最上級職挑戦編⑫~ナミブ砂漠進攻~
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次回の更新は10月15日です。
アーマースコーピオンは尻尾を振り下ろし、俺が避ける方向にはさみを突き刺してくる。
大きさに反して機敏な動きで俺を攻撃してきた。
(固い相手には急所突きだ!)
メイスで急所を狙おうとするが、はさみや尻尾に阻まれて本体に攻撃が届かない。
はさみや尻尾を胴体から切り離すために、攻撃を避けながら比較的柔らかい関節へメイスを叩き付ける。
関節を狙っても引き千切れないため、アースネイルとブレイクアタックを同時に使用してサソリを宙へ放り出す。
宙に舞ってがら空きになった腹部の急所へメイスを叩き付けると、えぐれるように体の一部が飛散する。
そのまま地面に落ちたアーマースコーピオンはひっくり返ったまま動かない。
(モンスターが強化されている……これ以上放置したらもっと増えるのか……)
後数日でアフリカ大陸のほぼ全土にこのレべルのモンスターが闊歩するようになったら、個人での討伐が難しくなる。
そうなった場合、大型爆弾等で無理矢理倒すしか方法がないが、その判断は下されないだろう。
(第2の不可侵領域を作るわけにはいかないからな……)
それこそ、本当に人類が立ち入れない土地になってしまうため、そんな選択をさせる前に解決したい。
モンスターが地中に隠れている状況で車に乗るなんて考えられなくなったため、キャロルさんの近くへテレポートを行い、簡単に状況を説明する。
「車を使ったらモンスターが現れた時臨戦態勢に入るのが遅くなります。これから走りますが、付いてこられますか?」
「え……あ……」
サソリとの戦いを撮影してくれていたキャロルさんは戦闘が終わると腰を抜かして砂地へ座り、放心状態で俺へ顔を向けていた。
この女性を放置して進んでもいいが、もっと撮影してほしいことがあるため、左肩でキャロルさんを抱える。
「キャッ!?」
「連れていきますね。口を開けると舌を噛みますよ」
キャロルさんの返事を聞かずに、抱えたままナミブ砂漠へ向けて走り始める。
元々防衛ラインだった場所には壁とフェンスが壊されており、移動中もモンスターと戦闘した。
◆◆◆
防衛線が破られた様子をキャロルさんが撮影したいと言うので、警戒しながら終わるのを待っている。
「カズヤ、終わったわ」
「わかった。ここから先は慎重に行こう」
歩き始めるが、キャロルさんは足を止めて一向にこちらへこようとしない。
ナミブ砂漠の奥地へ向かう俺を撮影しているのかと思って振り返ったが、カメラを構えていなかった。
「本当にこの先へ向かうの?」
「ええ、最深部に行かないと原因がわからないでしょう?」
「この先は【デッドフレイ】……何百年もの前から危険地帯として認識されている場所よ!? あなたがどんなに強くてもさすがに……」
「だからこそ行かないといけないんです。念のため、この帰還石を使えば安全な日本へ逃げられるので渡しておきますね」
「あなたの分は?」
「俺は死ぬまで戦うので必要ありません」
持っていた帰還石をキャロルさんへ渡すと、正気を疑うような目で俺のことを見ていた。
デッドフレイについては空港でもらったパンフレットにも載っており、不可侵領域以外に【人類が手を出せない土地】と明記されている。
主な理由としてはデットフレイの地形に問題があり、沼のような砂地に足を取られてまともに歩けず、その状況で大量のモンスターとも戦わなくてはならない。
普通の砂漠であるこの場所でもキャロルさんは歩くので精一杯の様子なので、普通の人がモンスターと会ってしまったら死以外の結末は逃れられないだろう。
(これよりもひどい砂地へ行こうと言っているんだから、キャロルさんも怖いんだろうな)
それなら、これ以上ついてくる必要はないので、キャロルさんへ背を向けてデッドフレイに向けて歩き出す。
「キャロルさん、俺はこの先へ用があります。止まるなら邪魔なのでそれを使ってさっさと帰ってください」
