仲間の決意⑩~佐々木さんの怒り~
ご興味を持っていただきありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
佐々木さんの声があまりにも大きいので、俺はスピーカーボタンをタップしてスマホを膝へ置く。
佐々木さんからいきなり怒鳴られたので、何事かと思い冷静に聞いてみた。
「佐々木さん、申し訳ないですが、俺に身に覚えがないんですけど……」
俺の話を聞いた佐々木さんが、はっきりと大きな声で再度叫んできた。
「今日の早朝、伊豆高原フィールドに行ったな!!??」
「行きました」
佐々木さんの声を聞いた、花蓮さんと真央さんが驚いて俺を信じられないような目で見てくる。
俺はその視線を気にせず、佐々木さんとの会話に集中した。
佐々木さんは電話越しに俺へ本当に怒っているように感じる。
「それならわかるだろう!?」
「それが、俺は盾の練習をしたくらいなので……」
「これが練習だって!!??」
佐々木さんがこれと言っているので、俺は佐々木さんがどこにいるのか疑問を持つ。
「佐々木さんは、今どこにいるんですか?」
「伊豆高原フィールドにいる! 目の前には倒されたマンドラゴラが草原一面に広がっているんだ!」
「一面って……そんなに倒した覚えはないですけど……」
俺は身に覚えがなかったため、佐々木さんへ明確な答えを言うことができなかった。
佐々木さんは少し声を小さくして、報告するように話し始める。
「伊豆高原フィールドの管理をしている者の話では、ここには最低でもマンドラゴラが300体、ウォーウルフが20匹いるそうだ」
数を聞いて、真央さんと花蓮さんの顔がさらに険しくなってしまう。
俺は朝の短い時間でそんなに狩っていたのかと自分で驚いてしまった。
「それはすごいですね」
「やったのはおまえだろう! 俺の手元にはお前が書いた申込書があるんだよ!」
「まずいですか?」
「まずいから、報告を聞いてすぐに俺がここへ来たんだ!」
「ありがとうございます」
佐々木さんは電話越しでもわかるくらいの大きなため息をついて、話を続けた。
「今、県で緊急の回収チームが発足されようとしている」
「そんなことに……」
「昨日の今日だから、かばいきれなくなるところだった」
「やっぱり、隠してくれていたんですね」
「あたりまえだ」
佐々木さんが俺のことを必死で隠してくれようとしてくれていることを知り、俺は感謝をするしかない。
佐々木さんへ謝罪をして、俺はこれからどうすればいいのか聞くことにする。
「申し訳ないです。俺はどうすればいいですか?」
「とりあえず、この申込書は俺が処分するけどいいな?」
「俺はモンスターが倒せればよかったので、佐々木さんのやりやすいようにお願いします」
「きみは……」
盾を使ってモンスターを倒せればよかったので、放置されているマンドラゴラには興味がないので、佐々木さんへ任せるように伝える。
佐々木さんがあきれたように黙ってしまう。
俺を見つめる2人も、俺の正気を疑うような目で見てきていた。
俺は目の前にいる2人を見て、佐々木さんへお願いしたいことがあるのを思い出した。
「それよりも、佐々木さんにお願いがあるんですけど」
「……聞くだけ聞こう」
佐々木さんの言葉を聞いて、俺には佐々木さんが頭を抱えている様子が想像できてしまう。
しかし、俺は自分のやりたいことを唯一なんとかできそうな佐々木さんへ相談をする。
「GWに泊まりで合宿をしたいんですけど、目立たないようにするためのなにか良い案ないですか?」
「これ以上何かしようと言うのか……」
「真央さんと友達を強くしてあげたいのでお願いします」
おそらく、俺がまた勝手にやると今回のように佐々木さんをまた困らせてしまうと思い、相談をするという考えが浮かんだ。
俺は真央さんや花蓮さんにも合宿をしたいことを相談していないので、目の前にいる2人は困惑しているようだった。
佐々木さんは合宿かとつぶやいて、考え始めてくれた。
「その友達というのは誰だ?」
俺は花蓮さんを見て、名前を言うのか迷う。
花蓮さんは俺の視線に気付いて、言ってもいいと頷くように合図をくれた。
「谷屋花蓮さんという、谷屋絵蓮さんの妹です」
