最上級職挑戦編⑮~激闘アントキング~
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次回の更新は10月24日です。
動こうとした瞬間、すでにキングの爪が俺の左肩と脇をえぐる。
俺が気付いた時には辛うじて腕がぶら下がっているだけになった。
「ぐっ!? このっ!!」
傷を治すよりも、使える右腕に魔力を込めて攻撃をするが、相手の姿が見当たらない。
気配を探ろうとしても反応がないため、自分の五感に頼るしかない。
「そこだ!! バーニングフィスト!!」
わずかに揺れた空気の流れを読み、炎の塊を打ち出した。
炎の拳に当たったキングが壁まで吹き飛び、追撃のために左肩を治しながら後を追う。
「旋風――いない!?」
壁から目をそらしたつもりはまったくないが、風の刃を放とうとした時、直前まで見えていたキングが姿を消す。
わずかに感じた炎の熱が上空から迫っていたため、右腕に魔力を込める。
顔を上に向けると、キングが鋭い爪を振り上げて俺に襲いかかろうとしていた。
「パリィ!!」
1度灰色の爪を弾いても、全部で4本ある腕が断続的に攻撃をしてきており、一撃一撃がとても重い。
両手でパリィをすることでしのげているものの、腕の本数と俺と同等以上の速さで徐々に体を削られていく。
「アースパリィ!!」
キングの攻撃を胴体ごと吹き飛ばすように両腕に茶色の魔力をまとわせて、パリィを行う。
弾き飛ばせたものの、少し離れた空中で停止したキングの姿を見て、顔をしかめてしまった。
「攻撃が……効いていないのか?」
炎の拳が直撃したはずのキングの甲殻に何一つ傷がついておらず、焦げたような跡もない。
(多重支援スキルで威力が底上げされているはずの拳でも無傷の相手か……)
自分の予想以上に強化されている相手をどのように倒せるのか考える暇もなく、俺の死角からキングが攻撃を仕掛けてきていた。
先ほどまで佇んでいたところには残像が残り、俺は自分の体に黄色の魔力を押し流して無理やり動く。
「うっ!?」
爪を弾こうとしたら腹部に右腕を突き刺され、えぐるように動かしてきたため、動かされないように左手でつかむ。
キングは俺の首を飛ばそうと爪を振ってきてきたので、右手で攻撃を防いだ後に空いた空間を利用して右足を振り上げる。
「ライトニング旋風脚!!」
がっちりとキングの腕をつかみながら、叩き切るように雷の刃を放った。
雷の一撃でキングの2本の腕は胴体から千切れて、俺の腹を貫いたまま残っている。
(腹を貫かれた代わりに腕をもらったぞ……これでどうだ……)
追撃をしようとしたらキングが俺から距離を取って、部屋の壁沿いにたたずむキングは翅がなくなり地上へ降りていた。
その代わりに、キングの背中から透明な管のようなものが伸びてハニーアントへ刺さる。
「ハニーアントを……吸っているのか……」
管からは赤色の液体がキングに流れ、刺さったハニーアントはみるみるしぼむ。
中身が無くなったハニーアントはそのまま絶命し、キングの管が2体目のハニーアントへ刺さろうとしていた。
「マルチプルファイヤーアロー!!」
ハニーアントの体液を吸っているキングは、失った腕が再生しているように見えたため、これ以上回復させるわけにはいかない。
キングの周辺にいたハニーアントもろとも炎の矢で吹き飛ばそうとしたら、部屋の壁がせり出してきた。
壁は攻撃からキングだけを守るように包み込み、俺の魔法が防がれてしまう。
「壁が任意でキングを守る? ……まさか!!」
ここ以外にもこの広い広間には壁沿いにびっしりとハニーアントが並んでいた。
部屋の奥にはクイーンの亡骸があり、その異様な光景にある可能性が頭に浮かんだ。
(クイーンが死ねばハニーアントは役目を終えたように自害するはず……それなら……)
壁一面に張り付いているハニーアントは、第三者による干渉としか考えられない。
部屋が変形したことや、まだ倒していない守護者の存在が結びつく。
(この部屋自体が守護者なのか……モンスターが変異してここまでのものになるのか!!??)
キングの腕が元通りになる前にハニーアントを根絶させなくてはいけない。
黄色に変えた魔力を体中に駆け巡らせ、全速力で移動しながらハニーアントへ高速の拳を放ち始める。
(ハニーアントが溜め込んだ血液で回復できることがわかって確保しているんだ! それに……おそらく吸った分だけ強くなる)
ハニーアントの別名は【経験値タンク】と呼ばれ、倒すことができれば超効率良くレベルを上げられる。
アントネストが出現したダンジョンは、放置すれば1年は蟻だらけの場所になるが、クイーンの間には数体のハニーアントが現れるため、人気の無い場所に出現したら喜ばれて争奪戦が行われることもあった。
(この量のハニーアントがいるとなると、どれだけ放置されていたのかわからないけどな……)
拳を振るいながら、かつて寝食をほとんどせずにレべル上げをしていた日々を思い出す。
あの時はファラオを倒すために、ひたすら敵に向かって拳を打ち抜いていた。
(キングはおそらく3匹目の吸収を始めている。壁で守れるのはその程度の範囲なのか)
俺がハニーアントを殲滅していることをわかっているはずなのに、この部屋はそれを阻止しようとしない。
それならそれで好都合なので、俺は自分にできることを全力で行うために拳に力を入れた。
すべてのハニーアントを倒した時、俺の頭上に輝かしい光が一瞬だけ現れる。
『一也さん! 格が7に上がりました! 最上級のスキルが使用できます!!』
レべ天が興奮した様子で俺の頭の中へ声を届けてきてくれた。
最後のハニーアントを倒して、壁に囲われているキングを捉える。
『教えてくれてありがとう……やっぱり俺は戦うことが大好きみたいだ』
『え!?』
レベル上げのようにモンスターを倒している時から、俺は例えようのない高揚感を覚えていた。
全力で右手に魔力を注ぎ込み、【魔法の最上級スキル】をキングのこもっている場所へ叩き込む。
「すべてを焼き尽くせ!! ヘルフレイム!!」
俺の右手から放たれた黒炎は部屋中を蹂躙し、壁もとろもキングを溶かそうとしている。
キングは溶けかけている壁から出てきたが、右手は完全に回復していなかった。
激怒状態になったのか、キングは目を赤く光らせており、黒い炎に包まれる部屋を気にすることなく俺へ攻撃を仕掛けてくる。
しかし、その攻撃は俺に届くことはなく、意表を突かれたキングはその場で何度も腕を振るうが意味がない。
「悪いな、俺への攻撃はオートパリィなんだ。ヘルフレイム!」
2度目のヘルフレイムをキングへ唱えると、もがきながら黒く燃え盛る地面へ落ちていく。
キングが動かなくなるのを見届けてから、俺は黒い炎をまき散らしながらアントネストを脱出した。
出口には炎から逃げるようにソルジャーアントがあふれかえっていたため、レインボーリザードを殺さないように敵を焼き尽くす。
アントネストの侵略を阻止した後、俺は宿命の相手である【ファラオ】と戦うためにエジプトへ向かった。
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