世界大会編⑦~世界大会エントリー~
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父親や母親がソファーに座って見ていたので、俺は別の椅子に座った。
「一也、お前も申込みをしたんだよな?」
「今日佐々木さんがしてくれたよ」
「今日!? 締め切りギリギリか……企業の調整がうまくいかなかったのか?」
「いや、そんなことないと思う」
俺に相談が来たのが今日なので、締め切りギリギリまで佐々木さんが選んでくれていたらしい。
これから国名やチームメンバーなどの紹介が行われるため、母親が急いで録画の設定をしていた。
「一也はいつ映るかしら? わからない?」
「こんな番組あるのを今知ったよ」
今見ている番組は2時間の特番が生放送で組まれており、各国のU-16や個人戦の様子や、リーダーのコメントなどの映像が流されるようだ。
世界中を駆け回っていたので、こんな風にカメラを向けられたことなどない。
「俺、撮影されたことないけど映るのかな……」
「撮影が来ていないのか? 世界大会だぞ!?」
「うーん……身に覚えはないよ」
撮影されたことなどないと伝えたら、父親がありえない言いながらテレビに視線を戻す。
各国数分の紹介をしており、番組が始まって1時間経っても日本代表が映ることはなかった。
世界大会に精通しているという男性コメンテーターが映像の流れた後に補足説明をしており、アメリカ代表を優勝候補筆頭として紹介していた。
主な理由としては、兵器生産世界一の企業をスポンサーにしたことで、最先端の装備が支給されるということらしい。
番組が時速何キロで走る戦車など兵器の説明に入ったため、つまらなくなり部屋へ戻ろうかと思い始めてきた。
「一也、お前のPTはどの企業がスポンサーになったんだ?」
世界中の企業が作り出した最先端の兵器が鎬を削る戦いをするのが世界大会と言い切るコメンテーターの言葉を聞きながら、俺は昼間に書いた杉山さんのお店の名前を思い出す。
「杉山武具店だよ。いつも行っているお店」
「……は? 武具店ってお前……こんなふうに世界有数の企業が名を連ねているのに……」
そんな中、番組が終わる30分前になり、ようやく日本代表の紹介を行う時間になったようだった。
テレビ一面に日本代表【谷屋花蓮とゆかいな仲間たち】という文字が装飾されて表示された。
「あ……PT名変えるのを忘れてた」
花蓮さんからリーダーじゃなければ変えられないからと頼まれていたのに、いつかこれ以上にしっくりくる名前を閃くと思っていたのだが、そのまま世界大会を迎えてしまった。
母親は名前を気にすることなく、録画をしているのに、スマホもテレビに向けて撮影を始める。
俺や父親が何かを話そうとすると、うるさくしないでという風にキッっと睨まれるので、黙ってテレビの内容を見守った。
「日本代表についてですがが……佐藤一也選手を筆頭に、私には未知数の選手ばかりが集まっているため、コメントすることが難しいです」
「確かに……個人でRank5の冒険者は世界で唯一佐藤選手だけですからね」
司会の男性芸能人がコメンテーターの人の言葉を汲み取り、俺の説明を始める。
それと同時に母親の顔がほころび、ソファーを降りてテレビへ近寄った。
「それもありますが……まあなんというか……まずはこのPTについてまとめた映像をご覧ください」
ようやく日本の話題になったので部屋へ戻るのを止めると、全国大会の会場で行われた戦闘シーンが流れる。
花蓮さんと絵蓮さんが戦っており、俺は夏美ちゃんが放つ無数の矢を盾で防いでいた。
(これ個人戦を行わないって言われて、俺が役員室へ乗り込もうとしたときのやつだ。誰が撮っていたんだろう?)
谷屋姉妹の剣を打ち合う音が会場中に鳴り響き、テレビ越しでも激しい攻防を繰り広げているのがわかる。
(ここからだいぶ成長したな。花蓮さんなんて今は大剣を思いっきり振っているし)
俺の考えが反映されたかのように、個人で撮影したようなジブラルタル山脈で花蓮さんがコングを相手にダマスカスの大剣を振るっている映像に切り替わり、現地の冒険者が度肝を抜かれている声も入っていた。
「すごいな……花蓮ちゃんがあんな剣を軽々と……」
父親の視線が花蓮さんの戦っている様子に釘付けになり、ゆっくりと首を左右に振りながらすごいと口にして、少年のように目を輝かせている。
「うぉおおおおおおおお!!」
花蓮さんが倒したコングの上に乗って剣を掲げて咆哮を上げ、銃器を使用するモンスター相手に怯むことなく戦っていた。
次に画面が切り替わり、佐々木さんがわざとらしく杖を海に向けている。
(北海道へ向かう時に撮られていたやつか。もしかして、ウニとかマグロも映っているのかな?)
佐々木さんがわざとらしく叫んでから海の上を歩く映像がテレビに映されると、父親が肘で俺のことを突いてきた。
何かと思って父親の方を向いたら、手のひらを口に当てて小声で話をしようとしている。
「なあ、海の上を歩くってどんな感じなんだ?」
「んー……フカフカの布団の上を歩くみたいな感覚だったよ」
あの時のことを思い出していると、急に海から黒い槍のようなものが飛び出してきた。
ウニによる攻撃を俺が盾で防いで黒い結晶が舞う中、花蓮さんと夏美ちゃんが走り始めた。
それから、海のモンスターと戦う様子が流されてから映像が終了する。
今まで楽しそうに映像を見ていたテレビの中の人たちは、何も言えずに困惑して、数秒の沈黙の後にようやくコメンテーターの人が口を開く。
「このPTのスポンサーは個人経営の武具店です。日本代表は武器の使用制限の無い大会で、映像のように世界中の兵器を相手に体一つで立ち向かうつもりなのでしょう」
絞り出すようにコメントをするこの人の言葉を聞いて、俺はうんうんと同意するようにうなずく。
「よかった。それが伝わってくれていたらいいんだ」
これだけを見られて満足したため、部屋へ戻ると花蓮さんから何度も電話がきていた。
(やっぱり、あの件だよな……)
今も着信がきているため、通話をタップして苦情を聞くことにした。
もう変えられないということを伝えながら番組を思い出し、世界大会が楽しみになってきた。
ご覧いただきありがとうございました。
更新は12月2日を予定しています。
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