世界大会編①~大会に向けて~
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最終章の世界大会編が開始です。
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「これで世界がモンスターの脅威に晒されているってわかったかな?」
「一也さん……」
レべ天の家で世界中の街でモンスターが暴れているという報道を見ながらつぶやくと、俺の横にいる地球の守護神が悲しそうな顔をしている。
こうなった原因を知りつつも、俺はなんにもせずに研究所を可動させていた現地の政府に責任があると思う。
「俺は無くなったと信じていた研究所にいたモンスターを完全回復して、能力を強化しただけだよ」
「その結果がこれですか!? こんなに犠牲者を出しておいて!?」
ニュースでは今回のモンスターによる侵攻で、死者が数万に及ぶと報告されていた。
しかし、被害地域に研究所のない場所や、アフリカ大陸南部など蟻が出現したと予想される土地も含まれていたため、WAOが研究所のついでに計上しているような印象を受ける。
「研究所の地域だけ見てみろよ。こっちは死者を出さないように気を付けたんだぞ」
「じゃあ、なんでこんなことになっているですか?」
「絶対発表するときに便乗して、過去の分を上乗せしているぞ。俺はアフリカなんて行ってないからな」
「……もっと安全な方法なかったんですか?」
「俺には思いつかなかった。そもそも、あれだけ忠告したのに研究所を残していた方が悪い」
研究所のモンスターを活性化させた後、わざわざ現地に残って人の被害が出ないように救命活動をした。
本来なら自分たちの力で跳ね返してほしかったが、予想以上に強化されてしまったので、悪いと思って人の避難はしてあげた。
郊外にあった研究所では、政府に警告を行うだけにしておいたので、どうなっているかは知らない。
それでもレべ天が文句を言いたそうにしているため、腕を組んで軽く睨む。
「世界中でモンスターを倒してくれればその分助かるのは天音だろ? これはそのきっかけ作りだよ」
「意味がないとまでは言わないですけど、効果は薄いと思いますよ」
「なんで? これだけモンスターに生活が脅かされたら倒す気にならないの?」
生活圏に侵略者が来たら追い出したくなるのが本能だと思うのに、俺の横に座るレべ天は表情を曇らせている。
理由を聞こうと言葉を続けようとしたら、スマホが震えていることに気が付いた。
「佐々木さんから電話だ……天音、話はまだ後で」
「…………」
レべ天はテレビを見たまま返事をせずに黙っており、俺の方をちらりとも視線を動かさない。
リビングを離れて電話に出ると、走っているような息遣いが聞こえてくる。
「どうしました? 何かありましたか?」
「テレビを見たか!? 前に言っていた通り、世界中でモンスターが侵攻してきたんだ!!」
「俺も今見ていました。捏造されていますよ、俺は研究所だけを狙ったのに」
「なんだって!? もう1度言ってもらえるか!?」
佐々木さんが息を乱しながら聞いてきており、俺ははっきりと伝わるように噛み砕いて説明することにした。
「俺はまだ稼働していた研究所のモンスターに協力してもらって、研究所や付近の街を襲撃したんです。他の地域は昨日今日で起こったことではないですよ」
「んん!? 話がよくわからないんだが……それはどうやったんだ?」
「残っていた研究所に侵入してから全モンスターを回復した後、祝福のスキルを使って能力を向上させました」
【祝福】はヒールの最上級スキルで、対象の全ステータスを大幅に増幅させる。
また、対象が範囲内にいれば自動で回復するエリアヒールを使えるようになり、気配を察知すれば立っているだけでヒールの効果が与えられる。
この祝福とエリアヒールを使用することで、簡単に研究所内のモンスターを外へ出すことができた。
その説明をしたら佐々木さんが電話越しに黙ったので、言葉を続ける。
「アフリカ大陸も侵略の対象になっていますが、俺は行っていないので、WAOが過去に起きたモンスターによる侵略を便乗して報告していますよ」
「目的はなんだ?」
息を整えた佐々木さんは声のトーンを低くして俺に質問をしてきていた。
俺はため息をつき、先日行った大統領との会話の中で知ったことを佐々木さんにも伝える。
「先ほども言いましたが、WAOはモンスターによる被害を意図的に隠しています。これはアメリカの大統領に確認をしたので間違いありません」
「きみはいつ大統領と電話をするような仲に……Rankが上がる会議の時か!」
佐々木さんははっとするように声を出したので、俺が大統領と会ったということを知っているのだろう。
それなら話が早いので、俺が今回このようなことを起こした経緯を説明する。
「ええ、その時に連絡先を交換し、モンスターによる脅威が世界に迫っていることを伝えました。そして、WAOはそれについて調べている大統領へ情報収集をやめるように脅迫をしてきたんです」
「だから……モンスターによる被害を隠せない程出して、世界に知らせようとしたのか?」
「その通りです。これくらいやらないとうまく揉み消されそうだったので、全力でやりました」
言い終わるとドサッと何かが地面に落ちるような音が聞こえてきた。
俺が声をかけようとしたら、今にも消えてしまいそうな声がスマホから届いてくる。
「それでどうなんだ? きみの思惑通り、世界はパニックになっている。これからどうするつもりだ?」
「特に何も。むしろ、これから世界がどうするのか俺は見守ります」
これで俺が積極的に暴れているモンスターを倒したらマッチポンプもいいところなので、静観する以外のことはできない。
壁に寄りかかりながら自分の考えを伝えたところ、佐々木さんは深く息を吐いていた。
「救助要請がきたらどうするんだ? Rank5の冒険者には世界中から依頼がくるんじゃないのか?」
「状況次第ですね。佐々木さんたちが向かえばいいんじゃないですか? 強化したモンスターも強くて北海道の金熊くらいですよ」
「それなら俺たちでも倒せそうだな……会って話がしたい、今はどこにいる?」
「天音の家にいます」
待っていてほしいと言われてから通話が終わり、スマホをポケットへ入れてリビングに戻る。
そこにはいつの間にかディーさんやアイテールさん、セティといった力をくれた守護者たちが勢ぞろいしており、リビングに入った俺を待ち構えていた。
ご覧いただきありがとうございました。
更新は11月14日を予定しています。
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