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11.ラルザ隊VSモビルスーツ

この命令を考えた人はアホだと思う。発した人もアホだと思うし、高度な政治的判断とか言い出す奴もアホだと思う。

そいつら全員俺達と代わって戦場に来てみれば良い。自分の裁量(さいりょう)が効かず、部下と自分を死地へ送り、吸い込む空気は血の味がして、徐々に増える赤黒い人だった物。

なるべく準備はしたが、俺達ラルザ隊はそもそも土嚢と塹壕での防衛特化しかやってきてないので、攻めなんて素人だ。

出来る限り準備はしてきた。盾の強化、鎧下のグレードアップ、長槍の改良、一部長達の装備改良。

徐々に改良していく予定だった材料を蔵から出して全員手作業での突貫改良だ。

俺自身の強化もしたかったが、見た目が派手になったくらいで大した強化はされていない。筋肉魔術も戦闘しながらなんて使えない。息子もしかり。

隊の強化で少しでも早く攻略し、少しでも多く生き残ってもらいたい。と、思っていたが、いざ攻め込んでの乱戦になるとそんな事を考えていては隊全体が全滅しそうなほど過酷な状況。

相手の兵は他と変わらないのだが、貴族がヤバい。3mの金属製パワードスーツを着て、大剣を振り回している。兵の攻撃なんて効くはずがない。戦車と言うより「ガンダム」に剣で戦う様な物だ。技術差どうなってんねん。

戦略的撤退をしたくても後続には逃亡防止の意味も含めた本部直属の精鋭部隊。軍隊の様なその部隊は、躊躇なく脱走兵を殺すだろう。もちろん貴族とて例外なく。

ここが俺の「死ぬ」場所なのかと感じた時、笑いが込み上げてきた。どうしようも無い時、何をしてもダメなら笑えば良い。落ち込んでふさぎ込んでいても、笑っていても等しく時間は過ぎて、勝手に答えは出るもんだ。

例えその答えが死であっても、それまでに残された時間をどう使うかは俺の自由だ。楽しくないより、楽しい方が良いだろ?





巨人が剣を振るうと10人ほど巻き込まれた。何人かは盾で受けていたので即死ではないだろうが、重症だろう。即死は分かりやすい、体がちぎれているから。

貴族の私がどうしてこんな所で、こんな事をしなくちゃいけないのだろうか?再開できたラルザ様は変わってしまっていた。

以前のラルザ様なら私と一緒に後衛でのんびりさせてくれていただろう。戦争なんて野蛮な事は野蛮な方々がやればよろしいと言っていただろう。

下々(しもじも)へ愛想(あいそう)を振りまくラルザ様のお姿は、ひどく汚く、一民兵と大差ないように見えた。

けど、天幕では前のラルザ様に少し戻ってくれる。私の仕事を誉めてくれて、私の意見を聞いてくれる。甘いおやつまで私の為に用意してくださるそのお姿に、ハッとさせられたものだ。

ラルザ様は魔術を失った、他の民兵と変わらない、だからラルザ様は魔術の変わりに民兵の「壁」を作っているのだ。それは人から見た時生き恥をさらしている様に見えるだろう。意地汚く生にしがみついている様に見えるだろう。

だが、「戦場」を知る者が見れば生きる事は正義だ。それに労力を最大限つぎ込むラルザ様は、つまり「正義」だという事なんだと思う。ラルザ様は私に生き残って欲しいとおられたもの。


全軍突撃。


いつもの戦いが始まるのだと思っていた。だけど今日は吐きそうなほど血の匂いが濃い。

どんどん知った顔がぐちゃぐちゃになっていく。いくら貴族でも、あの巨人の剣は受けれない。

何と撤退するか、かなわなくても後衛に回るべきだと思った。でも、あの巨人の進む方が早く、兵の流れをかき分けて後退する事は出来そうにない。

巨人の4つある眼がこちらを見ている。

「死」が近づいている。

そう感じた時、背筋が凍り、腹から「ストン」と何か「気力」の様な物が落ちて、その場から動けなくなった。



「シェリー!」

派手な衣装を着たラルザ様が近づいて来る。「ヴァルキリー」をイメージして作ったと言ったその鎧?は防具と言うより演劇の衣装の様だった。実際、防具としては大分心もとないだろう。


ラルザ様は馬の上から私の背を叩いた。背中が熱い。

「シェリー!デカ物をやるぞぉ!ブッチャ、アルバ―!巨人はコケたら起き上がるまでボーナスタイムだ!丸太でひっかけてやれ!さあ!みんな!楽しくなってきたよぉ!歩兵なんてほっとけ!GOGOGOGOGO!!!」


やあああああああはあああああぁぁぁぁ!!なんの力も無い貴族、ラルザ様が駆ける。

ラルザ様は笑っていた。大口を開けて、ギザっ歯をむき出して、銀髪を振り乱して汗をまき散らし、ドロドロに汚れた純白の衣装、何の変哲(へんてつ)もない剣を巨人に向けて、私達の方に向けて笑っている。とても、とても美しく見えた。


周りの兵の雰囲気が変わった。ラルザ様を見ている、あんなに絶望的な表情をしていたのに、みんなどこか笑っている。殺し合いをしているのに、今もすぐ先で仲間が死んでいるのに。力が湧き出てくるように、手を握りしめ、剣を前に突き出して、雄叫びを上げる。それは爆発のような音で、学園で聴いた爆裂魔術より激しい音だったが、不思議と心地よかった。気が付いてなかったが、私も叫んでいた。


丸太を持ったブッチャ隊とアルバ隊の生き残り達、隊長達がラルザ様へ続く。

雄叫びにたじろいだ巨人に突っ込むラルザ隊に巨人の一太刀が襲う。密集し、先頭を駆けるラルザ様を完全にとらえたその一太刀は、間に入った盾と肉壁で威力を落とし、それをラルザ様が(はじ)いた。

巨人に表情は無いが、唖然(あぜん)としている様に見えた。

巨人の顔めがけて馬上から飛んだラルザ様が顔に取りつくのと。巨人の足腰に、体格の良いブッチャとアルバ―の隊員達5、6人で持った丸太が次々とぶつけられる。

踏ん張っていた巨人が倒れる。どうなったかしばらく見えなかったが、ひときわ目立つ、汚れているはずなのに輝いて見えるその姿が剣を(かか)げて勝鬨(かちどき)を上げた。

私達の戦場に仲間の雄叫びが響き渡り、敵は後退していった。

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