世界大会編⑥~緊急任務~
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正面から入ろうとしたら、門で警備をしていた人に止められてしまう。
(まあ、服が所々破れているし、汚れているから仕方がないか……)
事情を説明しようとしたとき、別の守衛さんの無線に連絡が入ったようだった。
俺を止めてきた警備の人へ事情を説明しようとしたら、無線を受けた人が顔を青くして駆け寄ってくる。
「佐藤一也くんですよね!? 総理から連絡を受けております! どうぞこちらへ!」
「ありがとうございます」
血相を変えた守衛さんが俺を先導するように歩き始めるので、その人に付いていく。
しばらく歩いていると、たまにテレビで目にする総理官邸という建物が見えてきた。
連絡をしたのか、入口の前で防衛大臣が待っており、俺の姿を見ると早足で近づいてくる。
「佐藤くん、来てくれてありがとう」
握手を求めるように手を差し出してきたので、握り返して用件を聞く。
「依頼について教えてください」
「中で総理が説明します。こちらへ」
手を放すと、防衛大臣が焦りながら踵を返して官邸へ向かう。
離されないようにその後を追い、官邸の中へ足を踏み入れた。
(テレビでよく見るところだ。こんな風になっているんだ)
入り口からすぐに広いエントランスがあり、そこを進んでいたら中庭のようなものが見えてきた。
ガラス越しに日本庭園のような中庭が見え、家の中なのに岩が置いてあり竹も植えられている。
(総理ってこんなところで仕事をしているのか……)
中庭を横目で見ながら防衛大臣に付いていくと、エレベーターに乗るように言われた。
4階に着き、総理が待っているという部屋へ案内をされる。
部屋の奥中央には豪華な椅子が2つ斜めに置いてあり、その片方で総理が座っていた。
俺が入るとゆっくりと立ち上がり、軽く会釈をしてくれた。
「急に呼んで申し訳ない」
額に汗をかきながら俺を見る総理は深刻そうに表情を固くしている。
俺は防衛大臣や総理の対応から、どんな無茶な依頼が来るのか楽しみになってきた。
椅子へ座ると、総理が俺の方を向いて浅く座り、その後ろへ防衛大臣が控える。
「それで、どんな要望がきているんですか?」
世間話などする気がないので、用件だけを聞くために本題を口にした。
すると、防衛大臣が持っていたファイルを開けて、総理へ数枚の紙を渡す。
「国連……国際連合の事務総長から直接きみへ調査依頼がきている」
総理は俺へその紙を手渡してくるので、受け取ると英語の文章が書かれていた。
「へぇ……WAOじゃなくて、国連からですか……」
書類には国連のマークが印刷され、事務総長のサインらしきものが明記されている。
内容を読もうとしたら、総理が息を呑んで額に流れる汗を拭く。
「ロシアとヨーロッパのはざまにある【人類侵攻不可領域】……そこの偵察と、できればモンスターを捕獲してほしいそうだ」
1ヶ所5000億円という法外な値段をふっかけたので、人類侵攻不可領域の攻略を依頼されてもおかしくはないと思っていた。
拍子抜けの依頼は、文章にもしっかりと書かれており、どんな状況なのか調べて、モンスターを捕獲するだけでいいらしい。
「人類侵攻不可領域ですよね?」
「そうだ。きみが了承してくれれば、ここを封鎖している国へ国連から連絡が行く」
人類侵攻不可領域の扱いについては教科書にも載っており、人類が入らないように何国もの国が監視を行い、上空にさえ入らないように協定を結んでいる。
そこへ入るという行為自体が国際法に触れるものなので、国連の事務総長が大丈夫だからといって行けるような場所ではない。
「俺へこの依頼が来た経緯をご存知ですか?」
「世界中のモンスターがフィールドやダンジョンから出ている中、人類侵攻不可領域から出ないという保証がない……兵器では立ち入れない場所の調査ができる人材は……きみしかいないためという理由だ」
何度か入ろうとしても、監視の目を潜り抜けそうになかった人類侵攻不可領域。
そこへ堂々と入れるのなら、こちらからお金を出しても良いくらいの依頼だ。
内心即決する気分だったが、固唾を呑んで俺のことを見守る2人を見ていたら、渋れば何か出てくるのではないかと思ってくる。
「国連からの文章はこれだけですか?」
俺の持っている紙には、依頼内容と成功報酬しか記載がなかったので、軽く質問をしてみた。
「いや……もう一件、来ているんだが……」
総理は防衛大臣の持っているファイルへ視線を動かし、深くため息を吐く。
眉間にしわを寄せている防衛大臣は、渋々ファイルの中からゆっくりと紙を取り出した。
「それは?」
「きみが依頼を了承してくれた場合、WAOへRank6にしてもらえるように推薦文を書くという内容の書類だ」
防衛大臣から直接渡された書類を読み、国連よりもWAOの方が偉いのかと勘違いをしてしまいそうになる。
「推薦文……」
確定じゃないのかと思い、紙を見て苦笑いをしてしまった。
俺が笑ってしまったので、総理や防衛大臣も真夏のように汗をかきながら笑顔を引きつらせる。
「受けます」
「本当か!?」
俺が依頼を受注すると答えたら、総理は更に身を乗り出して安堵の表情を浮かべた。
しかし、依頼文の中に書かれていないことがあるので、総理に聞いておいてもらわなくてはいけない。
「ただ、時期が書かれていないので、いつまでなのか確認しておいていただけますか?」
「ああ、任せてほしい」
「よろしくお願いします」
俺は総理と握手をした後、2人に見送られながら官邸を後にした。
もう日が沈んでおり、家に着いた俺は夕ご飯を食べながらニュースをぼーっと聞いていた。
「世界大会へ出場するチームが決定いたしました」
「ん?」
夕ご飯を食べ終わって、食器を流しへ置いていたら、テレビから気になる内容が聞こえてくる。
ご覧いただきありがとうございました。
更新は11月29日を予定しています。
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