワーフの国の国境がある。

 エルフとドワーフは歴史的に見ても仲が悪いため、時には戦火の影響が辺境都市レヴェンテにまで届いた。

 

 通称「ゴミの都市」。

 

 そんな場所に送られると言うのは、左遷、つまり厄介払いだ。エドウィンが領主として任命されたのは決して名誉なものでは無かった。


「……父上、何故突然、私が辺境都市レヴェンテへ行く事になったのですか。理由を聞かせていただいてもよろしいですか?」

「ふむ。理由それはお前が一番分かっているはずだが」

「心当たりも御座いません」

「ジョナサンから、お前にユリアが強姦されたとの報せを受け、今回の事を思い立ったのだ」


 成程な、とエドウィンは思った。


 第二王子ジョナサンとエドウィンの仲は悪い。兄弟達の中で最も悪いと言ってもいい。

 ユリアは彼の妻で、おそらく今回の事もジョナサンと結託しているのだろう。

 今までも陰湿ないじめをされて来たが、ここまでされたのは初めてだな。


「本来ならば国から追放する処遇も考えたのだが、私も鬼では無い。お前が辺境都市を上手く治める事が出来れば許してやろう」


 良く言うよ。


 許すどころか、これは王族、エドウィンにとって最悪の刑罰にも等しかった。


 辺境都市の住民達は王族を悉く嫌っている。

 それはこれまで、王族が辺境都市に対して何の支援もせずにいるからだ。病気になっても、戦争の影響を受けても、国が何かをした試しが無かった。


 さらに辺境都市は無法地帯に等しい。騎士や兵士もおらず、領主を守る者がいない。

 そんな場所に王族が領主として行けば、どうなるか想像出来る。最悪だ。


「成程、承知しました。国王陛下の命を受け、私も命をかけてこの役目を全く致します」


 しかし、王命を断れるはずも無く。


 エドウィンは辺境都市レヴェンテの領主となった。







 玉座の間を出てから「はあ」と溜息を吐く。

 そんなエドウィンに話し掛ける影が一つ。


「如何されましたか?」


 使用人の格好をした白髪銀眼の美少女だ。

 彼女の名前はヴィティ・スノーリン。

 エドウィン専属の使用人メイドで、小さい頃からの幼馴染でもある。


 スノーリン男爵家の娘でもあるのだが、そんな彼女がエドウィンのメイドをやっている理由はまたいつか説明するとしよう。


「いや、辺境都市レヴェンテの領主になる事になった」

「それはおめでとうございます」

「ああ。ありがとう」


 ヴィティはニコリと微笑みながら、エドウィンの領主就任を喜んだ。


 その笑みは冬に咲く花の様で、エドウィンも少しドキッとした。


 と思ったら、廊下の曲がり角から気配を感じた。

 今は会いたく無い奴だ。

 ガラスを割って逃げようか、と考えているうちにそいつがやって来た。


「エドウィン〜? 久しぶりだなぁ〜?」

「……どうも、ジョナ兄さん」


 現れたのはエドウィンを嵌めた、第二王子のジョナサンだった。

 金髪のイケメンで、美形なのは父の血を継いでいた。


「どうしたんだぁ? まるで辺境都市の領主にでもなったみたいな顔だなぁ?」


 白々しい。

 全て知ってるんだろうが。


「ははは、良く分かりましたね。実は辺境都市レヴェンテの領主に就任する事になりました」


 何て言えるわけも無く、心の中に押し留めて笑顔を取り繕った。


「そりゃあ大変だなぁ? 怪我には気をつけるんだぞ?」

「ええ。ありがとうございます。では、私は旅の支度がありますのでこの辺りで失礼します。ヴィティ、行くぞ」

「はい」


 ジョナサンに頭を下げて、直ちにそこから去ろうとした。

 だが、失敗した。

 

 ジョナサンに待て、と呼び止められる。

 

 それはエドウィンに対してでは無く、ヴィティに対してだった。


「おい、メイド。お前もそんな奴のメイドなんて嫌だろう?」

「いえ、私は……」

「ははは。お前には勿体無いメイドだなぁ?」

「その通りですよ」


 確かにヴィティはエドウィンには勿体無いくらい、良いメイドだった。


 ジョナサンはエドウィンがここにいる事も忘れて、ヴィティを口説き始めた。


「君の笑顔は儚くも美しい」

(あ、やば)

「私のメイド、いや、側室になりなさい」


 そう言ってジョナサンはヴィティの髪に触れる。

 ヴィティの髪は美しく、手に持つとさらさらと流れ落ちるのだ。


 ヴィティは【雪の妖精】と呼ばれる程に美しい。

 その美しさを自分の物にしたいと言う輩はこれまでに何人もいた。

 ジョナサンもその一人だった。


 だがーーーー。



「触れるな」


 

 ヴィティから放たれた冷たい殺気がジョナサンを射抜いた。


「ヒィ!」

 

 荒れ狂う魔物でも逃げ出す殺気だ。

 何の訓練もしていないジョナサンが腰を抜かすのも仕方が無い。


 ヴィティはこの世で、自分を触らせる人間はエドウィンただ一人だけだと決め、それをエドウィンの前で公言していた。

 特にエドウィンとしては何の契約も結んだつもりはないのだが、ヴィティはその誓いを頑なに護っていた。

 そして、ヴィティに触れた男は全員、ナニがとは言わないが再起不能にされていた。


「貴様、如きがッ、私を、エドウィン様の所有物に触れるなど…………ッ!!!」


 ヴィティの怒りで魔力が漏れ出ている。

 冷たい冷気が窓まで届き霜が付着した。

 足元が凍て付き、氷結が広がる。


「まあ落ち着け、ヴィティ」

「エドウィン様……」


 このままだとジョナサンを殺してしまいそうなので、エドウィンはヴィティの頭を撫でて落ち着かせた。

 スー、と溢れ出る魔力が消えた。

 氷結も止まり、これで王宮を凍り付かせてしまう事は無くなった。


 さて、と。


「……ジョナサン」


 エドウィンは尻餅をついているジョナサンの耳元にそっ、と近付いた。

 そしてヴィティには聞こえない様に、小さな声で告げる。



「俺のメイドに近付くなら、次は宝物の剣だけじゃ済みませんよ」

「ッッ!!!」



 エドウィンとジョナサンにしか分からない話だが、その件を口に出すと言うことはエドウィンが本気だと言う事も伝わったらしい。


 思い出したのか、表情を青褪めて震えてた。


「す、すまなかった、許してくれ……」

「勿論ですよ」


 ジョナサンに向けて、満面の笑みで微笑んだ。


気ままに投稿して行きます。

気長に次の投稿を待ってくれると嬉しいです。


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