地球攻略編④~希望の光へ~
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物語が佳境に入ってまいりました。
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俺の言葉の意味を噛みしめるように花蓮さんが黙るので、次に真央さんが口を開いた。
「どうして私たちだけなんだ? 一也は攻略へ行かないのか?」
「俺は世界大会で人々に絶望を与えた象徴なので、みなさんがモンスターを倒すという結果を残した方が印象が良いらしいです。それに……」
「それに?」
「いえ、それだけです」
余計なことを口走りそうになり、慌てて誤魔化そうとしたものの、真央さんが怪訝そうな顔で俺のことを見ていた。
(【この世界の住人である皆さんにお願いしたい】、なんて言ったら話がこじれる)
おそらく落ち着いてこのように話の場を設けるのは【最後】になるので、少しでも多く伝えたいという気持ちはある。
ただ、今後【俺がいなくなった場合】のため、みんなには準備をしてもらいたい。
この場に明がいなくてよかったと胸をなで下ろしつつ、平常心を装って話を続ける。
「天音、絶対に失くすなって言っていたノートを今出せる?」
「出せますが……見せていいんですか? 誰の目にも触れるなってことも言っていましたよね?」
「いいんだ。頼む」
「……わかりました」
俺とレべ天だけがわかる会話を行なっていたら、全員何かを聞きたそうにしていた。
レべ天が光と共に取り出したノートを受け取って、みんなより先に口を開く。
「このノートは、明に頼んで世界中に存在するダンジョンの在り処を書いてもらいました。中には人類が未発見のものもあります」
俺の持っているノートには、明へ俺の知る限りのダンジョン名を伝え、陰陽道により導き出された結果を全部書いてある。
ただ、スカイロードや海底回廊など場所が移動するダンジョンは直接俺が探して攻略したため、残りはこのノートを見るだけですべての場所がわかる。
それを全員へ見えるようにテーブルの中心に置き、ギルド長と目を合わせた。
「ギルド長、たしかダンジョンについてお詳しかったですよね? 確認していただけますか?」
「あ、ああ……わかった……」
ギルド長が手を震わせながらノートを取り、恐る恐る中身を読み始める。
ノートには文字だけではなく、パソコンで印刷した地図を貼り付けて場所を明記するなど、誰が見てもわかるように編集した。
ページをめくるたびにギルド長の眉間に寄せたしわが深くなっていく。
手に持っていたノートを閉じたギルド長は落ち着くように深呼吸をしてからこちらを向いた。
「一也……どうして未発見ダンジョンのモンスター情報まで書かれているんだ?」
「それが明の陰陽師としての力です。それ一冊が世界中にあるダンジョンの攻略本だと思ってください」
モンスターの詳細はダンジョンへ行って慌てることがないように俺が加筆しておいた。
このノートをみんなへ託し、俺はこの世界で最後の狩りへ行くつもりだ。
(不可侵領域で確認した【あれ】を壊せば世界が救われるはずだ……俺はそのためにここにいる)
【あれ】さえなんとかできれば、残りのダンジョンはここにいる人たちだけで攻略できるように強くなってもらった。
最後に、絵蓮さんへ頭を下げて俺の役目を譲る。
「絵蓮さん、PTリーダーになり、各ダンジョンの攻略を行なってください」
「……嫌よ。私は一也くんのPTに所属しているただのメンバーでいたいわ……だから、代理なら引き受けるから、必ず戻ってきて」
一度も帰らないと口にしていないにもかかわらず、絵蓮さんは俺が戻らないと察しているようだ。
俺もどうなるか分からないので、笑顔を作りながらうなずいて返事をする。
「わかりました。約束します」
「必ずよ……様を待っています」
なぜか絵蓮さんの口から拳王と聞こえたような気がしたが、あまりに小さかったので俺の聞き間違いだと思う。
(この世界にきて、レべ天以外からそんな風に呼ばれたことはないからな)
絵蓮さんが涙目になりながら納得をしてくれたので、ほっと一息ついた。
伝えたいことがすべて終わり、最後にここにいる全員の顔を心に刻む。
(世界中の人のためではなく、俺はこの人たちの未来のために戦う)
そう心に固く誓ってからレべ天へ目を向ける。
俺を見ていたレべ天は目を閉じ、祈るように手を合わせた。
『一也さんの覚悟は伝わりました。私もみなさんを信じます』
心の中へ直接語りかけてくるレべ天へ笑いかけ、最終決戦に向けてここを離れることにする。
「俺の話は以上です。ダンジョン、よろしくお願いします」
異口同音にみんなが任せろと見送ってくれており、妙に素直だなと思いつつもレべ天と一緒にテレポートで家に戻った。
俺の感じている疑問を移動が終わったからレべ天にしてみたところ、同じようにおかしいと感じていたらしい。
「花蓮さんが血の滲むくらい右手をにぎっていましたけど、左手を振りながら一也さんのことを笑顔で見ていたので、何も聞けなかったです」
「……んん? 他の人の様子はわかる?」
何やら俺の知らないところで何かが行われていそうな雰囲気を感じ、周りが見えていたレべ天に最後の様子を思い出してもらう。
すると、目を閉じて考えていたレべ天がああっと声を上げて、苦笑いをした。
「どうしたんだよ」
「最初は私も怒っていたので何も言いませんでしたけど……一也さんが入室してから、夏美さんはずっと涙を堪えるように両手で太ももを思いっきり捻り続けていましたよ」
「伝える手段あっただろう……言ってくれよ……」
あそこに集まっていたみんなは、俺が入室する前に何かの情報を共有し、今回の話をほとんど黙って聞いてくれていたようだ。
(それがどんな内容なのかは分からないけど、俺は俺の役割を果たす)
必要の無くなったスマホを握り壊し、これから1人で戦いに赴く。
黒騎士の装備に身を包み、不可侵領域へテレポートを行なった。
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更新は1月13日を予定しています。
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