10.会議
本陣の天幕は祭りの様に、カラフルで数がある。
ラルザ隊は地点防衛に特化していて、近場の戦線とも連携がとれているので、あまり呼ばれる事が無いが、雨の日は来るように言われている。今日は雨だ。
どろどろの地面がさらにぬかるみ、行軍だけで兵が弱る雨は、戦場の休息日だ。
ただし油断は出来ない。
またに裏をかいて攻めてくる敵もいるのだ。よって、雨の中配置につかせている。屋根付きだが。
本陣での軍会議は毎回眠たくなる。
だいたいが俺たち末端の話では無く、大局の話で、それは俺にとってどうでも良いことだ。
俺が聞いていなくても、後でシェリーに聞けば教えてくれるので、尚眠い。前世の進まない会議を聞いてる気分だ。
この戦争は戦線の後ろにあるタイネン砦を狙う敵を防ぎ、その間に外交によって戦争を終わらせるのが王国の戦略だ。
その外交を少しでも有利にしたい偉い人たちは攻め込もうと必死だが、あまり上手くいってない様だ。
逆に守りが少なくなり、危うい場面も何度かあったらしい。攻め行った貴族が、その被害を受けた貴族にネチネチ嫌みを言っていた。聞きたく無い俺は意識があちこちにいく。
隣のシェリーが臭う。多分俺も臭う。
風呂に入るどころ、体をぬぐう事もままならない。
良い年頃の女性が近くに居るので、息子の修行の時大変だが、彼女や俺の体臭を嗅げばなえるのは嬉しいのか悲しいのか良くわからない感情になる。
保存食の塩ビスケットを噛りながら、支給されたコーヒーを飲む。旨い(テーレッテレー)。
塩ビスケットはメイとレイの双子メイドが主体で作ってくれている、砂糖の代わりに塩を入れたビスケットだ。
ただ入れ代えただけだと辛口で食べれないのを改良したらしい。酒のあてに良さそうな味だ。実際晩酌で痛みそうなビスケットは良く出る。
もう一度シェリーをチラ見する。
長い茶髪を後ろでまとめて、一般兵と違うオリジナルの甲冑を着ている。胸当てが飛び出しているが、中身も詰まっている事を知っている。俺は全然無いが、戦争するなら絶対に邪魔だったからむしろ良かったと思う。シェリーは大変そうだから、気をつけてなきゃな。
シェリーは記憶喪失前のラルザとなかが良かった様で、変わってしまった私に戸惑いを見せていたが、最近は慣れてくれた様だ。隊長と副官と言う立場も相まってコミュニケーションは多くとっているのが効いていると思うが、どこか業務的なので戦後上手く付き合えるか心配だが。
戦後に意識が向けれるくらいに戦線は硬直している。
父と手紙のやり取りは続いており、直接的には伝えては来なかったが、もうすぐ敵国との交渉が終わり、戦争も終わるだろうととの事だ。
私は、戦争で敵貴族に陵辱りょうじょくされた事にしてある。
これが意外と通って、父は後宮入りの話は無くなったと伝えて来た。
すぐ戦線で死ぬと考えられていた俺が今も生きて、奮戦している事実は、俺に貴族学校復帰の道を開いてくれた。
ゆくゆくは貴族の旦那との結婚を望まれている、第二婦人までに入る事が父の目標だ。
俺は男としてのカミングアウトをいつするか考えておくと共に、女としての選択肢も有りと考えてる。
ラルザはかわいい。そしてチヤホヤされるのは気分が良いのだ。チョロい女にならない様、気をつけてなければ割と簡単に俺は落とせると自己判断している。
前世でそんなに褒めてもらった記憶が無いのが原因だとおもう。
アホな事を考えていると会議が終わっていた。
本陣は一部バザーの様な区画が有り、そこでは商人が嗜好品しこうひんを暴利で売っている。
売りに来ている商人達は、国から権利を買って売りに来ているので、この暴利のいちぶは国が吸い上げる仕組みなんだろう。
酒やタバコ、甘味、コーヒーを土産に買って隊に配る。
軍の給金の半分がこれで消えるが、人心掌握じんしんしょうあくをミスって、逃亡兵や裏切りからの死亡なんて絶対に嫌なのでけちらない。
さて帰るかと馬に股がりながら、そういえば今日の会議どうだった?と副官に聞く。
「ラルザ隊は明朝に突撃だそうです。」マジで?うちだけ?
「いえ、全体での戦線押上が狙いです。もうすぐ終戦との声があるようで少しでも武功が欲しいようですね」




