ドラゴンと『アイツ』
よく晴れた広い草原で、真っ白なドラゴンが目を覚ましました。
ドラゴンは大きな欠伸を一つして、自分の周りを見渡します。
「アイツがいない」
ドラゴンは地面を掘ったり、空を飛んだりしてみましたが、やっぱりアイツは見つかりません。
「探しに行こう」
ドラゴンは草原を歩き始めました。
ちょっと歩くと、ドラゴンは一匹のスライムを見つけました。
「スライム君、アイツがどこにいるか知らないかい?」
ドラゴンはスライムに話しかけます。
ですが、スライムは喋ることができません。
しかたがないのでドラゴンは先に進むことにしました。
少し歩くと、ドラゴンは一匹のゴブリンを見つけました。
「ゴブリン君、アイツがどこにいるか知らないかい?」
ドラゴンはゴブリンに話しかけます。
「ドラゴンサマ、アイツとは一体、誰のことでしょうか?」
「アイツは綺麗な剣を持ってたよ」
ゴブリンは剣を持った仲間たちを集めました。
しかし、そこにはアイツはいませんでした。
ドラゴンはゴブリンにお礼を言うと、また歩き始めました。
しばらく歩くと、ドラゴンは人間の国に着きました。
ドラゴンはお城に行くと人間の国の王サマに会いに行きました。
「人間の国の王サマ、アイツがどこにいるか知らないかい?」
ドラゴンは人間の国の王サマに話しかけます。
「ドラゴンさん、アイツとは一体、誰のことでしょうか?」
「アイツは綺麗な剣を持っていたよ。それに立派な鎧を着ていたね」
王サマは剣を持って鎧を着ている騎士たちを集めました。
しかし、ここにもアイツはいません。
ドラゴンは王サマにお礼を言うと、また歩き始めました。
かなり歩くと、ドラゴンは魔族の国に着きました。
ドラゴンはお城に行くと魔族の王サマの魔王サマに会いに行きました。
「魔王サマ、アイツがどこにいるか知らないかい?」
ドラゴンは魔王サマに話しかけます。
「ドラゴン殿、アイツとは一体、誰のことでしょうか?」
「アイツは綺麗な剣を持っていたよ。それに立派な鎧を着ていたね。あと、丈夫なマントを羽織っていたなあ」
魔王サマは剣を持って鎧を着ていてマントを羽織っている魔族を集めました。
しかし、ここにもアイツはいません。
がっかりするドラゴンに魔王サマが話しかけます。
「もしかすると、ドラゴン殿の探しているアイツはあそこにいるかもしれません」
魔王サマが教えてくれたのは、ドラゴンが寝ていた草原に立っている、一本の木でした。
ドラゴンは魔王サマにお礼を言うと、大空に飛び立ちました。
ちょっと飛ぶと、ドラゴンは一本の木の前にやって来ました。
その木の下には綺麗な剣と立派な鎧、丈夫なマント、そして、一つの石が置いてありました。
石には小さな文字で『勇者』という文字が書かれていました。
「やっと見つけたよ」
ドラゴンは石の前に座ると眠り始めました。
「僕たちはずっと一緒だよ」
――