世界大会編⑤~VS谷屋姉妹~
ご興味を持っていただきありがとうございます。
お楽しみいただければ幸いです。。
本作のタイトルを改名した【ネトゲ廃人の異世界転生記】が発売中です。
アマゾン等で全国の書店にてお買い求めできるので、よろしくお願いします。
購入報告お待ちしております!
(そういえば、2人同時に相手をするのは初めてだな)
出会ってから、このようなシチュエーションで戦ったことがないので、どんな攻撃がきても良いように、両手で握っている盾を構える。
オーラを体に巡らせるだけで、解放はせずに様子を見ようとした。
(手加減をされて嬉しいのか? この2人は逆に怒る)
今まで何度かPTメンバーを相手にしている時、俺が手加減をするとなぜかばれてしまっていた。
空気が張り詰め、今にも2人が襲いかかってきそうだ。
(ここで会ったのも何かの縁……今の俺の全力で相手をする)
盾を握る手に力を込め、全身の魔力を解放するように無色のオーラを爆発させる。
「ハァアアアアアアア!!!!」
オーラを解放した余波で周囲の地面がえぐれ、砂ぼこりが舞い上がり続けている。
驚くように目を見開いている谷屋姉妹と距離を詰めた。
死角に回り込み、シールドバッシュを行うために盾を振るうと、待っていたかのように黒い大剣が俺へ迫る。
「パリィ!」
「お姉ちゃん!!」
焦ることなく花蓮さんの剣を弾いて盾を打ち込もうとしたら、銀色の閃光が俺の眉間を貫こうとしていた。
「とった!」
「まだまだ!!」
俺の眉間に剣先が触れるものの、絵蓮さんを盾で吹き飛ばし、それ以上剣が刺さることはない。
絵蓮さんの処理をしていたら、花蓮さんが俺の視界から消えていた。
(後ろ!!)
気配察知で絵蓮さん以外の気配を見つけ、俺の背後で待ち構える花蓮さんを迎撃する。
後ろを振り向いても姿が見えず、地面に影を見つけることで跳躍していることがわかった。
視線を上にずらすと、俺を両断するための大剣が振り下ろされ、眼前まで迫っていた。
この距離では盾によるパリィが間に合わないので、右手で持っていた盾を手放す。
「ソニックアタック!!」
「嘘でしょ!?」
高速の拳で剣をそらすと、決まると思っていた攻撃を無力化することができた。
すると、花蓮さんの体がほんの一瞬硬直したため、左手の盾を全力で振るう。
「シールドバッシュ!!」
「花蓮!!」
俺の盾は絵蓮さんの剣に阻まれ、花蓮さんに届くことはなかった。
メタルゴーレムの剣は俺の盾による攻撃で折れることはなく、その衝撃に耐えた絵蓮さんがにやりと笑う。
「ここまでやってようやく一也くんに汗をかかせたくらいかしら」
「なかなか良いコンビネーションじゃないですか」
一言会話をしている時間で体勢を整えた花蓮さんが、絵蓮さんごと俺を叩き切ろうとしていた。
避けるために足元の盾を後方に蹴り上げて、空中でつかみ、2人と距離を取る。
俺へ追撃してこようと2人が剣を構えたので、持っていた盾を地面に落として両手を上げた。
「ちょっと待ってください」
言うのが遅くなり、俺の頭上で花蓮さんの大剣が止まり、胸には絵蓮さんの剣が突き刺さろうとしている。
「どうしたの一也? その手は降参って意味?」
突然戦いを止めてしまい、花蓮さんが剣を俺の顔に向けて睨んでくる。
ただ、特別な振動パターンを設定した重要人物からの着信が来ていた。
「どうしても出ないといけない電話がかかってきたので、出てもいいですか?」
「だれ? 女性?」
絵蓮さんが剣を鞘に入れ、俺の取り出したスマホを覗き込もうとしてきた。
別に見られて恥ずかしい相手ではないが、周りにいる人たちにばれたら面倒なので、小声で話をする。
「総理からです。話をしてみますか?」
「いいかしら?」
絵蓮さんは俺からスマホを受け取ると、躊躇なく電話に出ていた。
数回言葉を交わした後、なぜか申し訳なさそうに絵蓮さんが俺へスマホを渡してくる。
「疑ってごめんね……なんだか大事な件みたい」
「いいえ、俺も戦いを途中で止めて申し訳ないです」
受け取ったスマホを耳に当てて、待ってくれている電話相手への謝罪を口にする。
「すみません、訓練中、いきなり止めたので、怒りの矛先がそちらに向いたようです」
「いや、いいんだ。こちらこそ急にすまない」
総理が気にしていないと言ってくれたので、待っている人もいるので、簡潔に電話を終わらせたい。
用件だけを聞こうと口を開こうとしたら、総理が深刻そうに話をしてきた。
「きみの言った条件を伝えたところ、1件だけ即答した場所がある……電話では伝えられないため、官邸に来てもらうことはできるか?」
「今日の方がいいですか?」
腕を組んで俺から目を離さない2人に聞こえるように言うと、花蓮さんの視線が鋭くなる。
気にしないように絵蓮さんの方を見たら、寂しそうな顔をしていた。
(これはどっちもきつい……)
しかし、総理はよほど重大な内容なのか、できればと絞り出すように声を出す。
目をつぶって、その言葉にうなずき、すぐに向かうと返事をしてしまった。
電話を切ると同時に2人と向き合うと、花蓮さんがそっぽを向いて手を振る。
「早く行けば? 大事なことなんでしょ?」
「そうみたいです。内容はわかりませんが……」
依頼内容は頑なに説明してくれなかったので、俺も何も伝えることができない。
足元の真新しい傷がついた盾を拾いながら、2人へ言葉をかける。
「勝負は預けておきます。また、時間のある時に必ずやりましょう」
今はそれくらいしか言えないので、2人にそれだけを約束しておく。
すると、絵蓮さんが右手の小指を俺の前に出してきた。
「約束してくれる? このままどこかへ行ったままにならないで、必ず戦ってくれるって」
真剣に指切りをしようとしてきている絵蓮さんは、まっすぐに俺を見ていた。
その視線から目をそらさず、強くうなずいて返事をする。
「この拳にかけて約束します」
「ありがとう。行ってらっしゃい」
絵蓮さんの顔が綻び、俺と指切りをしたら、満足そうに手を振ってきた。
「待って」
ワープホールを発動させようとすると、花蓮さんが俺を呼び止めてくる。
「私とも約束してよ。一也と戦いたいのはお姉ちゃんだけじゃないんだから」
「わかりました。こちらこそよろしくお願いします」
花蓮さんとも指切りをした後、俺は官邸へ向かうために以前登録していた国会前へワープした。
ご覧いただきありがとうございました。
更新は11月26日を予定しています。
もしよければ、感想、ブクマ、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。
特に広告の下にある評価ボタンを押していただけると、大変励みになります。
9月17日より新連載を始めました。
同じローファンタジーになります。
ぜひ、こちらもよろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n7840gm/