宿命の相手編①~最上級スキル~
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次回の更新は10月27日です。
ファラオと戦う前に、スキルの熟練度を上げるためにメタルゴーレムを殴り続けている。
武器一式はレべ天に送ってもらうことができるので、攻撃がほとんど効かない相手へ魔力と体力の続く限りスキルを放つ。
(アントネストで高まった気持ちが収まらない! もっと俺は強くなる!!)
最上級のスキルが使えるようになり、自分が想像していた【拳王】にたどり着きたい。
その一心で世界一硬いモンスターを相手へ攻撃を続けていたら、俺の拳がメタルゴーレムの頭部を貫いた。
「急所突き使ってないんだけど……倒しちゃったのか……」
まだ満足に熟練度を上げていないのにメタルゴーレムは瓦礫のように崩れてしまい、俺は振り上げた拳を下ろしてため息をつく。
予想以上に多重攻撃や上級スキルの熟練度を向上させるのに夢中になり、肝心の最上級スキルを使うのを忘れていた。
(とりあえず、杉山さんが加工できるようになってくれたからこれを拾うか)
PTメンバーの防具を作るためにメタルゴーレムの金属を回収して、レべ天に家へ送ってもらう。
どうやって最上級スキルを練習しようか考えていたら、悪魔のような姿をしているガーゴイルと目が合った。
「あっ!」
下に通じる階段の上に鎮座するガーゴイルを見て、思わず声が出る。
「そうか……こいつは動かないと【攻撃が効かない】から、こっちのほうがスキルを大量にあびせられるのか」
明りを消して目をそらさないと、どんな攻撃も通じないガーゴイルの前に立ち、思わず笑みがこぼれてしまう。
部屋の四方にある松明へ火を付けて、ガーゴイルが動かないように準備をしてから魔力を体中に巡らせる。
(拳最上級スキル、【錬気解放】。これを再び使える日が来たんだ……)
体中に満ちている魔力を体外に解放させ、爆発的に身体能力を高めるスキル。
体力や魔力の消費が通常の錬気の比ではないが、これを使うだけでバフォメットを通常攻撃1発で倒せる。
「ハァ!!」
体中に巡る魔力を体外に弾けさせるように放つと、飛散せずに激しい炎のように留まった。
魔力を注ぎ込めばその分だけ炎のようなオーラが大きくなり、俺はその場で拳を突き出せるようにかまえてから今できる最大の解放を行う。
「ハァアアアアアアアアアア!!!!」
オーラをためていると魔力が放出されている影響で足元から風が舞い上がる。
「グググ……まだまだぁああ!!」
限界を超えようとした時、魔力を堪えられなくなりそうだったため、ガーゴイルへ拳を突き出した。
「バァアアニングフィストォオ!!!!」
今の俺に残っているすべてを込めた一撃がガーゴイルに当たると、攻撃の効かないはずの相手に拳がめり込んで、炎と共に飛散してしまう。
「ハァハァ……1発で……こんなに疲れるのか……」
拳を放ったら思わず倒れ込み、ガーゴイルの間の天井を見上げる。
身体が動かせないほど力を使ってしまい、自分がスキルに振り回されている感覚に自然と笑いがこみあげてきた。
「俺は……まだまだ強くなれる……このスキルをマスターするんだ……」
更なる高みへ望める環境が整い、初めてスキルを習得したときの気持ちを思い出す。
手探りでひたすらメイスを振るっていた日々がはるか昔に感じる。
(あと少し……ようやくここまできた……)
スキルを習得できずに拳を武器として使えなかった悔しさを糧にここまでくることができた。
今、こうして錬気解放を行なった攻撃でガーゴイルを倒し、かつての自分よりも格段に強くなっていることを実感する。
(この世界はこんなにも可能性で満ち溢れていた……俺は【拳王】よりも強くなる!)
休憩を終えて階段を降りると、ファラオがいる部屋へ通じる扉の前にこのダンジョンの守護者である褐色少女のセティが立っていた。
複雑そうな顔で俺を迎えるセティは、腰まである金色の髪を揺らしながら待っている。
「約束通り最上級になってきた。この先へ入るから、【あれ】をくれ」
「えっと……これのこと?」
セティの合わせた両手から光が生まれ、困ったような顔をしながら俺へある【物】を差し出す。
親指ほどしかないドライフルーツのように干からびた果実を受け取り、おもむろに自分の口へ放り込む。
「ありがとう。これで心置きなく戦えるよ」
「……渡す私が言うのもおかしいけど……それ、ほんのちょっとしか回復しないけど意味あるの?」
セティは苦笑いをしながら、石の扉を開けようとしている俺を見ていた。
俺が飲み込んだものは、ファラオと戦う前に少しでも回復できるように渡されるアイテムで、使用してから【6時間後】に効果を発揮する。
(ほぼ記念アイテムになっていて、俺は数百個持っていたからな……)
その回復アイテムはここに辿り着いた者だけがもらえるため、これだけを獲得して帰る人もいた。
この扉の先に待っているモンスターのことを考えれば、【6時間後】に効いたところでほとんど意味がない。
(どんな味がするのか確かめたくて食べたけど、干しぶどうみたいな味だったな……謎が1つ解けた)
長年の疑問が解決したため、憂いなくファラオへ挑戦しようとしたら、セティが俺の前に跪く。
両手を胸の前で組み、守護者が神にすがるような目を俺へ向けてくる。
「救世主佐藤一也様。どうか荒ぶる王の魂に安らぎをお与えください」
「あぁ……俺はそのためにここへ来た。後は任せろ」
「よろしくお願いいたします」
石の扉をゆっくりと押し込みながら開け、数歩入ると勝手に扉が閉まり、部屋の両側にある大量の松明が点灯した。
俺はその瞬間にブレスレットの効果である引きこもりフィールドを展開して、懐かしの場所を堪能する。
(ここだ……戻ってきた……)
いつものように、学校のグラウンドよりも広いこの部屋の中央にファラオが鎮座しており、その周りにはびっしりと王の眷属が待機していた。
懐かしさを覚えながらも敵が変わりないか確認を行う。
(ゲーム内よりは強くなってそうだ……どれも凶悪な雰囲気を感じる)
眷属は3つの頭をもつ番犬【ケルベロス】と、3メートル以上大きな獅子である【キマイラ】の2種類がいる。
両方ともゲームでは上級のモンスターだったが、そのたたずまいはどう見ても最上級のものだ。
(よし! 戦うとしよう!!)
俺はオーラを弾けない程度に展開し、眷属を倒すために拳を振り上げた。
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