世界大会編②~守護者たちより~
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守護者たちが難しい顔をして俺のことを見てきたため、特に身に覚えがないので首をかしげる。
「みんな揃ってどうしたんですか?」
それぞれの守護者たちの反応をうかがいながらリビングへ入ると、スーツを着ているアイテールさんが近づいてきた。
「一也くん、私たちは過去にきみと同じように、モンスターを人類の生活圏へ解放したことがあるんだ」
「はあ……」
「その結果は言わなくても分かる通り、人々はモンスターを積極的に倒そうとせずに、防衛する力だけを蓄えようとした。おそらく、今回も同じ結果になるだろうというのが私たちの意見だ」
「そうなんですか」
今までこのように守護者が集まったことがなく、深刻そうな顔で何を言うかと身構えていたのだが、肩の力が抜けてしまった。
ディーさんのそばにあるソファーに座り、くつろごうとしたら涙目のセティが俺の腕をつかんでくる。
「一也様、今ならまだあなたの力で取り戻すことができます。どうか、お救いください」
「駄目だよ。これで立ち上がれないのなら、人類に救う価値なんてない。ただ守られているだけの人間にこの先の未来を託すことはできないだろう?」
「私たちもそう考えておりました。しかし……人類は自らの力で戦うという選択をすることはありません……」
セティが悔しそうに俺の目を見つめてきており、他の守護者も同意見なのか何も言わない。
そろそろ佐々木さんが来そうなので、ため息をつきながら立ち上がって頭を下げる。
「みんながそれを行なった時には【俺】がいなかった。人類の目を覚ます役割は俺が行います。もうしばらく力を貸してください」
今考えている方法でなんとかなるのかわからないが、世界中の人がモンスターを倒すことを兵器に頼らない世の中にしなければ、今回やったことの意味がなくなる。
その世界的に広がっている概念を吹き飛ばすまでが俺の役割だと思っているので、もうしばらく守護者たちにはモンスターから人類を守ってもらいたい。
(それがこの世界で最後に俺ができること……もう少しなんだ……)
その想いを込めながら頭を下げていたら、レべ天が光を放ちながら俺の肩に触れてきた。
「私たちは最初から地球の未来をあなたに託しています。どうかよろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ」
(この子が笑えるようになるのならなんでもしてやる)
神様っぽいレべ天から任されたため、思わず力強くうなずいてしまった。
その時、インターホンが鳴り、玄関のカメラが佐々木さんを映し出す。
「じゃあね、一也様。また海でお待ちしております」
ディーさんが俺をハグしてから消えると、守護者たちは手を振りながらいなくなってしまった。
俺と光を消したレべ天が残され、佐々木さんの対応をするために玄関へ向かう。
「……天音、お茶を出しておいてくれる?」
「わかりました」
普通に戻ったレべ天を見て、首を振り先ほど思ったことを忘れることに努める。
玄関へ向かいながら、淡い金色の光を放つレべ天に見とれていた自分に理解ができない。
(神様モードのレべ天だと惹き付ける何かがあるのかな)
玄関の扉を開ける前に深呼吸をして、頭の中を切り替える。
「お待たせしました」
「……急に来てすまない。どうしても話をしておかなければいけないことがあるんだ」
「中へどうぞ。俺の家じゃないですけど」
佐々木さんをリビングへ案内すると、テーブルの上に2人分の飲み物が用意されていた。
ただ、レべ天の姿はないため、気を使ってリビングから出てくれたのだろう。
飲み物が置かれたところにある椅子へ座り、佐々木さんを待たずに話を始める。
「それで用件はなんですか?」
「いろいろと言いたいことはあるが、最初はこれだ」
佐々木さんは苦笑いをしながら、持っていたビジネスバッグからクリアファイルを取り出した。
それを俺が読みやすいように机に置かれたので目を通す。
【世界大会申込書】
そこには今度行われる世界大会の申込書が置かれており、手に取って数枚の紙を眺める。
「普通にPT名とかを書いて送るだけじゃダメなんですか?」
「ダメなんだ。スポンサー企業を書く欄があるだろう? 空白では受け付けないと言われた」
確かに佐々木さんの言う通り、申込書に【装備等提供企業】という欄があった。
対戦形式も別紙にまとめられていて、PTメンバーが扱えれば【どんな物】でも使用できるそうだ。
「ほーん……資本金とかの条件ってありますか?」
「特にない。ギルド長は何処でも構わないから書いてくれと言っていた」
「わかりました」
「候補があるのか!?」
佐々木さんは身を乗り出して思いっきり立ち上がるので、床に椅子が倒れてしまった。
「すまない。一也くんからそう言ってもらえるなんて思ってもいなかったんだ……」
我に返って倒した椅子を直す佐々木さんが言い訳のようにつぶやいている。
俺の装備を提供してもらうのに、思い付く企業というか、お店が1ヶ所しかない。
企業名のところへ杉山さんのお店の名前を書こうとしたら、ペンを持つ手が止まる。
(杉山さんのお店の正式名称がわからない)
スマホを取り出そうとして、椅子に座り直している佐々木さんへ一言断っておく。
「この件を承認してもらうために電話をかけてもいいですか?」
「ああ、構わない。詳しい話をしたいから、途中で代わってもらえると助かる」
うなずいてから杉山さんへ電話をかけると、いつまで経っても電話に出てくれない。
(いつも暇そうにしているのに……)
俺がお店へ行ったときにお客さんを見たことがないので、いつも電話をかければすぐに出てくれる。
それが今回は何度かけても出ないので心配になり、直接会って話がしたくなった。
「佐々木さん、ここまで車で来ましたか?」
「そうだが、何かあったのか?」
「杉山さんのお店へ行きたいんですが、乗せてくれませんか?」
「まさか、契約する企業はあの店か?」
「そうですけど、何か問題でも?」
「いや……特にないんだが……」
提供企業が杉山さんのお店と聞いて、佐々木さんの歯切れが悪くなったため、念を押すように言葉を続ける。
「俺は杉山さんに作ってもらった装備以外で大会に出るつもりはありませんよ」
「俺たちの装備は全部あの人が作ってくれているからその気持ちはわかる……ただな……」
佐々木さんは腕を組み、眉間にしわを寄せてうーんと本気で悩むように唸っていた。
ここにいても杉山さんの了承と店名の確認ができないので、俺は静かに席を立つ。
「とりあえず杉山さんにも確認を取らないといけないので、ここを出ませんか?」
「ああ、そうだな……」
お茶を飲み干してから佐々木さんが立ち上がり、リビングを後にする。
俺はレべ天に心の中でお礼を伝えてから玄関を出た。
佐々木さんの車に乗って杉山さんのお店に着くと、入り口で番をしている人が妙に疲れたような顔をしている。
その人は俺と佐々木さんの顔を見ると、安心したように胸を撫で下ろす。
いつもとは違う対応に戸惑いながらお店の中へ通されると、杉山さんがうなだれるように脱力して椅子へ座っていた。
ご覧いただきありがとうございました。
更新は11月17日を予定しています。
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