「歳は16歳以下だったか?」
「はい」
「太田さんは知っているのか?」
「まだ何も言っていないので、知らないと思います」
「わかった。また後で連絡する」
「よろしくお願いします」
俺が佐々木さんとの通話を終了させると、2人から同時に声をかけられる。
「説明して」
「説明しろ」
2人には佐々木さんとの会話を全部聞かれているので、どこから説明すればいいのか迷ってしまう。
なので、1人ずつ質問に答えることにした。
「ちなみに、花蓮さんの質問はなんですか?」
「あなたたちが隠していることと、朝のこと、合宿のことの3つよ」
花蓮さんの質問を聞いて、真央さんははっとして頭を抱えてしまう。
俺は真央さんへ言ってもいいかと目で合図をしようとしたら、花蓮さんが声を出す。
「やっぱり隠し事があるのね!」
俺は真央さんを見て、ここまで疑念を持たれたままだと今後に影響すると思い、花蓮さんに今までのことを伝えることを相談する。
「真央さん、花蓮さんには伝えます」
「ああ、このままよりはその方がいいな」
真央さんの言葉を聞いて、花蓮さんが2人共通の隠し事なのとつぶやく。
俺は花蓮さんへ最初に一言注意をしてから、話を聞いてもらう。
「花蓮さん、今から言う事に一切の嘘はありません」
「話してみて、それから判断するから」
「わかりました」
俺は真央さんに補足してもらいながら、昨日のギルドで行われた報告内容が自分たちのことであることを話す。
話を聞き終えた花蓮さんは俺と真央さんを見て、なぜか少し笑っているように見えた。
「花蓮さん、どうですか?」
「いきなり言われて信じられないけど、あなたならやりそうね」
「そうですか?」
「ええ、そうよ」
花蓮さんは、でもとつけ加えて言葉を続けた。
「あなたに付いていけばお姉ちゃんよりも強くなれる確信を持ったわ」
俺のことを見てくる花蓮さんは希望に満ち溢れた目を向けてきていた。
そんな花蓮さんの様子を真央さんは羨ましそうに見ている。
花蓮さんは真央さんの手を握って、その目を真央さんへ向けた。
「真央さん、必ず強くなりましょう!」
「え!? ああ、そうだね……」
真央さんは戸惑いながら花蓮さんの言葉にうなずいていた。
花蓮さんの疑問は解決したようなので、今度は真央さんの聞きたいことを質問する。
「真央さんの質問はなんでしたか?」
真央さんは忘れていたように俺の言葉で気付いて、慌てて口を開く。
「いや……なんでもない、出発しようか」
少し考えて真央さんは言うのを止めてしまったようだった。
俺はそれ以上聞くことなく、真央さんへ車を運転してもらう。
区役所までの道中に、花蓮さんからバフォメットを倒した時のことなどを聞かれていた。
区役所に着き、2人にはスライムの核の換金へ行ってもらう。
真央さんがこんなに持っていけないと、車の荷台を見ながら言っている。
「区役所の人に言えば、取りに来てもらえますよ」
「そうなんだ……」
「それじゃあ、俺は帰ります」
「お前、いらないのかよ」
「今日のメインは2人なので、俺は辞退しますよ」
2人が俺へ待つように言っていたが、手を振って歩き始める。
俺はそんなことよりも、大切なことを忘れていた。
(自転車を新しくしないと……)
俺は真央さんと会った喫茶店に置いていた壊れかけの自転車を引きながら、自転車屋さんへ持っていく。
店員さんからどんなものが欲しいのか聞かれたので、頑丈でよく走るやつと注文したら、マウンテンバイクを出してきた。
「じゃあ、これで」
俺がそう言うと、店員さんが会計を行ってくれて、5万しないくらいだったのですぐに支払った。
古いものの処分は無料でやってくれるようなので、喜んで頼んでしまう。
新しい自転車に乗って帰宅している時に、佐々木さんから電話がかかってきた。
俺は自転車を止めて、電話に出る。
「佐々木さんですか?」
「そうだ。合宿の件で電話をした」
佐々木さんは合宿のことを考えてくれていたようなので、喜んで話を聞く。
「GWに合宿を怪しまれずに行うとしたら、月末の大会で優勝してほしい」
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