表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/23

19.バンドマンのギルダム

前世ではバンドマンをやっていた事がある。2か月くらいやっただけで、ライブ経験も1回だけだが、一応チケットを売って聞いてもらったのでバンドマンを名乗っていいだろう。

一般人より1㎜だけ音楽に関しての知識がある程度であるが、音楽のすごい所は知識なんて関係ないところにある。

時に言葉や行動より他人の魂を一斉に震わせるそのパワーを目の当たりにしたことがある人はよくわかるだろう。

たった一人の人間が響かせる歌声にそこにいる人たちが一斉に湧き立つ。始まりのワンフレーズを聞いただけでしびれる歌を聞いた時、いつの間にか気持ちが(はや)る。雑多な騒音の街中で聞こえてきたかすかな歌で気分が上がる。


この世で聞いた音楽で一番だと感じた曲を弾いていた男と目が合う。


「いいですね。」

それだけしか言えなかった。


男は(うなづ)く。

返事を待っていたら、男はまた弾きだした。どうやら口下手なタイプらしい。




ちょっと我慢大会(がまんたいかい)みたいになってきた。

赤茶色の長髪を後ろに流して、丸眼鏡をかけた彼の額には汗がにじんできている。

私はその前に座り込んで通算4週目に入った同じ曲を清聴(せいちょう)している。

もしかして「いいですね」ってこの世では「アンコール」と同意(どうい)何だろうか?それにしては回数が多いが。

それともシャイすぎて女の子と話すのが苦手とかだろうか?ちょっとどうしたらいいか分からない。分からないからと黙っていると5週目も行きそうなので曲の終わりに切り出してみるか。

ポーン♪と最後の音が鳴る。


「私はラルザと申します。」

いつものにっこり笑顔で、場所の雰囲気からちょっと上品な感じで挨拶してみる。貴族ならこれで返してくれるはず。


男は頷いた。そしてギターに視線を落とす。おいまてこらw。

「お名前を教えていただけませんか?」


男はこちらを見て「フッ」とか言いながら髪をかき上げる。おやおや?

(それがし)はギルダム。ギルと呼んでくれたまえ、ラルザ(じょう)?」


急に濃い~のが来たな。え?何?口下手とかシャイなんじゃなくて褒めてくれて嬉しかった感じですかね?それで5週目弾こうとしてたのか?

一人称の(それがし)とかラルザ(じょう)とかもうツッコミ所が多すぎるな。

こいつ面白いな。


「ギル様、先ほどの曲とても素敵でしたわ。それほどの腕前になるには並大抵の努力では到達できませんわ。きっとギル様の努力と才能が素晴らしいのですね!」

気分は縦ロールよいしょ令嬢だ。素晴らしいのは本当だし、きっと並大抵の努力では到達しない完成度だと思うのは本当なので、無理やりでも嘘でもない。

つまり普通にほめてみる。きっとその方が面白い。


「ふっ、ふふふ。そうか、ラルザ嬢にはこの良さが分かるのだな!よし、明日からもここへ来て私の旋律(せんりつ)を聞きに来るといい!」

ほうほう、どうやら視聴者に飢えているようですな?


「ありがとうございます!ギル様!では、今度お友達もお連れしてご清聴させていただこうと思います!」


「え…、いや、君だけで、君だけの為に(かな)でたいのだ!ぜひ君だけで来たまえ。」


あれ?ちょっと外したか?なんでキョドるんだ?

どうやらギルさんは一人に聞いてほしいタイプらしい。音楽やってる人って、より多くの人に聞いてもらいたい(よく)の人しか居ないと思っていたのだが、世界は広いということか。この世界だからか?

まだまだ常識(じょうしき)感性(かんせい)(うと)い所がある、前世で30何年、この世でまだ1年だ、ギルさんの反応はこの世界では珍しいものでも無いのかもしれない。


では、次も一人で来るとして、せっかくこの世で初めてであったバンドマンだ、もう少し話してみよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