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世界大会編⑨〜壮行会〜

ご興味を持っていただきありがとうございます。

お楽しみいただければ幸いです。


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 俺たち3人は体育館にいた体育の先生に誘導され、壇上の袖にある待機室へ案内をされた。


「ここでしばらく待っていてくれ」


 返事をすると体育の先生が俺を見つめてきて、一言頑張れよと声をかけてくる。

 その声に頷いてお礼を伝えたら体育の先生が外へ向かっていった。


 しばらく待っていたら体育館の中へ生徒が入ってくるように声が聞こえ始めたので、壮行会の準備が始まっているようだ。


「壮行会って毎回こんな感じなんですか?」


 夏美ちゃんと話をしていた花蓮さんへ質問をしたところ、うーんと思い出すように首を傾げる。


「普通は全校生徒の前で意気込みを言うくらいだけど、知事とかの来賓を呼ぶことはなかったわ」


 生徒会長である花蓮さんに聞いてそうなのだから、今回の壮行会は特別なのだろう。

 逃げるチャンスをうかがっているものの、2人は雑談をしつつも俺の動向を気にかけてきている。


(俺が少しでも動けば2人の腰が浮く……警戒されてるなぁ……)


 笑顔で談笑する2人が油断せずに俺のことへ意識を向けているため、逃げる気が失せた。

 時間が過ぎるのを待てばよいだけのイベントなので、それくらい我慢しようと腹をくくり、始まるのを待つ。


「先頭は黄色い線に合わせなさい! 揃ったら担任の先生へ報告するように!」


 体育館のフロアから体育の先生がマイクで生徒を整列させているような声が聞こえてきた。

 それを聞いた花蓮さんが立ち上がって、制服を整える。


「そろそろ始まるはずよ。2人も準備した方がいいわ」


 夏美ちゃんが花蓮さんに言われて、持っていた手鏡を見ながら髪を気にし始めた。

 2人はこんなことで緊張しているのか、そわそわと忙しなく動く。


 その様子を座ったまま眺めていたら、花蓮さんが俺を睨んできた。


「あんた余裕ね。これから全校生徒の前に立つのよ?」

「全世界に動画を拡散されている花蓮さんでも緊張するんですか?」

「状況が全く違うわ。あの時は動画を撮られているなんて知らなかったから気にならなかったもん」


 花蓮さんが頬を膨らませて抗議してくる姿が可愛く、小動物のように見える。


「なによ? 馬鹿にしているの?」


 困った顔を見るのが珍しいので軽く笑ってしまったため、花蓮さんに誤解を与えてしまったようだ。


「すみません、動画と同一人物だと思えなくて」

「どういう意味よ?」

「そのままですよ。戦っている時のように、もっと堂々とすればいいんじゃないですか?」

「それができないから困っているんだけど……」


 苦笑いをする花蓮さんの横で、夏美ちゃんが目を閉じており、精神統一をするように深く呼吸をしている。

 夏美ちゃんが狩りに向かう前に自分を落ち着けるためのルーティーンをしていたため、邪魔をせずに見守ることにした。


「これから壮行会を行います」


 壮行会を始める合図が聞こえ、体育館では生徒会の生徒が司会をしているようだった。

 花蓮さんは誰が司会をしているのか知っているようで、名前を呟いている。


 そんな時、待機室の扉が開けられ、田中先生が現れた。


「もうすぐ紹介されるから壇上へ上がるわよ? 準備はできている?」


 田中先生の言葉に花蓮さんと夏美ちゃんは小さくうなずき、俺のことを見てきた。

 そして、俺のことを見つめたまま動こうとしないので、何か変なのかと思ってしまう。


「どうかしました?」


 真顔で俺のことを見ている夏美ちゃんの目を見ながら、何があったのか聞いてみるとドアに指を向ける。


「一也くん、普通、リーダーから上がると思うから先に行ってくれる?」


 花蓮さんと田中先生も俺へ先に行くようにうながしてきたため、立ち上がって待機室から出ることにした。


「わかりました」


 待機室を出ると、花蓮さんと夏美ちゃんが俺の後に続き、生徒会の生徒に壇上の袖で待っているように言われる。

 先に出ないように手で遮られながら、壇上にいた司会の男子生徒と目が合うと顔を軽く強張らせる。


(何かしたかな?)


 特に睨んだりしていないので不思議に思っていると、後ろから脇腹を突かれた。


「あの子、あなたに杖で殴られて救急車に運ばれた子よ」


 花蓮さんが小声で司会をしている生徒の情報を耳打ちしてくれた。

 確かにそう言われれば見たことがあるような人で、後遺症がなさそうなので安心する。


「あそこに座ればいいんですかね?」


 壇上に斜めに並べられている椅子を見ながら花蓮さんに聞くと、横にいた生徒会の女子生徒が代わりにそうですと答えてくれた。


「それでは、世界大会へ出場する……えっと……【谷屋花蓮と愉快な仲間たち】の入場です! 拍手でお出迎え下さい!」


 司会の声を聞き、俺の横にいた生徒がどうぞと言いながら腕を壇上に向かって伸ばす。

 拍手が体育館中に響き渡り、俺たちが入場するのを待ってくれているのはわかったが、PT名を聞いて笑いが込み上げてきていた。


「俺も愉快なんですかね?」

「馬鹿言っていないでさっさと行きなさいよ」


 花蓮さんが不機嫌そうに俺の背中を押してきたので、壇上へ出てしまった。

 すると、より一層拍手が大きくなり、体育館のフロアにいる生徒全員が俺に注目している。


(あそこに座ればいいんだっけ)


 進み始めると後ろの2人も続いて壇上に上がり、一番奥の椅子へ座る。

 俺たちが座ると拍手が止み、司会の生徒が持っていた紙を近づけた。


「今回、世界大会へ参加する3人のために、総理がいらっしゃいました。激励の挨拶をいただきたいと思います」


 司会の人が総理の紹介すると、何度か見たことのあるおじいさんが来賓の席から壇上に上がり、袖にいる生徒からマイクを渡される。

 中央に立ち、俺たちの方を向くと頭を下げた。


「皆さん、世界大会出場おめでとうございます!」


 その言葉から始まった挨拶は5分続き、俺の頭にほとんど残ることはない。

 興奮した様子で世界大会での活躍を期待していると言っている総理の話が止まることはなく、なんでこんなに心に響かないんだろうと不思議に思いながら挨拶を聞いている。


(俺の感受性の問題じゃないな。生徒の中にもつまらなそうにしている人もいるし……)


 フロアにいる生徒へ目を向けたら、その後方に佐々木さんが立っているのが見えた。

 佐々木さんは俺の視線に気が付いたのか、横に顔を振り、総理の方を見ろと合図をしてくる。


 それからもう5分、日本の魅力にまで及んだ知事の話が終わり、ようやく一息ついた。

 しかし、これで終わりだと思っていたら、次に防衛大臣が壇上に上がってきて、笑顔で話を始めた。

ご覧いただきありがとうございました。

更新は12月8日を予定しています。


もしよければ、感想、ブクマ、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。


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「俺も愉快なんですかね?」 つけた本人が何言ってる・・・
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