「行くわ!! ここまで来たらあんたの行動に最後まで密着してやるんだから!!」
キャロルさんは沈んだ足を砂から引き抜き、ゆっくりと一歩ずつ俺へ近づいてきた。
俺は足の裏に茶色の魔力をまとわせることで、沈まないように地面を固めている。
徳島へ向かう時に、砂地でも足が取られない方法を習得していたため、俺はこの状況でも普通に戦える。
進むペースが遅くなりそうなので、再びキャロルさんを抱えて走り始めた。
旧防衛線を越えてから1度もモンスターと遭遇しない。
明らかにおかしいが、気配察知を発動させてもなにもいない。
目視でも砂漠が広がっているだけで、何もいないため、戦うことなくデッドフレイに近づいている。
すると、なぜかバラバラになったアルマジロやサソリの残骸がそこら中に広がっており、デットフレイの方向に大量のモンスターの気配を感じた。
「この光景を撮影してもいい?」
「いいけど……キャロルさんはここで帰ってほしいです」
俺に抱えられているキャロルさんを降ろして、残骸を撮ろうとする背中へ不安を込めて声をかけた。
俺の言葉にキャロルさんの手が止まり、「えっ?」と声を出しながら驚くように振り返る。
「どういうこと? あなたはこの先へ行くんでしょう? 付いていきたいわ」
「危険すぎる……一緒に行くとしても、この先を撮影した瞬間に帰ってほしい。そうじゃなかったら、連れていけない」
気配の数が今まで感じたことがないほど密になっており、これでもまだ次々と増えている。
俺はこの気配こそがアフリカ大陸を蹂躙するモンスターの正体だと直感してしまった。
そんなところに戦えない人を連れてはいけないので、帰る約束をしなければここでキャロルさんへ強制的にワープを使うつもりだ。
キャロルさんは俺の目を見て、静かにうなずく。
「あなたが帰れと言ったら、すぐにこれを使う。それでいいんでしょ?」
「絶対に守ってほしいです。反応が遅れたら確実に命を落とす」
約束をしてくれたので、撮影を終えたキャロルさんを抱えた時、つぶやくように口を動かした。
「あなたには何が見えているの?」
「……行けば分かります。必ず約束を守ってください」
食い荒らされたようなモンスターの残骸を見ながら、俺はあるモンスターの可能性を考え始めた。
(俺はてっきり守護者が諦めたとばかり思っていた……)
他のフィールドに侵略するモンスターの数は少なく、放置すれば爆発的に広がる存在がいる。
デッドフレイを見下ろせる場所に着くと、俺はキャロルさんへ怒鳴るように声をかけた。
「撮ったらすぐに逃げて!!」
キャロルさんは眼下に広がる光景を見て、歯の根が合わず、恐怖で全身を震わせている。
帰還石を取り出そうとしても手が震えてしまい、荷物の中から探せていない。
「ギャオオオオオオオオオオ!!!!」
デッドフレイの中心にいる【レインボーリザード】が咆哮を上げて、自分へ群がる敵を倒している。
その数はデッドフレイを埋め尽くし、一部が俺たちに気付き、砂山を上がってきた。
「キャロルさん!! はやく!!!!」
なんとか帰還石を取り出したキャロルさんは失禁しており、カメラと一緒に抱え込むように石を使用する。
白い光がキャロルさんを包むと同時に、俺がいる場所が暗くなり、敵が近づいたことを知らせた。
そこには俺よりも大きな蟻が鋭い爪を振りかぶっていたため、腕ごとメイスで吹き飛ばす。
ナミブ砂漠のボスモンスターであるレインボーリザードが、侵略者である蟻の大群を相手に戦っていた。
「【ソルジャーアント】がいるってことは、予想は当たったか!!」
突然他のフィールドやダンジョンを侵略するように発生するダンジョン。
【アントネスト】
アルマジロやサソリはこの黒い大量の【蟻】たちに追い出されてしまったのだろう。
俺は侵略者を倒しているレインボーリザードを助けるべく、黒騎士装備を装着した。
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