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14.雨の感じ方とラルザ節

入学式は雨だった。壁外から通勤する為にはスケボー(?)が一番効率がいい。戦場で使っていたポンチョを鎧&プロテクターの上に羽織って民家の上を飛ぶ。吸い込む空気に雨の香り、ポンチョに当たる雨音が気持ちいい。

校庭?の様な所へ降りて減速していると、見知った顔を見つけたのでそちらへ向かう。久しぶりだけど覚えてくれているかな?




せっかくの入学式が雨となってしまい、跳ねる水で湿る足元が不快だ。

戦場から帰ってから今日まで長かった様な短かった様な変な時間を過ごした。帰ってきているのに心は戦場にいる様な…何もする気が起きないうつろな日々だった。

目的が無くなって(ほう)けているのでは?と考え、今日からの学園は少し楽しみにしていたのだが、この雨は私の気分を落としてくる。

湿(しめ)った足で歩いていると戦場を思い出す。私の隊は雨の日に強襲(きょうしゅう)を受けて半壊した。土と雨の匂いに生温かい血と内臓の匂いが思い返される。

風が岩室を通り抜ける音が聞こえた。

音の方を見ると軍支給のポンチョに隠し切れない派手な純白の衣装。濡れる事が楽しいと言わんばかりにびちょびちょになった顔にはいつも以上に綺麗な笑顔。そのお顔が私を見つけて軍馬の様なスピードで(せま)ってくる。


「シュリ―!おはよー!元気だったー?」

あのいつもの笑顔、巻き上がる水しぶきがかかるが、不思議と嫌と感じない。

ああ、そうだ、彼女とも雨を駆けたのだ。濡れるのが嫌だった私の横を駆ける彼女は、濡れる事も跳ねる泥も楽しんでいた。

あまりにも楽しそうだったので、私もなにが嫌だったのか忘れてしまったのだ。あれだけ嫌だったのに。


「おはようございます、ラルザ様。今日も楽しそうですね?」


「もちろん!今日も朝から楽しい事ばかりだよ!こいつに乗って走ってると、雨がいい音で鳴るんだよ?帰りに一緒に乗ってみるかい?」

何となく仕組みは見た目でわかる板を降りて見せつけてくる彼女は満面の笑みだ。戦場でもたまに見せるアホの子モードになっていたが、それがたまらなく頼もしく、私の居場所が変わっていない事がうれしかった。


「またの機会にお願いいたしますわ。それより、そんなに濡れていては式で白い目で見られますわ、はやくお着換えを…、そういえばラルザ様?お手伝いの方は?」


「ん?ああ、使用人さんは今回無し!私は独り立ちしたんだよ!」

いろいろツッコミたいのだが…、大丈夫なんだろうか?自分の身長より大きい板を(かつ)ぎながら隣を歩く彼女を見てちょっと見た目的にも心配だが、とりあえず入学式だ。


「えっと…ラルザ様、とりあえず服へ着替えましょう。保健室なら事情を話せば貸していただけますので、とりあえずそちらへ。」


その言葉にラルザ様は小首をかしげて言う。

「着替え持ってないよ?ちょっと端っこ濡れてるけど、(しぼ)ったらそのうち乾くよ!大丈夫!」


ちょっと待ってほしい、彼女が今着ているのは軍の雨具で、その下に来ているのは戦場で着ていたあの派手な衣装の様な「鎧」だ。(ひじ)(ひざ)が補強されていてより鎧っぽくなっている。なんで戦場より鎧っぽくなっているの?

「ラルザ様?学校は制服でないと…、ましてや今日は入学式ですので目を付けられる恐れがありますわ。式に間に合わないかもしれませんが、私の代えの制服を…」


ラルザ様が(さえぎ)って言う。

「大丈夫よ!シェリー!ちゃんと学校の許可も、お父様の許可もいただいたわ!私ね、考えたのよ。この身長でしょ?たとえ勲章つけていてもそれが目に入らないと意味も無く(あなど)られて争いを生むのは楽しくないわ。だから鎧を着ておけば、戦場帰りだってわかるでしょう?お父様も学園長も納得してくださったわ!」


どうしよう。彼女の副官をしていたから分かるのだが、これは学園長とお父様が勘違いしているパターンだ。戦場でもしょうもない食い違いが何度かあったのと似たパターンだ。

恐らく学園長もお父様もこの鎧と言う名の「衣装」を見ずに許可を出している。ラルザ様も本気で鎧だと言い張っているので見たことが無い人は無骨な軍使用の物を思い浮かべる。

だが、違うのだ。この衣装は派手で、純白のひらひらしたその服をまとったラルザ様は小さい。もう天使の様な感じになってしまっている。

規律ある制服に並んだ演劇の姫が天使の衣装を着て一緒に並んでいるのだ。もうなんか、(あなど)られるとかじゃなくて、守られる感じになっているしもうこれはこれで良いのかもしれない。

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